陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

映画「アバウト・シュミット」

2011-05-17 | 映画──社会派・青春・恋愛
2002年の米国映画「アバウト・シュミット」は、定年退職した孤独な男が自分を見つめなおす旅に出るヒューマン・ドラマ。生きがいであった仕事を失い、家族にも煙たがれた中高年サラリーマンの哀愁漂うお話です。

アバウト・シュミット [DVD]
アバウト・シュミット [DVD]おすすめ平均 stars人生stars名優ニコルソンの最高作stars半分・・・自分の将来をみたstars人と人との「絆の大切さ」stars主人公と同じアクチュアリーです。Amazonで詳しく見る by G-Tools



一流の保険会社の部長代理職を定年退職したばかりのウォーレン・シュミットは、手持ち無沙汰に、アフリカの子どもを支援する慈善募金に申し込む。援助した少年に送る手紙に自分の身の上をつづるうちに、彼は自分の周囲に対する不満をあれこれとぶちまけてしまうことに。
自分の長年の仕事術をまったく変えてしまった生意気な若い後任者、42年連れ添っていながらなにかと言動にいらだちを覚えてしまう妻のヘレンのこと。そして、愛娘のジーニーがろくでなしの男と婚約してしまったこと、などなど。

そんな矢先、妻が脳内出血で急死。妻の存在をありがたく噛みしめようとしたが、彼女の不貞がわかり怒り心頭。キャンピングカーで一路、結婚準備をする娘の元へ向かうも、結婚相手のランドールとその母親ロバータら家族の態度にも腹立ちを覚えてしまう…。

家族に疎んじられ、知り合いにも裏切られてしまうウォーレンはどことなくかわいそうではありますが、彼自身も意固地で不平不満屋であることから、あまり同情はできません。しかも、旅先で夕食に招かれた夫婦に対して過ちを犯してしまいそうになります。

娘の幸福を思えばこそ、破談に持ちこもうとした結婚式。しかし、いざスピーチに立ったウォーレンが口にしたのは祝福の言葉。父親が反対してるからこそいちゃついていた娘と花婿が急によそよそしくなっていたのもおかしいですね。

充たされない気持ちを抱えたまま帰途についたウォーレンを救ったのは、援助している少年からの手紙。顔も素性もあまりよく知らない相手からしか慰められない、インターネット時代の人間がかかえる孤独感をよくあらわしたドラマですね。

なにげない人びとが描かれた、変哲のない筋書きではありますが、なかなか胸に刺さるようなお話ですね。ドイツか東欧の映画に多そうな沈鬱な雰囲気もアメリカ映画らしからぬところ。

出演は、「カッコーの巣の上で」「郵便配達はニ度ベルを鳴らす(1981年版)」のジャック・ニコルソン。近年は癖のありそうなちょい悪オヤジを好演しています。
恰幅のいい婦人ロベルタを演じたのは、「タイタニック」でモリー夫人を演じたキャシー・ベイツ。
監督・脚本は、「サイドウェイ」のアレクサンダー・ペイン。
2003年ゴールデン・グローブ賞最優秀主演男優賞(ドラマ部門)、最優秀脚本賞、同年ロサンゼルス映画批評家協会賞最優秀作品賞、最優秀主演男優賞、最優秀脚本賞ほか受賞。
(2010年1月1日)

アバウト・シュミット(2002) - goo 映画



この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 映画「北京の55日」 | TOP | 日本映画「連合艦隊司令長官... »
最新の画像もっと見る

Recent Entries | 映画──社会派・青春・恋愛