ロンドンオリンピック開幕がすぐそこまで来ている。昼休み、会社の周りを散歩しながら目についた変化を写真に撮ってみた。先日のFM群馬での電話インタビューで話しそびれてしまったこともあるので、以下に今日撮った写真と合わせて補足としてまとめておくことにする。
ロンドン市内の盛り上がりのこと
五輪競技の全37会場のうち27会場がロンドンにある。街の中にはオリンピックカラー(パープルピンク)の広告やサインが多く見られるようになってきた。地下鉄にも競技会場への行き方を示すピンクのステッカーが貼られている。大会期間中は閉鎖される駅もあるほか、大きな混雑が予想される。7月10日にはそうした交通機関規制のリハーサルがあったくらいである。見覚えのないバス停ができる一方で、既存のバス停には混雑注意を促すサインが貼られだした。混雑予想マップが駅で配られたりもしている。








街の辻辻にはコスプレをしたマスコットの像が置かれ始めた。ロンドンの名所や風物を模した服装で、アフターヌーンティやおなじみの赤い制服の衛兵といった文化を紹介している。


「チームGB」(イギリス統一チームの名前)の文字もよく見かける。サッカーの欧州選手権、テニスのウィンブルドン選手権が終わり、スポーツの中心はようやくオリンピックに回ってきた。数十年ぶりに結成されるイギリス統一サッカーチームにおけるベッカムの不選出や、つい先日のウィンブルドンで準優勝に終わったアンディ・マレーがメダルをとれるか、などが話題だ。
去年の4月に皇太子の結婚式、今年の6月には女王の即位60周年記念式典、というように国家的なイベントがつづいている。イギリスにおけるSuicaのような存在であるオイスターカードでも、成婚記念カードや即位60周年記念カードにつづいて、オリンピック記念2012年版カードが発売されている。リージェントストリートにはつい最近までイギリスの国旗がかかっていたが、今は万国旗に架け替えられている。オリンピックに参加する206カ国の国旗が、閉会式終了まで掲げられるとのことである。
オリンピックに携わる7万人のボランティアスタッフには24万人の応募があったそうである。加えて、市内ではロンドンアンバサダーと呼ばれるピンクの制服を着たガイドスタッフが観光客の手助けをする予定だ。
開会式は『トレインスポッティング』『スラムドッグミリオネア』のダニーボイルが演出する。その場で映画を撮影をしているような臨場感のあるものにしようと意気込んでいるらしい。おおとりとしてポール・マッカートニーも出演するそうだ。ちなみに、ポール・マッカートニーの娘ステラ・マッカートニーがイギリスチームの五輪ユニフォームをデザインしていることも話題を呼んだ。
ロンドン五輪が初めてのことではないが、オリンピック関連施設で使われた家具は大会後に専用サイトRemains of The Gamesで売りに出される。一番高いチケットセンターの受付テーブルでも2500ポンド、一番安いハンガー10個セットで50ペンス。専用サイトでは、「すべて新品でしたが、手元に届くまでにはオリンピック会場で使われています」と説明されている。あの有名選手も使ったかも、という楽しみだろうか。
先週末時点での情報によると、チケットはまだ残席にだいぶ余裕があるらしい。特にロンドン以外の都市で開催されるサッカーのチケットが余っているとのこと。サッカーのグループリーグは対戦カードの発表が遅いため、毎回売り切るのが難しい競技なのだそうである。当初用意された席の20%である50万席分を削減することが決まったが、さらに50万枚のチケットがまだ売れ残っている。そのほかにも売れ残っているチケットがあり、最近ロンドン市内の天気があまりよくないことも不安材料とのことである。
ロンドンを訪れるひとのこと
この夏の間に例年に比べて60万人観光客が増えるとする予測もあるが、オリンピックの混雑を避けてあえてロンドン以外の場所を旅行先に選ぶひとも多いのではという予測もある。もともと8月はホリデーのシーズンであり、オリンピックを避けて期間中はロンドンを脱出するというひともいる(僕の会社の同僚など)。それを防ぐためなのかは知らないが、ブリティッシュエアウェイズは「海外旅行はやめよう、(国内にとどまって)イギリスチームを応援しよう」というキャンペーン#HomeAdvantageを展開中である。その一方で、アイルランド観光局は#EscapeTheMadnessと題してオリンピックを避ける観光客を呼び寄せるキャンペーンを展開中。
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ビッグベンやタワーブリッジ、ロンドンアイといった昔からある名所に加えて、オリンピックに合わせてオープンしたランドマークや海外の大きなイベントと関係したデザイナーが設計した建物が話題である。先日オープンしたシャードはヨーロッパー高いビルでロンドン市内のほぼどこからでも見える。パリのポンピドゥーセンターを設計した建築家レンゾ・ピアノが設計した。高級マンション&ホテル、ミシュラン星付レストラン、投資家のオフィスなどが入居するが、展望台はまだオープンしていない。やはり先日オープンしたばかりのテムズ川を横断するケーブルカーは、オリンピック会場をつなぐ公共交通網の一部であると同時にアトラクションでもある。ブラジルオリンピック会場のマスタープランをするイギリス人建築家ウィルキンソン・エアがデザイン。彼らはオリンピック公園内に仮設のバスケットボールコートもデザインしている。毎年恒例のサーペンタインギャラリーの夏のパヴィリオンは、今年は前回のオリンピックで「鳥の巣」をつくった建築家ヘルツォーク・アンド・ド・ムーロンと現代美術家アイ・ウェイウェイのコンビが設計。そのほかにも、上海万博でイギリス館を設計した建築家トーマス・ヘザウィックがV&Aミュージアムで彼の作品を振り返る展示を行っていたり、ダミアン・ハーストがテートモダンで大規模な回顧展を開いていたり、発電所の燃料タンク跡地をリノベーションしたパフォーマンスアートのための新しい展示スペースがテートモダンにオープンしたり、オリンピックに合わせてきたと思われる力の入った展示がそろう。
定期的に更新される地下鉄の路線図の表紙を、今シーズンはイギリスの女性現代美術家のトレーシー・エミンが製作している。ロンドン市内で彼女が好きな場所や彼女のテリトリーだけをイラストにした彼女のためだけの路線図といった趣向。ちなみにオリンピックのチケットを持っているとその日はロンドン市内で公共交通機関が無料で使える。
昼間からパブに人が集まり、天気がいいと道にまで人が溢れ出す。フィッシュアンドチップスや、ローストビーフ、シェファーズパイ。ギネスはイギリスでも人気だが、実際はアイルランドのビール。イギリス特有の夏の飲み物といえばジンをベースに果物を漬け込んだカクテル、ピムスである。ロンドンには気持ちのよい公園がたくさんあるので、お昼は同僚とよくピクニックをして食べる。サンドウィッチのテイクアウェイはどこにでもあるし、うどんや寿司のテイクアウェイの店も同じく店舗数を増やしている。日本とは少し違う、アレンジされた味ではあるが昔に比べておいしくなってきた気がする(それとも僕の味覚がおかしくなってきてしまったのだろうか?)。






イギリスといえば、何でも賭の対象にする「ブックメーカー」があるが、もちろん五輪も賭の対象になっている。僕はやったことがないのでわからないけど、街中でもブックメーカーはいたるところに店を出している。違法な賭けを取り締まるために、オリンピック運営委員会とブックメーカーの話し合いが5月にもたれたりしたそうである。
五輪会場のこと
五輪会場は既存の施設を多く使うため、常設となるメイン会場は3つだけ。それ以外はオリンピック公園内にあるものも仮設である。メイン会場も終了後仮設の席が取り外されて規模を縮小するとのこと。東ロンドンの工業地帯や埋立地(ブラウンフィールド)が五輪会場に選定され、バラバラになっていた周囲のコミュニティがオリンピック公園を介してつながることが意図されている。オリンピックにかかった経費の75%はオリンピック後も残されるインフラと施設に対して使われたとのことである。オリンピック期間中は公園内のウォーキングツアーも組まれるので(試合のチケットか入場券が必要)こうした変化を見ることができるだろう。ロンドンはパッチワークのように性格のことなるエリアが隣り合いながら成長してきた街である。
オリンピック公園は、エリザベス女王オリンピック公園と名前を変えて残され、今後住宅地として再開発される。そのうちの半分はアフォーダブルハウジングと呼ばれる、価格を抑えて入居しやすくした住居になる。 メインスタジアムは地元のサッカーチームウェストハムのホームスタジアムとして使われる見込みだが、F1レース場に改築する案も出ているようだ。現在入札が行われている。
今回のオリンピックはゼロエナジー・ゼロカーボンをうたっていたが、実際にはかなわなかった。当てにしていた風力発電機が建設できず再生可能エネルギーによる発電が目標に届かなかったり、オリンピック期間中に出たごみは極力埋立地に向かわないように計画されていたが達成できなかったことなどが理由である。次回のブラジル五輪もイギリスの設計チームがマスタープランに関与しているので、残された課題は次回に生かされるのかもしれない。ちなみにロンドン五輪のマスコットはオリンピック会場で使われた建設資材の破片から生まれたことになっている。
オリンピックに合わせて市内ではインフラの整備が進められた。主要な地下鉄ではプラットフォームまで無料WiFiが通じている。僕が来た当初の5年前は電車の中で携帯電話を出しているひとはほとんどいなかったが、今ではほとんどの人が電子書籍リーダか携帯電話をさわっている。その一方で、オリンピックの前に大不況が訪れたことの影響なのかは定かではないが、現在も工事中の主要な地下鉄駅などもある。

一部の路線では、トーマス・ヘザウィックがデザインした新型の二階建てバスが導入された。昔のロンドンの二階建てバスはバス停以外でもバスに追いつけば飛び乗ったり途中下車したりすることができたが、新型車量はこの伝統を復活している。貸し自転車制度バークレーサイクルハイヤーも一昨年から始まっている。協力に推進した市長の名前をとってボリスバイクとも呼ばれている。年会費を払えば、30分以内なら無料で乗れる。ロンドンには通勤に使う自転車を購入すると割引が受けられる仕組みもある。オリンピック期間中は交通機関に大混雑が予想されるため、移動には徒歩や自転車が推奨されている。

オリンピックに関連したアートの取り組み
オリンピックに合わせた文化的取り組みとしては、ロンドン2012フェスティバルが開催中である。パラリンピックに合わせて『アンリミテッド』と題した障害者アートの企画もある。たとえば『ダンスGB』と題されたイベントでは、スコットランド、ウェールズ、イングランドのダンスカンパニーがオリンピックをテーマに新作を一緒に上演した。『BIG DANCE 2012』ではイギリス国内でワークショップを開き、最後には1000人のアマチュアダンサーたちがトラファルガースクエアに集まり一緒にダンス公演をした。デザインミュージアムでは「スポーツにおける勝利のためのデザイン展」を開催中である。

それらに加えて、ロンドン市長主催のイベントが「サマーライクノーアザー 今までにない夏」と題して断続的に開かれている。サプライズで市内のどこかに風船でできた実物大のストーンヘンジが出現したり、ロンドン市内の7つの名所でワイヤーアクションでダンスをするイベントが開かれたり、今後は街中で突然シェークスピア劇が始まったりするなどするらしい。『Bus-Tops』と題して、ロンドン市内30箇所のバス停の屋根にLEDのディスプレイを取り付けて、一般の人がウェブサイト上から投稿したアイデアやアニメーションを選んで上映する試みも始まった。ロンドンを訪れたひとが二階建てバスからふと下を覗くと誰かからのメッセージが見えるという趣向。街の中に市民参加型のアートを埋め込んで、ロンドンを訪れたひとを一緒に歓迎しようというものだろう。
ロンドン市内の盛り上がりのこと
五輪競技の全37会場のうち27会場がロンドンにある。街の中にはオリンピックカラー(パープルピンク)の広告やサインが多く見られるようになってきた。地下鉄にも競技会場への行き方を示すピンクのステッカーが貼られている。大会期間中は閉鎖される駅もあるほか、大きな混雑が予想される。7月10日にはそうした交通機関規制のリハーサルがあったくらいである。見覚えのないバス停ができる一方で、既存のバス停には混雑注意を促すサインが貼られだした。混雑予想マップが駅で配られたりもしている。








街の辻辻にはコスプレをしたマスコットの像が置かれ始めた。ロンドンの名所や風物を模した服装で、アフターヌーンティやおなじみの赤い制服の衛兵といった文化を紹介している。


「チームGB」(イギリス統一チームの名前)の文字もよく見かける。サッカーの欧州選手権、テニスのウィンブルドン選手権が終わり、スポーツの中心はようやくオリンピックに回ってきた。数十年ぶりに結成されるイギリス統一サッカーチームにおけるベッカムの不選出や、つい先日のウィンブルドンで準優勝に終わったアンディ・マレーがメダルをとれるか、などが話題だ。
去年の4月に皇太子の結婚式、今年の6月には女王の即位60周年記念式典、というように国家的なイベントがつづいている。イギリスにおけるSuicaのような存在であるオイスターカードでも、成婚記念カードや即位60周年記念カードにつづいて、オリンピック記念2012年版カードが発売されている。リージェントストリートにはつい最近までイギリスの国旗がかかっていたが、今は万国旗に架け替えられている。オリンピックに参加する206カ国の国旗が、閉会式終了まで掲げられるとのことである。
オリンピックに携わる7万人のボランティアスタッフには24万人の応募があったそうである。加えて、市内ではロンドンアンバサダーと呼ばれるピンクの制服を着たガイドスタッフが観光客の手助けをする予定だ。
開会式は『トレインスポッティング』『スラムドッグミリオネア』のダニーボイルが演出する。その場で映画を撮影をしているような臨場感のあるものにしようと意気込んでいるらしい。おおとりとしてポール・マッカートニーも出演するそうだ。ちなみに、ポール・マッカートニーの娘ステラ・マッカートニーがイギリスチームの五輪ユニフォームをデザインしていることも話題を呼んだ。
ロンドン五輪が初めてのことではないが、オリンピック関連施設で使われた家具は大会後に専用サイトRemains of The Gamesで売りに出される。一番高いチケットセンターの受付テーブルでも2500ポンド、一番安いハンガー10個セットで50ペンス。専用サイトでは、「すべて新品でしたが、手元に届くまでにはオリンピック会場で使われています」と説明されている。あの有名選手も使ったかも、という楽しみだろうか。
先週末時点での情報によると、チケットはまだ残席にだいぶ余裕があるらしい。特にロンドン以外の都市で開催されるサッカーのチケットが余っているとのこと。サッカーのグループリーグは対戦カードの発表が遅いため、毎回売り切るのが難しい競技なのだそうである。当初用意された席の20%である50万席分を削減することが決まったが、さらに50万枚のチケットがまだ売れ残っている。そのほかにも売れ残っているチケットがあり、最近ロンドン市内の天気があまりよくないことも不安材料とのことである。
ロンドンを訪れるひとのこと
この夏の間に例年に比べて60万人観光客が増えるとする予測もあるが、オリンピックの混雑を避けてあえてロンドン以外の場所を旅行先に選ぶひとも多いのではという予測もある。もともと8月はホリデーのシーズンであり、オリンピックを避けて期間中はロンドンを脱出するというひともいる(僕の会社の同僚など)。それを防ぐためなのかは知らないが、ブリティッシュエアウェイズは「海外旅行はやめよう、(国内にとどまって)イギリスチームを応援しよう」というキャンペーン#HomeAdvantageを展開中である。その一方で、アイルランド観光局は#EscapeTheMadnessと題してオリンピックを避ける観光客を呼び寄せるキャンペーンを展開中。
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ビッグベンやタワーブリッジ、ロンドンアイといった昔からある名所に加えて、オリンピックに合わせてオープンしたランドマークや海外の大きなイベントと関係したデザイナーが設計した建物が話題である。先日オープンしたシャードはヨーロッパー高いビルでロンドン市内のほぼどこからでも見える。パリのポンピドゥーセンターを設計した建築家レンゾ・ピアノが設計した。高級マンション&ホテル、ミシュラン星付レストラン、投資家のオフィスなどが入居するが、展望台はまだオープンしていない。やはり先日オープンしたばかりのテムズ川を横断するケーブルカーは、オリンピック会場をつなぐ公共交通網の一部であると同時にアトラクションでもある。ブラジルオリンピック会場のマスタープランをするイギリス人建築家ウィルキンソン・エアがデザイン。彼らはオリンピック公園内に仮設のバスケットボールコートもデザインしている。毎年恒例のサーペンタインギャラリーの夏のパヴィリオンは、今年は前回のオリンピックで「鳥の巣」をつくった建築家ヘルツォーク・アンド・ド・ムーロンと現代美術家アイ・ウェイウェイのコンビが設計。そのほかにも、上海万博でイギリス館を設計した建築家トーマス・ヘザウィックがV&Aミュージアムで彼の作品を振り返る展示を行っていたり、ダミアン・ハーストがテートモダンで大規模な回顧展を開いていたり、発電所の燃料タンク跡地をリノベーションしたパフォーマンスアートのための新しい展示スペースがテートモダンにオープンしたり、オリンピックに合わせてきたと思われる力の入った展示がそろう。
定期的に更新される地下鉄の路線図の表紙を、今シーズンはイギリスの女性現代美術家のトレーシー・エミンが製作している。ロンドン市内で彼女が好きな場所や彼女のテリトリーだけをイラストにした彼女のためだけの路線図といった趣向。ちなみにオリンピックのチケットを持っているとその日はロンドン市内で公共交通機関が無料で使える。
昼間からパブに人が集まり、天気がいいと道にまで人が溢れ出す。フィッシュアンドチップスや、ローストビーフ、シェファーズパイ。ギネスはイギリスでも人気だが、実際はアイルランドのビール。イギリス特有の夏の飲み物といえばジンをベースに果物を漬け込んだカクテル、ピムスである。ロンドンには気持ちのよい公園がたくさんあるので、お昼は同僚とよくピクニックをして食べる。サンドウィッチのテイクアウェイはどこにでもあるし、うどんや寿司のテイクアウェイの店も同じく店舗数を増やしている。日本とは少し違う、アレンジされた味ではあるが昔に比べておいしくなってきた気がする(それとも僕の味覚がおかしくなってきてしまったのだろうか?)。






イギリスといえば、何でも賭の対象にする「ブックメーカー」があるが、もちろん五輪も賭の対象になっている。僕はやったことがないのでわからないけど、街中でもブックメーカーはいたるところに店を出している。違法な賭けを取り締まるために、オリンピック運営委員会とブックメーカーの話し合いが5月にもたれたりしたそうである。
五輪会場のこと
五輪会場は既存の施設を多く使うため、常設となるメイン会場は3つだけ。それ以外はオリンピック公園内にあるものも仮設である。メイン会場も終了後仮設の席が取り外されて規模を縮小するとのこと。東ロンドンの工業地帯や埋立地(ブラウンフィールド)が五輪会場に選定され、バラバラになっていた周囲のコミュニティがオリンピック公園を介してつながることが意図されている。オリンピックにかかった経費の75%はオリンピック後も残されるインフラと施設に対して使われたとのことである。オリンピック期間中は公園内のウォーキングツアーも組まれるので(試合のチケットか入場券が必要)こうした変化を見ることができるだろう。ロンドンはパッチワークのように性格のことなるエリアが隣り合いながら成長してきた街である。
オリンピック公園は、エリザベス女王オリンピック公園と名前を変えて残され、今後住宅地として再開発される。そのうちの半分はアフォーダブルハウジングと呼ばれる、価格を抑えて入居しやすくした住居になる。 メインスタジアムは地元のサッカーチームウェストハムのホームスタジアムとして使われる見込みだが、F1レース場に改築する案も出ているようだ。現在入札が行われている。
今回のオリンピックはゼロエナジー・ゼロカーボンをうたっていたが、実際にはかなわなかった。当てにしていた風力発電機が建設できず再生可能エネルギーによる発電が目標に届かなかったり、オリンピック期間中に出たごみは極力埋立地に向かわないように計画されていたが達成できなかったことなどが理由である。次回のブラジル五輪もイギリスの設計チームがマスタープランに関与しているので、残された課題は次回に生かされるのかもしれない。ちなみにロンドン五輪のマスコットはオリンピック会場で使われた建設資材の破片から生まれたことになっている。
オリンピックに合わせて市内ではインフラの整備が進められた。主要な地下鉄ではプラットフォームまで無料WiFiが通じている。僕が来た当初の5年前は電車の中で携帯電話を出しているひとはほとんどいなかったが、今ではほとんどの人が電子書籍リーダか携帯電話をさわっている。その一方で、オリンピックの前に大不況が訪れたことの影響なのかは定かではないが、現在も工事中の主要な地下鉄駅などもある。

一部の路線では、トーマス・ヘザウィックがデザインした新型の二階建てバスが導入された。昔のロンドンの二階建てバスはバス停以外でもバスに追いつけば飛び乗ったり途中下車したりすることができたが、新型車量はこの伝統を復活している。貸し自転車制度バークレーサイクルハイヤーも一昨年から始まっている。協力に推進した市長の名前をとってボリスバイクとも呼ばれている。年会費を払えば、30分以内なら無料で乗れる。ロンドンには通勤に使う自転車を購入すると割引が受けられる仕組みもある。オリンピック期間中は交通機関に大混雑が予想されるため、移動には徒歩や自転車が推奨されている。

オリンピックに関連したアートの取り組み
オリンピックに合わせた文化的取り組みとしては、ロンドン2012フェスティバルが開催中である。パラリンピックに合わせて『アンリミテッド』と題した障害者アートの企画もある。たとえば『ダンスGB』と題されたイベントでは、スコットランド、ウェールズ、イングランドのダンスカンパニーがオリンピックをテーマに新作を一緒に上演した。『BIG DANCE 2012』ではイギリス国内でワークショップを開き、最後には1000人のアマチュアダンサーたちがトラファルガースクエアに集まり一緒にダンス公演をした。デザインミュージアムでは「スポーツにおける勝利のためのデザイン展」を開催中である。

それらに加えて、ロンドン市長主催のイベントが「サマーライクノーアザー 今までにない夏」と題して断続的に開かれている。サプライズで市内のどこかに風船でできた実物大のストーンヘンジが出現したり、ロンドン市内の7つの名所でワイヤーアクションでダンスをするイベントが開かれたり、今後は街中で突然シェークスピア劇が始まったりするなどするらしい。『Bus-Tops』と題して、ロンドン市内30箇所のバス停の屋根にLEDのディスプレイを取り付けて、一般の人がウェブサイト上から投稿したアイデアやアニメーションを選んで上映する試みも始まった。ロンドンを訪れたひとが二階建てバスからふと下を覗くと誰かからのメッセージが見えるという趣向。街の中に市民参加型のアートを埋め込んで、ロンドンを訪れたひとを一緒に歓迎しようというものだろう。

このロンドンオリンピックを現地で楽しめるなんて、羨ましい限りです。
これからもロンドンローカルのニュースを楽しみにしています。