陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

日本映画「容疑者 室井慎次」

2010-08-01 | 映画───サスペンス・ホラー
人気が出た物語というのは、主人公だけでなく脇を固める助演もよいものです。その人気を当て込んで、スピンオフ作品もつくられたりします。

2005年の映画「容疑者 室井慎次」は、いわずもがな、大ヒット刑事ドラマ「踊る大捜査線」で知られる、「室井さん」こと捜査一課管理官の室井を主人公に据えたサイドストーリー。
「踊る──」シリーズの映画はTVでしか観たことがありません。大がかりな宣伝を間引くとしても、やはり邦画としてはおもしろいほうじゃないでしょうか。刑事ものだけれど、ハリウッドの犯罪サスペンスみたいに、ひどく血と暴力描写が激しくないあたりが観やすいですね。

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新宿で発生した殺人事件の捜査を陣頭指揮していた、警視正の室井慎次が、突然、逮捕されてしまう。容疑は、殺人事件の被疑者として追っていた男への、違法な暴力行為。犯人として検挙されたのはなんと現職の警察官で、しかも取調中に逃亡し、轢死してしまった。

冷静沈着なエリート然とした室井が、まさかの失墜。
これが本編なら、あの織田裕二演じる青島刑事が黙っちゃいないのでしょうが、今回はまったく登場しません。
室井の弁護人を引き受けたのは、若手の女性弁護士、小原久美子。ちょっと頼りなさそうですし、しかも彼女には警察に対するトラウマがありそうです。

いっぽう、室井の捜査線を阻むのは、警察の不正を暴こうとする切れ者弁護士の灰島。さらには、事件の裏側で、警察庁長官のポストを巡る警視庁と警察庁の権力争いも絡んできます。仮釈放され停職扱いをうけながらも、職を辞する覚悟で真相追及に乗り出す室井さんですが、「学生時代の恋人を死なせてしまった?!」という彼の過去が暴かれてしまいます。

被疑者が警察官だっただけに、ひょっとしたら、裏には警察内部の圧力が関与しているのか、と感じさせますが、真犯人は意外なところから。室井さんは、うすうす、それを掴んでいたんですね。そのふざけた動機には呆れることしきりですが、現実にも、こんな他愛もない理由で事件は起きるものなんですよね。

織田裕二演じるおなじみのはみ出し刑事よりは、おとなしめで、ひと昔前のハードボイルドを地でいくような柳葉敏郎演じる捜査官。主人公としては強みがなく、シリーズにあった遊び(スリーアミーゴーズがちょい役で出てましたが)は控えめ。静かな闘志を燃え立たせている様子が伝わってきます。派手な言い回しががなくても、存在感があるんでしょうね。

室井が表現しなかった部分は、現場叩き上げでスレた感じのする刑事の工藤や、初々しさのある小原が灰島をやりこめるシーンで回収されているといえそうですね。秀才肌でゲームオタクの灰島は、まあなんともイケ好かない男に誇張して描かれていますけれど、公権力や法への依存を皮肉るものとしては格好の思考材料となりそうですね。

小憎たらしい役どころだった真矢みき演じる沖田管理官や、筧利夫演じる新城も面目躍如といったところ。
本作の続編として、 八嶋智人演じる弁護士が主役の、スピンオフ二時間ドラマも製作されているんですね。


捜査のプロであろうとなかろうと、歪んだ正義漢に踊らされていないか。日常、誰かを追いこむようなことをしてはいないか。たまには、室井さんのように容疑者にされて反省してみるのもいいのかも…? ま、私は買い置きしているアイスをこっそり食べちゃったぐらいですかね(嘘)


監督・脚本は、「踊る大捜査線 THE MOVIE」「踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」の君塚良一。
(2010年7月31日)

容疑者 室井慎次(2005) - goo 映画


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