2020年1月4日 7時07分米イラン対立 NHK
米国 与野党で評価分かれる
共和党の議会下院トップ、マッカーシー院内総務は声明で「ソレイマニはテロリストだ。トランプ大統領とわれわれの軍はイランと世界に対し、アメリカへの攻撃は必ずその報いを受けることになると知らしめた」として、全面的に評価しています。
また共和党の重鎮でトランプ大統領に近いグラム上院議員はアメリカメディアのインタビューに対し、「ソレイマニはイラン政府内で最も冷酷で悪意に満ちた人物だった。彼の手はアメリカ人の血で染まっていた。イランの攻撃に対するトランプ大統領の大胆な行動に感謝する」と述べ、アメリカ軍に攻撃を指示したトランプ大統領を高く評価しています。
一方、民主党のペロシ下院議長は声明で「攻撃はさらなる危険な暴力の拡大を引き起こすおそれがある」として、イランによる報復への懸念を表明しました。
そのうえで「今回の措置は議会との協議なしに行われた。議会はこの深刻な状況と、この地域へのアメリカ軍の追加部隊の拡大を含む、政権による次の行動について、直ちに報告を受けなければならない」と述べ、議会としてトランプ政権に詳細な説明を求める考えを強調しました。
また民主党のシフ下院情報委員長も声明で「ソレイマニは想像を絶する暴力の責任があり、彼がいなくなり世界はよりよくなった」としつつも、「議会は攻撃を承認しておらず、アメリカ国民はイランとの戦争を望んでいない」と政権の対応を批判しています。
さらに大統領選挙の民主党の有力候補、バイデン前副大統領も声明を発表し「ソレイマニの死を悼むアメリカ国民はいない。彼は裁きを受けるに値する」と指摘しつつ、「トランプ政権はイランによる将来の攻撃を抑止するためだったと説明しているが、今回の行動はほぼ確実に逆の効果をもたらすだろう。トランプ大統領はダイナマイトを一触即発の危険な地域に放り投げた」としてトランプ大統領を非難しました。
イラク「米の攻撃はイラクの主権に対する傲慢な侵害」
このうちアブドルマハディ暫定首相は3日、声明を発表し、アメリカによる攻撃を「イラクと地域一帯、そして世界での壊滅的な戦争に発展する導火線に点火するような危険な行為だ」と批判しました。
そのうえで今回の攻撃はアメリカ軍の駐留の目的を治安部隊の訓練やテロとの戦いに定めたアメリカとの取り決めに違反する行動だとしています。
またイラクで多数派のイスラム教シーア派の最高権威シスターニ師は3日、声明を発表し、アメリカによる攻撃について「イラクの主権と国際的な合意に対する傲慢な侵害だ。攻撃は過激派組織IS=イスラミックステートのテロリストを打ち破った司令官たちの死につながった」として、アメリカの攻撃を非難するとともに中東地域でISとの戦いを主導したソレイマニ氏の死を悼みました。
そのうえで「これらの出来事は国が非常に難しい時期へと向かっていることを示している。すべての関係者に対し、自制を保ち、賢く行動するよう呼びかける」としています。
イラク議会は近く、緊急の会合を開いて対応策を協議する予定で、アメリカとイランがしのぎを削る舞台となってきたイラクが今回のアメリカ軍の攻撃に対してどのような対応を示すのか注目されます。
中国 米に自制求める
※「チ」は、竹かんむりに褫のつくり
トルコ「深く憂慮」
ドイツとフランスも懸念表明
そのうえでアメリカのポンペイオ国務長官とEU=ヨーロッパ連合のボレル上級代表と協議をしたとして、関係する各国と協力して事態の鎮静化を図る考えを示しました。
またフランスのルドリアン外相も3日、声明を発表し「すべての当事者に対して自制を求めるとともに、イランに対して地域の不安定な状況を悪化させたり、核開発で危機をもたらすような行動を避けるよう求める」としています。
そのうえで地域の緊張がこれ以上高まらないように、今後数日間かけて関係国と協議を続ける方針を明らかにしました。
ロシア外相 アメリカを非難
この中でラブロフ外相はポンペイオ長官に対して「国連の加盟国が別の加盟国の政府関係者を、何も知らない第三の主権国家において排除するという行為は国際法を著しく犯すものであり非難に値する」と非難したということです。
そしてラブロフ外相は「アメリカのとった対応は地域の平和と安定にとって深刻な結果をもたらし、新しい緊張を生み出す」と指摘し、みずからの目的のために武力を行使することをやめ、すべての問題を対話によって解決するよう促したということです。
国連「湾岸で新たな戦争を起こすわけにはいかない」
そのうえで、「湾岸で新たな戦争を起こすわけにはいかない」と述べて、事態がエスカレートすれば戦争に発展しかねないという危機感をあらわにしました。
ハク副報道官は、グテーレス事務総長がこの日の朝、アメリカのクラフト国連大使に電話し、声明と同じ趣旨のメッセージを伝えたとしていますが、詳しいやり取りは明らかにしませんでした。
一方、中国の張軍国連大使は安全保障理事会の会合に出席する前、記者団に「状況を注視している。中国は、国際関係におけるいかなる武力の行使にも反対する。イラクの主権と領土の保全は完全に尊重されるべきだ」と述べて、アメリカの軍事行動はイラクの主権侵害に当たるという認識を示しました。
2020年1月4日 9時59分米イラン対立 NHK
アメリカがイラン精鋭部隊、革命防衛隊のソレイマニ司令官をイラクで殺害し中東地域で緊張が高まる中、イラクの国営テレビはアメリカ軍が3日、現地の民兵組織を標的にした新たな攻撃を行い、5人が殺害されたと伝えました。
イラクの国営テレビは首都バグダッドの北部で3日夜、アメリカ軍がイスラム教シーア派民兵組織を標的に攻撃を行い、5人を殺害したと伝えました。
イラクでは、イランの影響下にあるシーア派民兵組織が活動し、現地に駐留するアメリカ軍との間で緊張した状態が続いています。
一方、アメリカ政府から発表はなく、詳しいことは明らかになっていません。
首都バグダッドではアメリカがトランプ大統領の指示に基づき、イランの精鋭部隊、革命防衛隊のソレイマニ司令官を標的にした攻撃を実施し、殺害されたばかりです。
イランの最高指導者ハメネイ師はこれに対して報復措置に踏み切る構えを見せていて、アメリカによるイランの支援勢力への攻撃が新たに行われたのであれば、アメリカとイランとの間でさらに緊張が高まることが懸念されます。
2020年1月4日 10時24分米イラン対立 NHK
トランプ政権でイラン政策を統括するフック特別代表は3日、国務省でNHKの単独インタビューに応じました。
フック氏は、アメリカが殺害したイランの精鋭部隊、革命防衛隊のソレイマニ司令官について「イラク、シリア、それにレバノンなどでアメリカに対する大規模で、大勢の犠牲者を出す攻撃を計画していた」と述べました。
さらに「攻撃はアメリカにとどまらず、ほかの国にも被害を及ぼす可能性があった」と述べ、司令官に対する攻撃は正しかったと強調しました。
また、フック氏は、中東地域への自衛隊の派遣について「アメリカによる海洋安全保障の取り組みはイランによる海上での攻撃を防ぐのに役立っている。日本がいればわれわれの目と耳が増え、タンカーを爆破するような攻撃が起きる前に見つけることができる。協力して抑止するのが非常に重要だ」と述べて、日本との協力に期待を示しました。
一方、今回の攻撃によってイランは報復の構えを見せていますが、フック氏は「緊張は以前から高くなっていて、それはイランがエスカレートさせるのをやめないからだ。アメリカの攻撃はそれをやめさせるためだ」と述べ、事態の一層の緊迫化にはつながらないという考えを示しました。
2020年1月4日 7時14分米イラン対立 NHK
アメリカのトランプ大統領はイランの精鋭部隊、革命防衛隊の司令官を殺害したことについて、「戦争を始めるために行動を起こしたのではない」と述べ、戦争は望まないという考えを改めて示しました。
トランプ大統領は南部フロリダ州で3日、演説し、「昨夜、私の指示によってアメリカ軍は完璧で正確な空爆を成功させ世界一のテロリストを殺害した」と述べ、イランの精鋭部隊、革命防衛隊のソレイマニ司令官を殺害したと述べました。
そしてソレイマニ司令官は20年にわたり中東でテロ行為を繰り返し、その指示のもと多くのアメリカ人が殺害され、最近もイラクのアメリカ大使館が攻撃を受けたほか、アメリカの外交官や軍人を標的にさらなる攻撃を計画していたと主張しました。
そのうえで「アメリカ人に危害を加えたり加えようとするテロリストに対する方針は明白だ。テロリストを見つけ出し、排除する。常にアメリカの外交官や軍人、それにすべてのアメリカ人や同盟国を守る」と述べ、テロリストには厳しい態度で臨むと強調しました。
一方で、「われわれは昨夜、戦争を止めるために行動を起こした。戦争を始めるために行動を起こしたのではない」と述べ、イランとの戦争は望まないという考えを改めて示しました。
そのうえで「私はイランの人々を深く尊敬している。イランの体制転換を求めているのではない。しかしながらイランの現体制による中東での攻撃はいますぐ止めなければならない」と述べ、イランの指導部を強くけん制しました。