陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

映画「ラジオ・デイズ」

2011-07-24 | 映画──ファンタジー・コメディ
ウディ・アレンの強烈な個性の片鱗をはじめて知ったのは、未練たらしく人生をやり直そうとする中年男性を自虐的に悲哀とユーモア織り交ぜて描いた「セレブリティ」でした。1987年の映画「ラジオ・デイズ」も、おそらく作者ウディ自身の視点を垣間みさせてくれますが、少年としてのウディなので、まだしも可愛げがあります。

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時代は第二次正解大戦勃発直後、舞台はニューヨークのクイーンズ地区。
あるミドルクラスの家族やその親戚の愉快な暮らしが、少年ジョーの目から語られる。これは、日本でいえば、サザエさんといったところか。

職業が不明な父親としっかり者の母親は、口を開けばいがみあい、息子のジョーを小突き回すが、じつは愛情をしっかり与えてもらっていることがわかる。
行き遅れのビー叔母さんは、いつもとんでもない理由で男に逃げられている。
テレビがなかった当時、ラジオこそが華やかな世界。ラジオパーソナリティを夢見る奇声の持ち主サリーは、真珠湾開戦で夢を断たれるも、その後努力の甲斐あって成功する。
少年たちはラジオで流れるドラマのヒーローに夢中になっていて、戦争などどこ吹く風。笑いがあふれている幸福そうな街の人びとは、新しく1945年を迎えて終わる。

第二次大戦中をまったく意識させない幸福感。これが現実なのか、つくられたファンタジーなのか、観客はふしぎな感覚に酔います。
ドイツの潜水艦が近くの海に現れたというのに、誰も信じない。ラジオが流す楽しいゴシップや音楽に酔いしれて、ほどほどに豊かな生活を謳歌している。同時代の荒廃していく日本や戦渦になった欧州の酷い状況を思えば、考えられないですね。

コメディなんですが、俳優が下品な顔つきや、放屁ネタなどではなくて、それなりに知性的なユーモアもあるうまさ。
ウディ・アレンの映画は、個性的な女性が多くでますよね。

(〇九年八月二十一日)

ラジオ・デイズ(1987) - goo 映画

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