その国は王国である。
国王は、万能ではないもののよく働き有能で頼りがいのある王様であった。
王様の側近も有能な人物で、黒子に徹しながらよく走りよく働いて光り輝いていた。
その国は戦上手ではなかったが、王様の下で強国を目指していた。
その国の神様は、「誰か一人の為の国は作らない」と言っていた。
でも実際は、一人の王を中心とした王国を作っていた。
その国の神様に誤算があったのは、大きな戦の前に、王とその側近の力が同時に急速に落ちてしまったことなのかもしれない。
王とその側近の力が落ちたのは、もしかすると一時的なことかもしれないが、大きな戦が始まるまでに王とその側近がかつての力を取り戻すのは難しいかもしれない。
今、その国が混乱に陥っているのは、かつて頼りがいのあった王様とその側近に頼れない状況下で戦士達がどうしていいか分からなくなっているからなのではないか?
戦士達が誰かを頼りにして戦っていたツケが今になって回ってきたからなのではないか?
「一人の王を中心とした王国を作ったことが間違い」とばっさり言うことは簡単。
でも、今のその国の神様は、病気で倒れた前の神様の後を引き継いで急いで国を作らなければならなかった。
最も早く国を形付ける方法を取らなければならなかったのかもしれない。
結果だけで全てが語られる身はつらいもの。
でも神様とはそういう存在だ。
その国の神様は、王とその側近の力が落ちてくることを見越して、有能な人物をその国に側近候補としてスカウトをしていた。
でも、その人物は王様タイプの人物で側近になろうとは考えなかったと見做された。
そして今の王様をクビにして、その人物を中心に新たに王国を作り直すには時間が無かった。
その為、その人物はクビとなった。
今はやはり王様タイプの若い戦士に期待をかけているようだ。
でも大きな戦は直近に迫っているので、その国の今の神様では、力の落ちた王様や側近は多分切れない。
切れば自ら作った王国はバラバラになる可能性があり、そうなると国作りは一から始めなければならない。時間が無い。リスクが高い。
その国の今の神様は、多分リスクよりも安全策を取るだろう。
その国の今の神様は、もはや自分の国の建て直しに精一杯で、戦う相手の分析や対策に手を回せない状況なのかもしれない。
それでも国民である私は、信じて期待してみる。
何の為に走るのか。誰の為に走るのか。
「一人は万人のために、万人は一人のために」
この言葉はサッカーにおいても正しいのではないか?
ましてや弱小国であるなら。
その事を二十三人がもう一度深く考えたなら。
そして仲間を信じて楽しんで戦ったなら。
そうなったらまだ、好転する余地はあるのではないか?
いまさら白けた気分で観戦するなんて嫌じゃないか。
W杯だもの。