陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

映画「ディル・セ 心から」

2010-02-13 | 映画──社会派・青春・恋愛
よくある男と女が戦乱の最中出逢って恋に落ちるというパターンで、二時間を超えると退屈に感じられる。
だが、1998年のこの映画「ディル・セ 心から」は、ちっともそんな嫌気が起こらない。前半部のテンポのいいミュージカル風のパートに心躍らされつつも、物語は後半、シリアスな路線へひた走り、怒濤のラストを迎えてしまうからだろう。そしてまた、インド・中国の国境地帯で撮影したという、壮大な自然を味方にしたロケーションが全くもって素晴らしい。このスケールからして「イングリッシュ・ペイシェント」と並ぶ大作ロマンスと呼ぶに相応しい。


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主人公は、取材帰りの駅で、ひとりの女性を見初めたラジオ局ディレクターのアマル。
その女メグナに猛烈にアプローチするも、なぜかなびいてはくれない。失意のアマルは婚約者であった娘と挙式するが、メグナが現れて仕事と住処を求められる。自宅の一室に住まわせ、ラジオ局で臨時の職を与えたアマルの心は、メグナに傾いていってしまう。

だが、メグナはじつは辺境の州に潜伏するテロリストだった。彼女の素顔そして悲惨な過去を知ったうえで、メグナの陰謀を止めようとするアマルだが、警察とテロリストの両方から狙われてしまう。

このアマル青年、なかなか押しが強く、メグナの困り様が何となく同情できるくらい。二股をかけたとはいっても、メグナに手を出したというわけではない。
メグナが背負ってきた運命、武器を手にして戦わねば生き残れないという告白、そして富裕層で軍部に協力しているマスメディアへの批判。彼女がなにも知らないアマルをつき放さざるをえない理由としては、じゅうぶんすぎるほど。
幸せになってほしいという願いも虚しく、最後、ふたりには壮絶な結果が待っている。悲しい、あまりにも悲しすぎる。一方的な愛情が人を殺してしまうという悲劇。

前半の走る列車のうえでの華麗に歌い踊るふたりは、「ダンサー・イン・ザ・ダーク」にも似て、幻想に過ぎなかったのか。
ただのラブストーリーだけでなく、インド社会の抱える混沌をも背景に敷いている政治的な映画ともいえる。

監督は、インド映画界の誇る若き巨匠マニ・ラトナム。
主演はインドの大スターシャー・ルク・カーンと、化粧っけのない薄幸の美しさが漂うマニー・シャ・コイララ。

(〇九年八月二十四日)

ディル・セ 心から(1998) - goo 映画

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2 Comments

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Unknown (インド映画大好き)
2010-02-13 19:33:19
DIl SEは2年前にDVDで観ましたが、よかったですね。また、一味違うシリアスなインド映画でした。マニー・ラトナム監督は優秀ながら、作曲家のAR Rehmanはこの間スラムドッグでアカデミー賞を受賞しただけの実力家になってきたなという流れも感じた映画でもありました。同監督の数年前のGURUも非常によかったですよ。インドで最もお金持ち家族のAmbani兄弟の亡くなったお父様の人生をわかりやすく描いた映画でもありますが、とにかく凄い迫力を感じました。実力の男優Abhishekとあの美しいアイシュワリヤ・ライが主演です。インド人の知り合いといっしょに観たので、英語字幕でもよかったですが、日本語字幕DVDは出ているかな。
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Unknown (万葉樹)
2010-02-15 20:51:39
中身は良かったけれど、もっとインパクトのある邦題をつけたほうがいいんじゃないかと思いました。
田舎ではインド映画はレンタルできません。
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