とおいひのうた いまというひのうた

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《世界仰天ニュースで注目》「赤木ファイル」巡って闘う赤木雅子さんに“強力な助っ人”田中眞紀子氏が活動を支援していた

2024年01月13日 14時11分17秒 | #森友学園問題

1月9日、日本テレビで放送された『ザ!世界仰天ニュース』の特集「命をかけた赤木ファイル“文書改ざん”の謎」には多くの反響があった(TVerで16日まで配信中)。X(旧Twitter)上では放送した日本テレビを称賛する声などが相次いだ。「赤木ファイル」について注目が集まるなか、今も真相解明に向けて闘い続ける赤木雅子さんに“意外な支援者”が現われていた――。森友事件をスクープしたジャーナリスト・相澤冬樹氏がレポートする。

【写真】生前に田中角栄と交流を持っていた俳優・高倉健が見せた笑顔、燃えさかり煙が上がる田中角栄邸の緊迫

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「すごい番組やってる」「なかなか見応えのある内容でした。日テレやるじゃん」―― Xでは「赤木ファイル」が放送中にトレンドに急上昇し7万ポスト超。朝日新聞の今朝(13日)のテレビ時評でも「故・赤木俊夫さんの一連の出来事が、プライムタイムのバラエティ番組で紹介されたことで、幅広い層に衝撃をもって受け止められたのだ」と評価されている。これほど関心が高まったのは、やはり再現ドラマの持つ力だろう。事件で夫を亡くし、真相解明を求める妻・赤木雅子さんへの応援メッセージもXで相次いだ。

〈赤木さんが佐川さん(当時の財務省理財局長)を心配するコメントには心が打たれた〉

〈どうか赤木雅子さんが報われますように〉

 その赤木雅子さんは今、がけっぷちで闘っている。真相解明を目指して国を相手に起こした裁判は“認諾”という異例の手段で、国が約1億円を払って事実を明らかにしないまま強制終了。改ざんの責任者である佐川宣寿氏への裁判は「公務員の職務上の行為は個人責任を問わない」という理屈で一審も二審も敗訴。そして財務省が大阪地検特捜部の捜査で任意提出した文書の開示を巡る裁判でも一審で敗訴。心が折れそうになった時期もあった。

朝日新聞でボツになった「投稿」

 だが、そんな雅子さんに強力な“助っ人”が現われた。田中眞紀子元外相だ。田中角栄元首相の娘である眞紀子さんと雅子さんを結ぶ縁は、裁判の認諾がきっかけだった。認諾後、雅子さんの代理人弁護士のもとに手紙が届いた。手紙には「認諾について朝日新聞のオピニオン欄に投稿したが、社内での編集会議の末“没”となり紙面掲載は叶わなかった。せめて雅子さん本人にお伝えしたく、投稿を同封した」と手書きで丁寧に書かれていた。

 その投稿には、こう書かれていた。

「この裁判の行方を固唾を吞んで見守ってきた多くの国民は、呆気に取られ、やがてやり切れない思いに胸を塞がれたに違いない。もしこれが自分の身に降りかかった災難であったならばと考えると、国家権力のご都合主義と非情さに憤りを覚える。殊に、この結末に対する岸田総理や関係者のおざなりなコメントからはヒトカケラの愛情も感じられなかった」

 事件のの発端は、国が森友学園に国有地を8億円以上も値引きして1億3400万円で売り払ったことにある。時の安倍首相の妻、昭恵さんが小学校の名誉校長に就任していたことがわかり、疑惑の目が向けられることになった。そのことについて投稿では、

「低廉売却を指摘されると、自己保身のために白々しい強弁や、姑息な手段で言い逃れを繰り返す。そうした人物が政治権力を握っている限り、公僕たる役人は“忖度”という曖昧な表現で、これまた自己保身に走り、行き詰まると弱い立場にいる役人に改ざんを命じてシラを切り通す。赤木(俊夫)さんの痛ましい自死と、未亡人の怒りと嘆きは想像するに余りある」

 政治の質の劣化について「政治に関わる人々の利己的で冷淡な態度がある」と指摘した上で、「このことが社会全体から温かさを奪い、政治に対する不信感を醸成していると思われる」と分析。「赤木さんの事件やそのご家族の悲嘆を他人事として、その基本的人権に思いを致すこともない政治家たち」に怒りの矛先を向けた上で「日本が真の民主主義国家となるためには、国民一人一人が客観的ファクト(事実)をしっかりと積み上げて、冷静かつ論理的に分析する力を日常的に涵養することが必須である」と結んでいる。

線香の熨斗に「高倉健」の名が

 手紙には「返信には及びません」と書いてあったが、これほど思いのこもった投稿に感銘を受けた雅子さんはお礼の手紙を出した。ちょうど俊夫さんの命日だったのでそのことに触れると、すかさず祭壇用に大きな胡蝶蘭が届いた。送り状にあった電話番号にお礼の電話をすると「あなたからの手紙、机の前に貼ってますのよ」……こうして眞紀子さんと電話のやり取りが始まった。記者会見などでおなじみの“立て板に水”の威勢いいおしゃべりが心地よかった。何度か話すうちに、2022年6月15日、東京・目白の自宅に伺うことになった。

 目白御殿といえば、田中角栄元首相の邸宅として知られる。屋敷の門には今も元首相の表札がかかっている。雅子さんは広間で元首相の仏壇にお参りしてお線香をあげた。仏壇の横には高級線香が山積みになっている。熨斗には「高倉健」の名前が。健さんは生前、角栄氏のため毎年線香を送っていたのだという。大勢の政界関係者が出入りし、日本の政治を動かしてきた屋敷だ。各所に角栄氏の在りし日の写真が掲げてあった。

 そんなお付き合いが続く中、行政文書の開示を巡る裁判はまさかの一審敗訴。検察に任意提出した文書が具体的に特定されるだけでも、捜査手法や捜査機関の関心が推知され、将来の同種事件の捜査に影響を及ぼす恐れがある、というのが理由だった。これを二審でどう覆していくか? 取材を続けている関西テレビの諸岡陽太記者がアイディアを出した。

「検察の捜査に詳しい元検事の弁護士に意見書を書いてもらってはどうでしょう?」

 

田中眞紀子がいきなり電話を……

 雅子さんはその話を聞いてピンとくるものがあった。少し前、眞紀子さんと電話で話をした時に、こんなことを聞いていたのだ。

「最近、郷原弁護士を招いて、国会図書館で勉強会をしていますのよ」

 郷原信郎弁護士は元検事で、東京地検特捜部のほか、長崎地検や広島地検でも検察独自捜査の事件をてがけてきた経験がある。退官後、弁護士になってからは検察組織の在り方を批判し、安倍政権時代の「森友・加計・桜」問題を独自の立場からも徹底批判してきたことで知られる。最近の著書『「単純化」という病 安倍政治が日本に残したもの』での安倍政権批判の視点に眞紀子さんが関心を持ったことからつながりができたという。それなら眞紀子さんから紹介してもらってはどうだろう? そう考えた雅子さんはすぐに電話でお願いした。すると眞紀子さんはさっそく郷原氏に電話し、「雅子さんから郷原さんを紹介してほしいと言われてますの」と伝えたという。

 それを聞いて郷原弁護士はどう思ったのか。郷原氏はこう振り返る。

「私も前から森友事件、決裁文書改ざん事件のこと、国と戦ってこられた赤木雅子さんのことにも強い関心を持ってきました。何らかの形でお手伝いしたいと考えていました。ですからぜひ紹介してくださいとお伝えしました。ただその時点では依頼の内容はお聞きしていなかったんですよ」

 眞紀子さんの紹介で去年10月、雅子さんは郷原弁護士と都内の事務所で初めて会った。依頼はもちろん「将来の同種事件の捜査に支障がある」という理由での判決について意見書を書いてもらうこと。トントン拍子で話は進み、郷原氏は意見書を引き受けることになった。

「捜査っていろんなやり方がありますからね。警察の覚醒剤捜査みたいに、まず尿検査してとか、定型的にやることが決まっている捜査もありますけど、検察のやる捜査ってそうはいきません。捜査のやり方は個別の事件の内容に応じて、担当する検察官の考え方によって変わるものなんですよ。同種の事件でも一般的にこういうやり方をするというのは私の検察捜査の経験上ありえません。

 

 だから財務省が検察に任意提出をした資料が何かがわかるだけで捜査手法が推知されるなんて、そんなことある訳ないし、それを知った捜査対象者側が罪証隠滅をするなどということもおよそあり得ません。任意提出した文書が特定されたからといって将来の捜査に支障なんかありません」(郷原氏)

角栄邸の火事より「地震をちゃんとしなさい」

 そもそもこれを捜査対象だった財務省が言うのもおかしな話だ。それについて尋ねると、

「森友事件はすでに告発された全員が不起訴となって捜査は終わっています。だから『この事件の捜査に支障が出る』という言い訳が使えない訳です。そこで『将来の捜査への支障』なんて苦し紛れの屁理屈を持ち出してきた。こんなこと、財務省の人間には思いつかないでしょう。訟務検事が悪知恵を働かせたんですよ」(郷原氏)

 国が被告となる裁判では、国の代理人は弁護士ではなく法務局の訟務検事が務める。主に検察庁から出向した検事が担当するから、検察の捜査実務をよくわかっている。

「だから彼らは、実際には将来の捜査に影響がないなんてよくわかってる。それでも民事の裁判官は刑事の実務なんて知らないし、検事出身の訟務検事が『将来の捜査に支障があるんだ』と主張すれば、否定する材料もないので受け入れてしまうんですよ。そんな理屈が通用しないことは、意見書できっちりと指摘するつもりです」(郷原氏)

 最近話題になった日テレの『仰天ニュース』の再現ドラマを、郷原氏も見たという。

「一連の事件の経緯を非常にわかりやすく説明していましたね。俊夫さんがどういう人で、どういう風に追い込まれたのか。やらざるを得ない立場にされて、部下にはやらせず、自分が引き取った。それによって公務員の使命感に反することをやったことへの自責の念で精神的に追い込まれていったことがよくわかりました。

 俊夫さんは自分の行為が犯罪になることをよくわかっていたから、検察が来ると怯えていた。検察からの呼び出しに恐怖を覚えた。当人が一番そう感じていたのに、検察が全員不起訴という判断をしたこと自体おかしなことですよね。だから検察は絶対(任意提出の資料を)出されたくないから、とんでもない屁理屈をこねるんでしょう」

 

『仰天ニュース』の再現ドラマ、雅子さん本人はどう受け止めたのか?

「裁判を続けるのはつらかったけど、ご褒美をもらったような気がします。若い世代の方に知ってもらえたことが嬉しい。佐川さんにもこのドラマが届いてほしい。そして佐川さんにしかできないことをしてほしい。それってやっぱり説明することですよね」

 雅子さんをモデルにした連載漫画『がんばりょんかぁ、マサコちゃん』も全3巻が発売中だ。今は入手困難になっているようだが、ドラマや漫画を通し一人でも多くの方に事件を知っていただくことが、真実に近づく後押しになるだろう。

 そして力強い“助っ人”の田中眞紀子さん。1月8日、旧田中角栄邸が火事になり全焼したニュースは記憶に新しい。雅子さんがお参りした仏壇も健さんの線香も焼けてしまったのだろう。さぞ気落ちしているかと思いきや、郷原氏が10日に電話するとまたも“立て板に水”でこう語ったという。

「火事についてどうのこうのって、もういっぱい電話きてるんだけど、そんなことより地震の方をちゃんとしなさいって言ってやってるのよ」

 眞紀子節、健在である。

◆取材・文/相澤冬樹(ジャーナリスト)


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