新型コロナウィルス1日の新規感染者数で、日本がイギリスを追い抜きました。この冬コロナが猛威をふるったイギリスはロックダウンがずっと続いていたのですが、ここにきて感染者数が激減しています。そのタイミングで日本の感染者数は増えているため状況が逆転しているようです。

 

イギリスの感染者数減少

100万人当たりの新規感染者数を比べると、この冬ピークだった1月10日時点ではイギリスは881人、日本は49人でした。

これが3か月後の4月11日になって、日本23.73人とイギリスの22.75人を追い越しました。

4月14日では日本が27.58人、イギリスがは24.20人です。

イギリスで感染者がこれほど減った理由には12月のクリスマス前からずっと続いているロックダウンと検査体制の拡充、ワクチン接種効果があります。

 

(中略:少し長いですがクリアな解説でイギリスのコロナ対策がよく整理されていて分かりやすい)

 

イギリスは感染状況は「中」の状況でしたが、これから「低」に移行する傾向にあったので、このデータに基づき、30歳以下の年齢層グループにはアストラゼネカ以外のワクチンを接種する方針を決めました。

このような、科学的根拠に基づいた説明を聞くことで、イギリス国民は血栓などの副作用のリスクがあるにせよ、ワクチン接種によってもたらされる恩恵のほうが大きいということを理解しています。イギリスでワクチン接種を希望する人の確率が高い背景には、こういう、感情に訴えるのではなく、科学的根拠に基づいたリスクコミュニケーションがきちんとなされているところが大きいと思います。

コロナ対策:イギリスと日本の比較

イギリスは新型コロナウィルスの被害をことのほか重く受けました。累計の感染者数、重症者数、死者数などを見ると、人口当たりの被害は決して軽いものではありません。それでも、その失敗経験から様々なことを学び、その都度柔軟にコロナ対策を改善してきました。

国民全員に無料で医療サービスを提供するNHS国民医療サービスが保守党の緊縮財政の下、ぎりぎりの態勢で医療崩壊もせず、何とか持ちこたえたのも印象的です。これは医療従事者ほかの多大な努力もありますが、NHSという、国全体をまとめる公的医療システムがあるおかげと言えます。

NHSだけでなく、イギリス中の科学・医療専門家、大学、民間の研究所、製薬会社など、挙国一致で協力してきたことも、感染疫学、モデリング、医療など各専門分野の知見を総集して科学的考察に基づいた対策の背景にあります。

これに比較して日本のコロナ対策について感じるのは、過去の失敗や他国の事例から学ぶことなく、独自の対策に固執し、うまくいかない時には「もう少し我慢しましょう」「みんなが力を合わせて」などと国民に感情的に訴えるかけ声だけが目立つようだということです。

各専門家や医療・保健関係者は精いっぱいの努力をしているのでしょう。けれども、検査をしないため感染状況の実情がわからず、ワクチン接種も遅れていて、国民は見えないウィルスに素手で戦えと言われているような状態に見えます。

国民へのコミュニケーションも、科学的な考察なしにエヴィデンスに基づいた情報を示さないで、その場しのぎの対応を迫っているように見えます。

たとえば「マスク会食」とか「うちわ会食」とか、日本国外の人に英語で説明するのも恥ずかしいような非科学的な「対策」が真面目に検討されているのにはびっくりしました。

とはいえ、このような背景には国民もあおり文句や情緒に流されがちで、自分で科学的なデータに基づいた情報に基づいて自らの判断をしようとしない傾向もあるのかもしれません。

例えば、コロナ以前にも副作用疑惑でHPVワクチンを拒否する人が増え、日本でだけ子宮頸がんでの死亡者が多いという、外国から見ると不可解な現象もあります。新型コロナウィルスワクチンについても、「副作用が怖いから打たない」とか「他の人が接種して安全性が確認されるまでは打ちたくない」という人が少なくないようです。

こういう背景には日本メディアの報道の在り方にも問題があるのかもしれません。あおるような見出しを付けることで記事を読ませようとするあまり、見出しを読んだだけで「ワクチンこわい」と判断してしまう人がいるということもあるのでしょう。

また私はあまり知らないのですが、テレビのワイドショーなどでも、あまり正確でない情報や誤解されがちな報道の仕方が多いと聞きます。国民の命にかかわるような医療情報を扱うメディアには大きな責任があり、そのことは強く意識されるべきでしょう。

まとめ

新型コロナウィルスという未曽有のパンデミックを前に、世界中誰もが手探りでその解決策を模索しています。こういう時こそ、政府や国民の真の力量が問われるというものです。

日本人は答えの用意された問に答えたり、マニュアルに沿って正確に業務をこなすことは得意ですが、突発的な事態が起こった時自分の頭で考えて判断することが苦手というところがあります。また、目の前の大災害・事件の前にうろたえてあきらめてしまうところや現実を見据えず目をつむってやけばちになってしまうところも。

さらに、自分たちの過去の間違いを認めて反省せず、とにかく謝罪だけして「水に流す」ところがあります。過去の失敗から学び、どうしてそうなったのかを考え、同じような失敗をしないように将来に生かすことをしていくべきでしょう。

新型コロナウィルスに関してはまだまだ見通しのつかない状況のもと、現実を見すえながらその時点で得られるデータや知見を科学的な根拠と考察に基づいて、感情に惑わされず、長期的な目的をもってそれに向かって着実に進んでいくしかないのです。