地球市民点描・麻川明(黙雷)      大衆欺瞞の弁証法から大衆啓蒙の弁証法へ 自然権なき市民法は無効である

無知の状態においておくことは可能であろうが

見ない以前の無知にすることは不可能である

『シェールガス革命とは何か?』←寺島実郎

2013-04-21 17:03:47 | 日記


201304101747_1.gif  
これから社会に出てエネルギーに関連した仕事に就きたい
という人は、世界のエネルギー問題の動向に大変注意を
払っていると思います。今、

日本のメディアにおける報道では、
脱原発で再生可能エネルギー・自然エネルギーを中心にした国を
作っていくべきという方向でエネルギー問題が議論されている
傾向があります。

私自身、長くエネルギー問題に関わってきて、
つい最近もアメリカでエネルギー問題の関係者と議論してきた
ところですが、世界のエネルギー問題の潮流が

脱原発、再生可能エネルギーの方向に進んでいるとあまり単純に
考えると少しずれがあります。そこで今回は、

最近話題になってきている「シェールガス」、
「シェールオイル」について理解を深めておきたいと思います。

201304101740_1-600x0.jpg  
化石燃料の一つに天然ガスがあります。
シェールガスのシェールは頁岩(けつがん)という意味ですが、
49)

上記の図でいうと、

水の底に溜まり固まった土の隙間に埋蔵されている天然ガスが
シェールガスです。在来型の天然ガスとは違う新しいタイプの
天然ガス、非在来型天然ガスです。

実はもう30年、40年も前から
頁岩層の中にシェールガスが埋蔵されているという話は知られて
いました。ところが、回収が技術的に難しいということが障壁に
なり、回収するのに大変コストがかかるため
商業ベースに乗らないということが
つい3年前までのエネルギー関係者の中での常識でした。  

ところが、アメリカのベンチャー企業が、
大量の水による水圧破砕で水平掘削して行き、
隙間のシェールガスガスを回収する技術を確立しました。

これにより、約2年前から突然商業ベースに乗り始めたのです。

カナダから北米、アメリカ合衆国30州でシェールガスの埋蔵量が
確認されブームが起こりました。一昨年の段階でアメリカは、
シェールガスの世界最大生産国にのし上がり、
天然ガスの形で世の中に出てくるようになりました。

201304101740_2-600x0.jpg  大量に出始めると天然ガスの価格が
どんどんと下がり始めました。
07)

上記のグラフを見ていただくと、
2008年まで天然ガスと原油の価格はほぼ相関して動いていた
ことが分かります。ところが、

2008年あたりから大量のシェールガスが発見され、
生産が開始されると天然ガスの価格が下がり始めました。

2008年まで天然ガスの価格は100万BTU当たり約12ドルでしたが
2012年の4月には遂に2ドルを割りました。

11月から12月にかけての動きを見ていると、
約3.7ドルまで戻ってきたところです。  

このシェールガスが
どれくらいのコストで掘ることができれば採算に乗るのか
というFS(フィージビリティスタディ:事業化調査)を行っています
が、低い価格でしか売れないとなると商業ベースに乗らない

ということで、推進していたプロジェクト担当者が驚いて
プロジェクトのブレーキを踏みかけている状況になり始めていた
のです。ところが、

上記のグラフの原油価格を見ていただくと分かると思いますが
原油価格は高いのです。WTI
(ウエスト・テキサス・インターミディエート)で行くと
1バーレル当たり100ドルという状況まで現在進んでいます。

そうすると、原油に投資した方が商業ベースに乗るということで
北米では投資が天然ガスから原油に向かっています。

今、原油がアメリカにとって輸出を支える非常に大きな力に
なり始めています。アメリカは、
原油の輸出を許可しておらず、付加価値を付けて精製したもの
ならば輸出してもいいということになっているため、
昨年のアメリカの貿易統計の輸出品目の第1位に石油精製品が
躍り出てきました。

これは中南米向けのガソリンやディーゼル燃料です。

アメリカの輸出の主力品目というと航空機とか機械機器を思い浮か
べるはずですが、今やアメリカ経済を支える輸出の柱として
原油から石油を精製した石油精製品というのが躍り出てくるように

化石燃料がアメリカの経済を支える柱になってきているのです。  

日本は今原発を止めて天然ガスで電気を付けていると言っても
いいと思いますが、日本が今入手している天然ガスの価格は

100万BTU当たり17.9ドルです。先程、話題にした約3.7ドルの
北米の水準から考えると4~5倍くらいの高いガスを、

主に中東やインドネシア、最近ではロシアから輸入して電気を
付けています。安いアメリカの天然ガスが輸入できれば
と誰でも思うはずですが、実は
そこにはアメリカ政府の方針があって

FTA(自由貿易協定)対象国を優先するという政策を
取っています

韓国とアメリカとの間にはFTAが締結されているため、
韓国には2012年の2月に安い天然ガスの輸出を許可しました。

ところが日本はまだアメリカとTPP・FTAを締結していないため
その天然ガスの輸出の許可がされていません。


遅かれ早かれアメリカは
日本に対して安い天然ガスの輸出を許可すると思いますが
実際に物が動くのは3~4年先と予想されることから、

日本の化学工業はむしろ北米に生産立地したほうがいいと
生産をシフトするような動きさえ見えてきています。  

要するに今回は、
平板な固定観念で世界のエネルギー動向を見てはいけない
ということを皆さんに伝えたかったのです。

脱原発・再生可能エネルギーで行けば日本のエネルギーは
なんとかなるというだけの考え方ではなく、

例えば新しいシェールガス・シェールオイルの動きを視界に入れて
おく必要があります。今、エネルギーの専門家が世界の地政学の
軸が中東から米州に移るのではないか
というぐらいアメリカはエネルギーの自給構想を持っています。

つまり、中東に依存しなくても
アメリカのエネルギー戦略が成り立つという方向に向けて、
シェールガス・シェールオイルの事業を持っていこうとしています。

要するに世界のエネルギーの流れがものすごい勢いで
変わろうとしています。エネルギー問題に興味のある方は
多次元的に世界のエネルギー動向に目を向けることが、
固定観念から脱却して行く非常に重要なポイントなのです。


2013

最新の画像もっと見る

コメントを投稿