山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信
COVID-19 TK-File (43) 第 8 波は来るだろうか 2022 年 9 月 19 日
黒木登志夫
皆さんの最大の関心事は、第 7 波の BA.5 に続く第 8 波があるかどうかだと思います。イギリ
ス、アメリカ(CDC),Oxford 大などの報告に目を通した限りでは、今のところ有力な後継ウイ
ルスはないようです(ただ日本のゲノム分析データが遅すぎますので、結論はだせませんが)。
オミクロンに的を絞ったワクチンも有効のようですので、ブースターをできるだけ多くの人が
打てば、一応収まる可能性があると思います。
心配していたように、全数把握を放棄した自治体の統計は、実効再生産数、年齢別分布などの重
要データが出せず、ほとんど役に立たないような情報になっていました。
そのほか、ゲノム解析結果についてまとめました。ブレイン・フォグの経験者についてのレポー
トもご紹介します。
目次と概要
A. 第 8 波は来るか
第 7 波の BA.5 は、ようやく急速に減少し始めました。イギリスの Sanger 研究所、CDC、Oxford
のデータに、BA.5 に取って代わる変異ウイルスがあるかどうか調べましたが、BA.5 に取って代
わって感染を広げる変異ウイルスの候補はないようです。あったとしても、感染力は弱いでしょ
う。
B. 新しいワクチンはオミクロンに効果がある
Moderna と Pfizer-BNT は、オミクロン BA.4,BA.5 に有効な mRNA ワクチンを作成しました。
Moderna ワクチンの接種後 29 日の抗体価はオミクロン防御に十分のようです(NEJM)。
C. Tedros 事務局長の談話(Reuters 通信の翻訳)
Tedros 事務局長のコロナの先が見えてきたという談話を翻訳しました。
D. 新しい発生届
前回、発生届があまりにもひどいのに驚いて、簡略版を作ってみました。政府の出した新しい発
生届はかなり簡略化されています。
E. 総数把握は疾病対策の基本
総数把握が医療逼迫の原因のような乱暴な議論により、それをやめた自治体が 5 県あります。そ
れらのデータを調べたところ、少なくとも二つの重要なデータ、①実効再生産数。②年齢階層別
感染者数が消えていました。。政府と専門家会議は、このような重要データなしで感染対策が出
来ると考えているのでしょうか。
F. 重症化に関わるホスト因子の解析
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COVID の感染、重症化にはウイルスゲノムとホスト側の遺伝子が関わっています。ホスト遺伝
子についての大規模解析から、いくつかの候補が見つかりました(E-1)。日本の研究グループは、
非高齢者の重症化遺伝子として免疫に関わる DOCK2 を同定しました(E-2)。また、千葉大学
は、重症化遺伝子として Myl9 という遺伝子を同定しました(E-3)。日本の COVID 研究もよう
やく動き始めたようで