エディ・マーフィーといえば、「アイ・スパイ」のコミカルぶりが記憶に新しいのですが、この映画じゃまったくシリアスな演技で。「しゃべる機関銃」の誉れ高き男ですが、この映画ではぶっ放すのは本ものの銃口です。
役どころは、人質を楯にする強盗犯との交渉術を得意とするネゴシエーター(交渉人)と呼ばれる辣腕刑事スコット。親友の同僚を凶悪な宝石強盗犯コーダに殺されたことから、ふたりの宿命の対決がはじまる。
激しい市街地でのカーチェイスを征して、コーダの逮捕にこぎつけたスコットだったが、脱獄したコーダに復讐されることに。しかもコーダは、あろうことか恋人のロニーを誘拐して挑戦してきたのだった。
最後まで息も吐かせぬ白熱のアクションが続き、ハラハラドキドキしっぱなしなのですが、見どころは前半のカーチェイスまでですね。路面電車での血みどろの攻防、そして体当たりといおうか車体あたりで暴走列車をとめるという迫真のシーン。これは、アメリカじゃないと撮影できないでしょう。
この映画は九七年作なのですが、この頃のアクション映画が私としてはいちばんおもしろいです。火薬もほんものでしょうし、CGでつくったような嘘くささがみられない。二〇〇〇年代になると9・11のテロがあったりして、市街地での派手なロケーションはしゃれにならないので自重されたような気がしますね。
「アイ・スパイ」でもそうでしたが、白人の若干三枚目な助手もついて、コンビで活躍。こちらの彼のほうは、けっこうまじめで優秀な男で、最後のエディの窮地を救ってくれます。ただし、エディに華をもたせるために、負傷しちゃうのはお約束で(笑)
交渉人という役職ながら、この凶悪犯は聞く耳もたずの相手なので、交渉どころじゃなくまったくのドンパチゲーム。さしてひねりはないのですが、とにかくスピード感のあるアクションはおすすめ。
そしてマイケル・ウィンコット演じる敵役もなかなかの小憎たらしさぶり。最後はお望みどおりの末路なわけですが、溜飲がおります。
日本でもビートたけしなどのコメディアンがハードボイルド映画に挑戦してますけど、芸人としてのキャラが濃すぎてサマになってないんですよね。海外では評価されてるかしらんけど、どうみたって彼の演技は、高倉健や三船敏郎レベルを超えられないでしょう。というか、あの金髪でサイケデリックな外人を真似て媚びたような風貌はなんとかしてほしいものだな。
(〇九年五月十七日)