



でも、絵が上手な子だった。
彼は、よく空の絵を描いた。
抜けるような色使いには、子供心に驚嘆した。

冷や汗をかきながら、指を使って、ええ・ええと・と答えを出そうとする姿を周りの子供は笑う。
N先生は答えが出るまで、しつこく何度も言わせた。
私はN先生が大嫌いだった。

全校集会で先生のお別れ会をやることになった。
生徒代表でお別れの言葉を言う人が必要になった。
先生に一番世話をやかせたのだから、A君が言え、と言い出したお馬鹿さんがいた。
お別れ会で一人立たされて、どもる姿を期待したのだ。


A君の感謝の言葉は10分以上にも及ぶ。
水彩絵の具の使い方を教えてくれたこと。
放課後つきっきりでそろばんを教えてくれたこと。
その間、おしゃべりをする子供はいませんでした。
N先生がぶるぶる震えながら、嗚咽をくいしばる声が、体育館に響いただけでした。







