
新潟ロケ映画、『ミッドナイト・バス』の感想を書いていこうと思います。
伊吹有喜さんの原作小説『ミッドナイト・バス』を竹下昌男監督が映画化、主演は原田泰造さんです。
ひとまず、予告編はこんな感じです。
はい、この映画の感想を書いていく前に、この話だけは書かないわけにはいかない!と思うのが、この映画は昨年の3月に新潟県内で撮影されており、新潟県内からも多くの方がエキストラとして参加させていただいているのですが、その中で僕も出演させていただいているのです!
不思議な縁で出演させていただけたのですが、今まで映画に出演なんてしたことなど一度もなかった自分が、まさか原田泰造さんと共演させていただけるとは!という本当に貴重で嬉しい体験をさせていただいたので、この映画が公開されるのをずっと楽しみにしていましたし、今までこのブログでも何度も紹介してきました。
それでまずは去年の11月に、イオンシネマ新潟西で関係者向け完成披露試写会に呼んでいただき、公開より一足先に観させてもらうことが出来ました。
その時は監督や出演者さんたちの舞台挨拶もあり、僕はそのレポートを月刊ウインド1月号に書かせていただいたりしました。
初めて見た時の感想ですが、普段見慣れた新潟の風景が映画の舞台になっていたことは、やっぱり物凄く新鮮でしたですよ!
物語の感想そのものは後述しますが、とても素敵な映画が新潟から発信されていることはすごく嬉しかったです。
また、エキストラに知り合いも多く参加していたこともあり、新潟のみんなでこの映画を作り上げたんだなあという感動がすごくありました。
そしてやっぱり、自分の出番が近付いてきた時はすごくドキドキしましたし、いざ自分が登場した時は「こんなにいいシーンに出させていただけたのか…」という嬉しさ、感慨深さが込み上げて来て、本当に一生の思い出となりました。
その後、1月から新潟先行公開、次いで全国でも公開されてからも、色々な知り合いから「観たよ!」と声をかけてもらえたのがすごく嬉しかったです。
また、これだけ新潟の風景を魅力的に描いている映画なので、新潟で大ヒットしていることも納得だなあと思います。
僕はと言えば、長野に住んでいる僕の映画出演を楽しみにしていてくれた友人と一緒に観に行きました。
新潟が舞台の映画を長野で観ることも、自分の出ている映画を友人と観ることもすごく新鮮な体験だったのですが、何より友人がすごく感動してくれたのが嬉しかったです。
さてさて、そんな個人的な気持ちはさておき、では肝心のこの映画の物語の感想はと言いますと、非常に丁寧に作られた人間ドラマだなあと思いました。
ざっくり言うと、バラバラになってそれぞれの時間を生きていた家族が、もう一度一つになり、そして再びそれぞれの時間を歩み出す、という、ただそれだけの映画なのですが、これが本当に味わい深いのです。
僕は映画とは、特に人間ドラマを描いた映画とは、突き詰めて言えば「人間」をどれだけ魅力的に描けるのかが最も大切だと思っているのですが、まさにそんな映画だなあと思いました。
原田泰造さん演じる主人公や、離婚したその妻とその父、息子と娘、そして新たな恋人…それぞれの登場人物たちは、決して映画で活躍するような派手なヒーローは一人としていない、それどころか失敗もすれば迷いも戸惑いもする、そんな格好悪さも持った人物たちした。
言い換えればそれは、私達の日常のすぐそばにいそうな、それどころか私達自身の姿かも知れないくらいの、本当に普通の人達で、そんな彼らが時に衝突し、時にすれ違い、そして時に助け合い、時に分かり合う、そんなこの世界のどこかで毎日起こっているようなささやかな営みの一つ一つを繰り返しながら毎日を精一杯生きている…
それをすごく丁寧に描いているのは、そのままこの映画の人間というものに対する愛だと思いますし、僕はこの映画を観て、人間って悪いものじゃないなって素直に思いました。
また、登場人物たちは、彼ら一人一人にとっては人生を左右するような大きな選択やドラマを体験したりしていくのですが、それを邦画でよくあるような過剰な演技や音楽で煽るのではなく、あくまで「そういうことがありました」と淡々と語るかのように描かれていくという、ある意味すごく冷静な視点がこの映画全体に貫かれていたことも特徴なのかなと思いました。
だから、いわゆる「派手さ」はない、それどころか物凄く地味な映画ではあるんですが、でも、そういう淡々とした語り口こそが、この映画の最大の魅力なのかも知れないなと思いました。
さっき書いたような、盛り上げることよりも丁寧に人間を描写することの素晴らしさもさることながら、この淡々とした語り口は、「人生の喜びも悲しみも、どんな人にも平等に訪れるような当たり前に存在するものだよ」というメッセージにも思えました。
また、最近の邦画にありがちな説明過多や過度な盛り上げがないことで、映画を観た人が登場人物の感情を想像したり、そこに自分の気持ちを投影したりできるような余白のようなものがこの映画にはあり、だからこそ、観ている時は面白くても見終わった途端忘れてしまうような映画とは違って、観た人の心に残る宝物のような映画になっていくのではないだろうかと思いました。
…などと小難しいことを長々書いてきましたけど、単純に人間ドラマとしてこの映画、ものすごく「面白い」んですよね。
これだけ地味で静かで淡々とした映画で、しかも上映時間が2時間以上もあるのに、最後まで飽きずに引き込まれるという時点で、かなりすごい映画なのではないかと思っています。
唯一のツッコミどころがあるとすれば、新潟に住んでいる人間が見てしまうと、ロケ地の地理的な位置関係と、映画の中のストーリーの矛盾点が気になってしまうことくらいですかね…でもこれは、まあ「映画の中の架空の新潟です」と思ってみれば問題ありませんね!
はい、と言う訳で、自分が出演させていただいたという意味でも、それを抜きにしても、自分にとって本当に大切な映画になりました!