ミュンヘンなんて、どこ吹く風

ミュンヘン工科大留学、ロンドンの設計事務所HCLA勤務を経て
群馬で建築設計に携わりつつ、京都で研究に励む日々の記録

いつもと少し違う土曜日

2011-11-27 00:57:37 | ロンドン・hcla
更新していなかった一週間強の間に、会社では2つのプロジェクトを行き来しながら、水曜夜のarchitecture wednesdaysではホールデンと同僚それぞれの社内ミニ講義を司会進行し、週末にはsharisharishariの会とそれとは別に参加しているコンペをやって、その合間にROHでバレエを3回観て(マノン、トリプルビル、眠れる森の美女)、土曜の夜に友達を呼んで家で鍋パーティをし、途中少し風邪を引いた。2つのプロジェクト、大きな方のプロジェクトは最終段階に入ってスピード感と決定権が増し俄然面白くなってきた。小さな方のプロジェクトは採用する比較的新しい技術をサポートするメーカーを比較検討しつつ同僚とStageD-Eの設計を進めている。

今日は朝10時頃起きて、先に取材のために朝から出かけていた奥さんと昼ころオールドストリートで合流。このあたりは会社でfeasibility studyした敷地が点々と続いているのでコンテクストが少しわかる。取材先候補を一緒に回りながら、昼飯を食べつつ2時間ほどブラブラした。その間、同僚に二度遭遇。男の子の同僚は見たことのない彼女らしき人を連れていて少し恥ずかしそう。女の子の同僚は買い物袋を両脇に抱えて早足で家に帰るところだった。二人ともこのあたりに住んでいるので僕が彼らのテリトリーに侵入したカタチだが。午後はAAでsharisharishariの会。別にやっているコンペとかぶらないように今週から土曜日にしてみた。学生メンバーたちは土曜日の方が参加しやすいみたいだ。先々週まで模型製作をお手伝いしていたコンペの模型写真も載った提出直前のプレゼンボードをたけやまくんから見せてもらう。そのあとは日本にいるほったくんも交えて年明けのキネティカアートフェアの準備。ブースデザインのスタディと、実際の展示物の製作について。展示方法はいしいくんめいりくんの言うように台座案がよさそう。展示物製作はメトロポリタン大学の設備を使わせてもらうことにして、まるやまくんくぼたさんに図面を託す。その後、さきさんも交えて中華街で夕食。日曜日に集まって作業することが習慣化しているので、明日が月曜日じゃないことに皆少し違和感を持っている様子。明日何する?と口々に言い合いながら、いつもより少しにこにこした顔で(?)みな家に帰っていった。
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月曜日

2011-11-22 00:05:57 | ロンドン・hcla
月曜日朝。週末をまたいだ長い一週間が終わる。プロジェクト的には最終段階の最初の一歩といった感じ。翌日のミーティングまで準備は必要なさそうだったので自主的に早退して午後は家で睡眠。
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PHO

2011-11-12 23:54:13 | ロンドン・hcla
昼前にSOHOのたけやまくんの事務所へ。キネティックアートフェア出展への協賛のお礼にsharisharishariで請け負ったプレゼン模型製作。奥さん、しのはらくん、いしいくんも参加。午後、僕はいったん抜けてhclaへ。待ち合わせていたホールデンと、再来週バーゼルとデルフトで行われるレクチャーの資料製作。let's talk about micro architecture、と題して再来週のarchitecture wednesdayでも披露される予定。その後、プロジェクターで予行演習。「休日出勤させてしまい奥さんに申し訳ない、これに一言書いて奥さんに渡しなさい」と、ホールデンが白いハートのカードをくれた。再びたけやまくんの会社に戻り模型製作に合流。夜は、みきエド夫妻とSOHOのベトナム料理PHOで夕食。その後、近くのパブに移動して飲む。それぞれの仕事の近況、部屋探しの進捗状況、クリスマスと新年の予定、最近生まれた甥っ子の話などとりとめなくいろいろ話す。覚えた日本語を忘れないように話したいエドと、英語を練習したい奥さんの思惑が相まって、英語と日本語が混じった会話となる。
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ジャマイカ

2011-11-09 22:48:43 | ロンドン・hcla
architecture wednesday。全員が集まれる日を探そうとしたりミーティングに出ている人を待っていたりすると中止に追い込まれると学んだので、先々週からは、参加人数に関わらず必ず水曜日のきっかり5時半に始めて6時に終わるようにした。事前に発表者と内容をみなに告知しておいて、時間どおりに始まって終われるように発表者と僕が段取りする。結果的にほぼ全員参加してくれるようになったし、発表者にも緊張感が生まれた気がする。

今週の発表者はジャマイカ出身の同僚。彼の分担週を割り振った後、数週間前から発表内容について相談を受けていた。ジャマイカ出身の彼は17歳のときに両親とアメリカに移住。故郷ジャマイカの建築環境を憂い建築を学ぼうと決めていた彼は大学入学の際にいくつか米国内外の大学を見て回り、歴史あるマンチェスター大学の校風に惹かれ、両親を説得し単身渡英することを決意する。卒業後マンチェスターの設計事務所でキャリアをスタートするが、金融危機後の不況の時期に解雇される。再就職先が見つからなかった彼が、建築を辞めずにすむ方法として選んだのは自分で設計事務所を興すことだった。旧勤務先などの伝手を使いながら細々とプレゼンテーションの手伝いなどを請け負っているうちに人とのつながりが生まれ、ジャマイカの故郷に近い街で短期滞在者のための小さな宿舎群の設計を依頼される。最大収容人数は大人二人と子供二人、滞在期間は最長2週間、という条件をもとに最小限住居をリサーチしていた際にホールデンとmicro compact homeを知り、後に僕らの事務所に加わる遠因となった。RC造がステータスシンボルでありながらその材料を使って適切にデザインされた住宅が少ない、一方人気のない木造でも現代的な技術は適用可能であることを示したい、といったジャマイカの建築環境に対する問題意識から、コンクリートと木が寄り添ったような混構造を提案することに。美しいビーチを望むロケーションでありながらハリケーンの通り道であることから、必要な場所にだけメリハリのある開口が設けられ、ハリケーンで吹き上げられ飛ばされないように庇の出がないコンパクトなデザインになっている。そうしてできた小さなコテージが斜面に沿って3棟並び、それぞれにクライアント三姉妹の名前がつけられている。土地の一部を売って賄う予定だった建設資金の目処が立たず計画は中断しているが、機会があればアイデア段階で止まっているこのプロジェクトを実現させたいと彼は締めくくった。発表前の宣言どおり、過不足ない内容で理路整然とぴったり20分。席が足りなくて立ち見していたディレクターの表情などを見ても、これまで面接らしい面接もなくいつの間にか事務所に加わっていた感じだった彼が、自分に何が出来るのか適切に自己紹介できる機会になったのではないかと思う。ホールデンは最後に、こういうプロジェクトはたいてい二年後くらいに急に電話が来て再開となることも多いので、その気持ちを忘れないように、とコメントしていた。

ちなみに先々週は僕の担当で、同僚たちからの要請に応じて日本の枯山水庭園について話した。始めに映画『晩春』の終盤に登場する龍安寺石庭の場面を流して、日本の庭が眺め思索するための場所であることを確認。NHKで以前放送された『美の壷:枯山水』が枯山水の構成要素についてわかりやすくまとめていたので、その映像を拝借しながらナレーションを同時通訳。続いて、全国の日本庭園を実測調査し全26巻の『日本庭園史図鑑』にまとめた作底家の重森三玲を紹介。彼の著作『枯山水』を参照しながら、「Physical Absence(見立て、の解説として)」「Limited Visibility(幽玄、の解説として)」、「Observer's Participation(視点、いかに観測されるか)」といった感じで僕なりに枯山水のココロを英語で説明。16世紀に一大発展を迎えるが17世紀以降形骸化していった枯山水に今日的な姿を与えるべく、昭和期に時代を超えて残るデザイン「永遠のモダン」を追求した重森三玲の、海外で2007年に出版された作品集『Mirei Shigemori - Rebel in the Garden: Modern Japanese Landscape Architecture』からいくつかページを開いて東福寺方丈庭園などを紹介して終わった。日本家屋と庭の流れるような関係性、透明性のある境界といったことが感想として出て来た。

来週は別の同僚の担当で、再来週はホールデンがスイスでのレクチャーの予行演習を兼ねてmicro architectureについて語ってくれる。というわけで僕は空いている時間にそのプレゼンをつくる予定。


終わりかけている方の担当プロジェクトは、これまでまとめてきた大部のレポートを校正作業しながら、法律の専門家と言葉遣いのチェックなどの最終確認中。先日再開した方の担当プロジェクトは、上がってきた工事費の見積もりなどを気にしつつ、エンジニアたちとStageDに向けた詳細設計を進めているところ。一緒に担当している少々ワーカホリックな同僚と二人で楽しく進めている。
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グリニッジ

2011-11-05 22:32:30 | ロンドン・hcla
昼過ぎまで寝てからNorthern LineとDLRを乗り継いでグリニッジへ。奥さんは常勤の仕事の合間に日系無料週刊誌でロンドンのマイナーなお店を紹介するフリーライターをしている。今日は今週号で取り上げたお店に印刷されたサンプルを渡しつつ取材のお礼に回るのについていった。編集部からも掲載後に郵送で本誌を送ってくれているみたいだが、日本語だから当然読めないわけで、載りましたよと翻訳がてら直接報告しにいくと喜んでもらえるようだ。すぐに日本人が押し寄せたりはしないと思うけど、本誌に掲載後はウェブ上にアーカイブとして残るので、じわじわと読まれているはず。その後マーケットで昼ご飯を食べてから、旧王立海軍学校、クイーンズハウス、海洋博物館を回る。天気が悪く日が落ちるのも速くなったので、天文台につづく丘は少し荒涼として見える。テムズ川を東西に結んでいる高速ボートで市内まで戻り、テートモダンでGerhard Richter展を見る。panoramaと題し、初期の作品から現在取り組んでいるものまで、網羅的な展示。真実的なものを複写したり層状に重ねたり寄せ集めたりすることで、確からしく思えていたものが揺らいでくるような手法が共通している。ベルリン、パリ、ロンドンと巡回するようだ。テートモダンの裏のAllies Morrison事務所に併設されているthe table cafeで夕食。週末の昼にしか来たことがなかったが、金曜日と土曜日の夜は7時から11時までジャズの生演奏があるらしく、店内はにぎわっていた。Waterloo駅まで歩いてNorthern Lineで帰宅。
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ハロウィン

2011-11-01 00:07:34 | ロンドン・hcla
「僕のこと憎らしく思うかもしれませんが」と、いつもと様子の違う言い方で、図面の最終訂正を求めるメールがプロジェクトマネージャーから金曜日の夜に届く。彼も僕も会社のなかでのポジションが近い。実質的な実務部隊として、数年間一緒に仕事をしてきた。会社が近く帰り道に彼の机が見えるので、つい彼がまだ会社にいないかと確認してしまう。夜中に指示のメールが来たのですぐに返信したら、「人生は短い。もう帰りなさい」と折り返し電話がかかってきたこともある。

月曜日に図面を送り返すと、「素晴らしい。ところで、もう聞いているかもしれませんが…」と前置きしたうえで、彼が今週末に会社を去ることが書かれていた。7ヶ月間のサバティカルを申請して認められた。これはずっと前から計画されていたことで、僕らが一緒にやっているプロジェクトとは何の関係もない。プロジェクトが予定通りに進んでいれば提出までやり遂げてから心置きなく出発できたはずだったがこうなってしまった。一生に一度のチャンスと思って、中央•南アメリカを旅して回ろうと思っている。またここに戻ってくるからさよならではない。

しばらく放心したが、返信しているうちに少し心が落ち着いてきた。

出発前にまた会えるかはわからないけど、その国々で多くの経験を得られるといいですね。旅の安全を祈ります。もしかしたら7ヶ月後も僕らはこのプロジェクトでもがき苦しんでいるかもしれません。そのときは修行の旅から帰った君がきっと、騎士のようにさっそうと現れて僕らを助けてくれるだろうと思います。そうでなくても、またこうして一緒にイギリスの建築環境に貢献できる機会があることを願ってます。7ヶ月後に話を聞けることを楽しみにしてます。

ずいぶん長いこと続いているので、このプロジェクトは会社の内外で人の入れ替わりが多々ある。一人去り、二人去り…。彼に限らず、直前まで丁々発止だった相手が急にふっといなくなってしまうのは、おいていかれてしまったようで寂しい。やっていて頭が真っ白になることもある厄介なプロジェクトであるが、僕は最初から関わり続けているほぼ唯一のひとだったりもするから、最後まで真摯にやるしかない。

今日はハロウィン。ミーティングの帰り、「「trick or treat」ってミーティング中に使えばよかった!」と二人で言い合いながらディレクターと歩いていたら、足下だけをパンプキン柄の網タイツに仮装したスーツ姿の女性とすれ違った。
Comments (4)
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