陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

『神無月の巫女』のススメ

2007-10-21 | 感想・二次創作──神無月の巫女・京四郎と永遠の空・姫神の巫女


読者の皆様、ごきげんよう。
以下は、先日の記事にコメントをくださったある読者様にむけて書いたメッセージだったのですが、ここをご覧になる多くの方にご拝読いただきたく思い、別記事として作成いたしました。



『神無月の巫女』に興味を持たれた方へ。
万葉樹からお願いごとが、ふたつほどあります。

ひとつはこの作品に興味をおぼえたならば、ぜひDVDでご鑑賞なさってみてください。『神無月の巫女』は一部ウェブ上で無料公開されていることが多いです。多くの方が目に触れる機会を設けている、それは私としても嬉しいことなのですが、やはり無料であることの限界があると思います。私はPCでDVDを再生して鑑賞しておりますが、動画サイトの映像と見比べますと、やはり画質、音質が格段に違います。動画サイトですと、画面の比率が違って顔が歪んでいたり、音がずれていたり、また声が抑揚のないように聞こえたりします。色彩も薄くぼやけた感じがします。各自のPCの環境によるのかもしれませんが、私はその理由があって、動画サイトでの視聴はあまりオススメしておりません。
それに字幕や、ときに見るに耐えない誹謗中傷のはいったコメントもあります。
どうしても、こころをまっさらな状態にして観れるものではありません。もし、はじめての神無月体験がそれだったら、すごく不幸だと思います。動画サイトから見られた読者様の文章から察する限り、好意的に受容されているようですので、だいじょうぶとは思いますが。

動画サイトでご覧になってそこで終わってしまう人の好きというのは、心底愛しているではなくて、物語の筋を知っている、面白かった、それぐらいの好きではないのでしょうか?私はこの作品を質の悪い状態で観ていただきたくはないのです。
動画サイトの映像は、いわばコピーです。それだけを頼みにこの作品を好きだと語っているのは、絵画を実見しないで発色の悪い名画の全集を眺めて、高邁な研究者の解説を読んで絵が分かったような気になっているもの。哲学書の原典を読みこまないで、日本人が書いた解説本を抜き書きしてレポートをつくっているようなものです。肌理の細かい滑らかな大理石の、量感あふれるギリシア彫刻をじかに観たことのあるものならば、もう美術室に飾ってある石膏の人形のような半端な動きの模刻像に感嘆したりはしません。私はあの無料動画と、DVD映像はそれぐらいの差があると感じています。

ご存じかもしれませんが、DVDには特典として主演声優三人(+ゲスト)のオーディオコメンタリがついております。川澄綾子嬢の絶妙なサービストーク、下屋則子嬢の天然ボケな甘いツッコミ、間島淳司氏の生真面目な分析は聞きごたえありです。収録中のエピソードが明かされたりして、とても面白い。あれを聞き逃すのはとても惜しいです。レンタルDVでも、この特典は視聴できますのでぜひお試しください。

さらにDVDを購入すれば、二倍も三倍も楽しめること間違いなしです。
初回特典版には、原作者の介錯先生描き下ろしの全巻収納ボックス、および作中で用いられたほとんどのBGMを収録したサウンドトラックが無料でついてきます。
各巻のジャケットの裏側には、介錯先生の美麗で官能的なイラストが隠されています。そして注目すべきはブックレット!まず一頁目から開くと、そこには姫宮千歌音の、そして来栖川姫子の想いがしめやかにつづられています。
脚本家の植竹氏の才筆をもって鳴る解説、そして原作者はじめスタッフの熱いコメントが寄せられています。未曾有の愛の物語をつくりあげようとする表現者たちの挑戦から、この物語がはじまったということ。なんと、すばらしいことでしょう。『神無月の巫女原画集』に書かれてあったことですが、この物語をつくるにあたっては、エンディングロールに名前が載らないほど、多くの人が無償で力添えをしたと伝えられています。私がこれを読んで感じたことは、この作品が誕生したこと、それ自体がひとつの創造の奇跡であり、多くの意思と表現意欲をみごとに集約させた共同作品だったということです。そこには参加者をよびこむような現代アートに通ずるような求心力があるのです。
その音楽、その声と息づかい、沈黙の降りた瞬間の瞳が語るニュアンス、過剰に奇をてらったのではないが目をひく構図、日本人の懐に滲みいるような叙情的な田園風景、どれひとつとっても私にはすばらしく思えます。


さてお願い事のふたつめ。
それは、あなたがこの作品をお好きになられたのなら、その愛情を思う存分ご自身の言葉で、他の方にお伝えください。どんなふうに惹かれたのか、どこがすばらしいのか、どのしぐさがうつくしいのか。小説でも漫画でもそうですが一読しただけで、映画を一回観ただけでその美点を理解できる人なんて稀だと思います。よほど数をこなして観ていてその特性を鋭くいいあてられる方もいるでしょう。でも、そういう意見はどこか冷たい分析で味気ないものです。そこで理解したつもりになったらもう楽しめなくなる。なぜならこの世の中には判らないことがいっぱいで、少しでも速く多く答えを出していかなきゃいけないから、いやでも判ったふりをしなきゃいけないんです。でも、私にはこれは、なんど諦めようとして棄てきれない、片付けられない問題でした。

私はまだこの物語のすべてが判っていないので、ブログで神無月語りを続けていきます。なんらかのかたちで発表していこうと思います。おそらく、それはすでに何回も観られた方ならば知り得ていることで何を今更と鼻白むような内容です。そして過分に曲解と偏見と、諧謔的な言質にみちたブログです。それでも、私は続けます。なぜなら、この物語があることで私が生き続けられるからなのです。

物語を伝説にするのは受容者です。彼女たちを神話にしてください、他ならぬあなたの手で。忘れないでください、その感動を。
今後とも末永く、この美しい作品があなたがたのお手元にあり続け、深く愛でられるものであることを願っております。



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12 Comments

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Unknown (たかパパ)
2007-10-22 14:20:09
お邪魔します。
熱い思い伝わりました。
よ~し 俺も熱くなるぞ~
では また来ますね。
返信する
わかります (白いの)
2007-10-22 16:17:02
確かに無料公開では限界がありますよね。
しかしやっぱりDVDは高いので、お試しに観るのは
悪くない気もします。とりあえずどんな作品なのか
興味を持った人には重宝すると思います。
まず少し観てみて気に入ったらDVDを買う。
私はそんなスタンスです。
人の意見(悪意のコメント等)に左右されやすい人には無理かもしれませんが。
私は自分が感じた事を信じたいです。
誰になんと言われようが好きな作品は好きなのですから。
返信する
ありがとうです! (ムラーノ)
2007-10-22 17:15:35
万葉樹さん紹介文ありがとう
ございました!(^^)
まだエディターコミュニティの
機能がよくわからないので!
直コメいたしました!
今後とも宜しくお願いしますね!
(^^)(^^)
返信する
ようこそ! (万葉樹)
2007-10-22 21:35:46


はじめまして、たかパパ様。
ご訪問ありがとうございます!いささか厚かましく語りすぎた感があるのですが、共感していただきうれしく思います。

私がここで述べたかったことは、要するに体験のリアリティの問題なんです。
たとえば、たかパパ様のブログにあるお料理をみて褒めちぎったとします。それを見た私はつくり方を理解し、たかパパ様の創意工夫を理解して楽しむ。ブログではそうするしかありませんね。でも、いちばんほんとうに、たかパパ様のお料理を楽しめる人は、それを実際に食すことのできる幸運な、限られた方だけです。二日寝かせて冷蔵庫からとりだした生卵はどんな具合に、白米と馴染んでいるのだろう。味噌の味はどれぐらいしみ込んでいるのだろう。そんなことは、じかに舌で味わわないとわかりません。ですから、おいしそうだと言えても、おいしいとは断言できない。そして下手をすると私のPCの液晶のカラー設定がおかしいがために、あなたのつくられたお料理が色悪くみえているかもしれません(実際そのようなことはありません、念のため)

私は動画サイトとDVDで視聴するのとは、それぐらいの差があると述べたかったのです。たしかに同じアニメ映像ですが、動画サイトでみるのは「体験」ではなくストーリーの理解、それだけではないかと。現在は多くの情報をひろく浅く入手できるものが生き残る時代なのです。ですから、世界の古典をダイジェスト版で読むのがはやったりします。でも、そんなので話のあらましはわかっても、人物の感情はつぶさに感じられないのです。
なぜそういうのかと言いますと、私は毎回このアニメを観てかならず最終回あたりに涙するのですが、ふしぎなことに動画サイトの閲覧では、泣いたことが一度もないのです。コメントを非表示にしていても。
私はこの作品の真剣なレヴューを書くときは、かならずDVDで観なおすことにしています。なぜなら、あの動画サイトの映像には、なぜかしら本気で感情移入できないからです。

それはともかく、たかパパ様の創作手料理ブログたのしく拝見させていただいてます。仮面ライダーの登場人物もそうですが、料理の上手な男性って憧れますね。食は文化のはじまりですし、いい感度を保つためにはいい物を食べたいなと思っています。現実はなかなかそうはいかないのですが。
ではでは。
返信する
こちらにも、いらっしゃいまし~なの(笑) (万葉樹)
2007-10-22 21:36:50


ごきげんよう、二度目のお兄様(笑)

>とりあえずどんな作品なのか興味を持った人には重宝すると思います。

私も動画サイトで視聴することを全否定しているわけではないです。じっさい、ここでレヴューしているアニメは本放映で観れなくて、ウェブ視聴に頼ったものが多いんですから。DVDはたしかに高価ですし、経済的事情から買えない方も多いと思います。
ただ私がなぜ動画視聴に嫌悪感をもつかというと、あれに慣れた人が無料で素早くなんでも情報が手に入ると錯覚を起こしてしまうからです。自分の知りたいもの。観たいものはなんでもネットから得られると。じっさい自分がそのような状態に陥ったことがあるので、間違いないです(苦笑)


>人の意見(悪意のコメント等)に左右されやすい人には無理かもしれませんが。
私は自分が感じた事を信じたいです。

動画サイトのコメントだけじゃなくて、ネット上って複数のコメントでひとの意見を操縦しやすいんです。現実においても、ああいう数と刺激に頼るようなやり方は好きではないです。(でも、ここのネタ記事はかぎりなくそれに近いですが(汗))いつの時代もアジテーション(煽動)ってこわいなと思いますね。

>誰になんと言われようが好きな作品は好きなのですから。

ほんとうに声高にそう叫びたいですね。どうしても棄てきれない想いというものは、おそらくそのひとの本質と結びついていますので。おなじ作品を好きな者どうしであっても、やはり育った環境や経験年数などの差から嗜好の違いというのは生じてきて、それが意味のない諍い事になってしまったりするのが、みていて辛いですね。

私のこの記事、動画サイトの愛好者にはかなり挑戦的で、誹りを覚悟のうえであえて書いたものです。著作権上問題のあるニコニコ動画も、大手の広告代理店がその集客力に注目しはじめていますし。やはり否定するだけではだめだなと。図書簡が漫画本やアニメ雑誌を購入すべきか、否かと同じ次元な話ですね。私も借りてから、買うタイプです。

ただ身銭を切ってレンルした物語が、自分にあわなくて酷評するのならまだしも、ひとが善意で無料で公開したもの(おそらく動画投稿者はその作品をひろめたくて投稿したと思いますし)に、いわれのないケチをつけるのはどうかなと思うのです。これは動画だけじゃなくて、無料奉仕で公開している二次創作物などについてもいえると思います。

ただ、私、これを書いている最中に、以前動画サイトで流し見た某有名アニメをこっぴどく批判してましたので、いまさらながら反省している次第であります…(汗)

では、コメントありがとうございました!

返信する
いらっしゃいませ! (万葉樹)
2007-10-22 21:37:40


ごきげんよう、ムラーノ男爵様。男爵様のお城の愛好家、万葉樹でございます。
あの、例の駄文な紹介コメントは調子にのってつけてしまい、申し訳ありませんでした(土下座)

その昔、学部選びで日本史と芸術系の専攻を死ぬほど迷ったほどに歴史オタクな私めは、ムラーノ男爵様のハイテンションな語り口で展開される歴史考察に、まったくもって魅了されております。あの織田信長の肖像画の分析は、プロの研究家はだしの綿密な検証にもとづいていて、私はうなってしまいました。ほんとにすばらしいです。憶測でなくて、ちゃんとレオナルドの絵画や子孫の写真など豊富な資料をとりそろえ、目に見えるかたちでの証拠をだされて、ご自身の推察をたしかに根拠づけていく方法がまったくもって、すばらしい!感嘆しきりなのであります。
肖像画といえば、足利尊氏がじつは高師直の息子の師詮だったとか、源頼朝はじつは足利直義だったとか、仰天の事実が数年前に報道されてびっくりしましたけど。いま歴史の教科書の肖像ってどうなっているんでしょうね。下手したら千年後の歴史の教科書には、ナポレオンの画像が、「ムラーノ男爵」って載っけられてるかもしれませんねえ。うん、ありえそうですね。とりあえず、私はひ孫の代までムラーノ城のファンですので、ひ孫が生まれたら、あの不可能の文字が辞書にはない英雄の名前は、「ムラーノ男爵」だって覚えさせておきますね(笑)
では、コメントありがとうございました!

返信する
真摯なお返事感謝します (とおりすがり(10/21))
2007-10-23 02:16:54
万葉樹さん

昨夜、ふと書き込んだ私へ、こんなにもきちんとしたお返事を記事にしていただいてしまい恐縮です。
それと同時に、こんなに「神無月の巫女」を愛していらっしゃる方がいることを知り感動しました。リンク先なども確認して、こんなにもたくさんの同志(笑)がいることを知り、心強いというか、うれしく思います。

文字通りの「通りすがり」でしかない私にここまで真剣に語りかけてくれた万葉樹さんの人柄に甘えて、あつかましいとは思いますが私も少し語らせていただきます。

アニメには疎い私が神無月の巫女を見たきっかけは、偶然、リンクにリンクを重ねて動画サイトで迷い込んだことでしたが、これは今思えば奇跡のような出会いでしたね。

何も考えず、ニコニコ動画でリンクを飛ばし続けて適当にたどった先がこれだったのですから。

こんなにも真剣に女の子同士の純愛を(それも苦しみも含めて)描ききったものは見たことがなく、それゆえに私にとっては苦痛でもあるのですが、それでも何度も何度も見てしまいますよ、


この作品が、おそらく自分にとって「唯一」であり「特別」であり、「奇跡」なのは、私が大学の時、好きになってしまった同性の友人と心中未遂までして大騒ぎになって引き離されたことがあることに起因しています。

とまあ、突然激重な話になって申し訳ないのですが、
それ以来、同性同士の恋愛ものなどは絶対に触れることなどできず、神無月もどういう内容なのかを最初から知っていたら、おそらく見れなかったと思います。

偶然の出会いで、ぼーっとしているうちに始まっていた1話を見て、千歌音ちゃんてかわいいなあなどと思い、唐突なロボットの登場に思わず笑いながらもラストの展開に驚愕し、見るのをやめようと思いながら見続けているうちに、とうとう徹夜し、呆然として自分を見失い、その日は会社にもいけなくなってしまいました(笑)

この作品の良さや好きなところをあげるとキリがなくなりますが、あえて神無月が自分にとって一番大切であり特別な理由をあげるとすれば、千歌音ちゃんの心の中にある、「失った記憶、失った大切なものを守り、取り戻そうとする淡い意思の萌芽とその傷み」があること、そしてそこから逃げることなく、決意は強固なものとなり、最後まで愛を貫いたことでしょうか。

「失った大切なものを取り戻そうとする淡い意思の萌芽とその傷み」とはまた、意味不明な日本語ですが、これは理屈とかではなく、感覚、感情で読んでもらうと理解しやすいのかな、と思います。

私は大学時代の出来事が原因で、その時期のことを思い出したくても思い出せないという後遺症があります。
※怪我とかではなくて、あまりにも精神的につらいため、記憶がぼやけてしまっている状態です。
でも、それでも彼女への思いが特に強まった時、それは陽炎のように、亡霊のように私の心の底にあわ立ち、芽を出し、私を苦しめます。ただ、その苦しみは決して不快なものではなく、その苦しみを感じている限り、彼女の大切な記憶をなくさないでいられる、というかすかな希望も感じることができます。

またまた重たい話になってしまいましたが、この「痛み」を、まったく違うシチュエーション、まったく違う物語であるにもかかわらず、「感覚」として私に思い知らせたのが神無月でした。それゆえ、この作品は完全に私の魂を抜き取り、私のこころは激しい竜巻の中に放り込まれ、引き裂かれそうになりました。

なんだか途方もないお返事をしてしまって申し訳ないのですが、自分自身でもなぜこの話をネット上で書いてしまっているのか理解できません(笑)

たぶん、万葉樹さんの強い気持ちと、「神無き月」の魔力のせいなんでしょうね(笑)

さて、話題は変わりますが、万葉樹さんからのお願いの件、よくよく分かりました。そのとおりですね。

実は、何度も繰り返してみてはいても、YOUTUBEなどのちょっとぼやけた画像でなければまだ見る勇気がないのも事実です。
ただ、作品を真正面から見るために、DVDをいずれ買おうと思ってます。

それにもうひとつ。
ネットで無料で動画が見れる時代は便利ですし、その手軽さゆえ、私は奇跡のようにこの作品に出会うことができました。ただ、それをそのまま享受するだけでは、いずれ、すばらしくても商業的には成功しないであろう作品自体が作られなくなってしまうかもしれない。そう思うと、DVDを購入することが、このようなすばらしい作品を作ったスタッフへの最大の敬意かもしれないと思いました。


さて、ちょっと洒落にならない告白をしてしまったので、「とおりすがり」の名前でおじゃますることはないと思いますが、今後も機会があればこっそりROMさせてもらいます。

万葉樹さん、どうもありがとうございました!
返信する
あなたの本当は、うけとりました。 (万葉樹)
2007-10-23 18:07:31

ごきげんよう、二度目のとおりすがり様。

文面拝受いたしました。まことにていねいなコメントをいただきありがとうございました。このブログの神無月紹介は、ほとんどがおちゃらけ企画を占めているので、まさかここまで深い思い入れのある方にお越しいただけまして、おなじ愛好者としてうれしいかぎりです。私がこの物語をいちばん観てほしいのは、まさにとおりすがり様のような方です。アニメにはあまり興味がない、けれど人生を救うような物語を求めていた、そんな方のために。しかし、私はこの物語を、一部の特殊な嗜好の持ち主だけではなくて、ひろく一般の、多くの方に観ていただきたく思います。いわれなき偏見と社会の無理解をやぶるために、そして虐げられた想いをまもるためにも。

動画サイトでの視聴について批難がましいことを申し上げました。DVDでないと感動が薄れると感じたのは、あくまで私個人の感覚ですので。ですが、やはりこの美しい作品がなみなみならぬ多くの努力と誠意とひとつの偶然とによってできあがったものであることを考えますと、いつでもネットで無料で観れるからという安心感で鑑賞していては、もったいないと。そう思えるのです。
なおしつこいようですが、私は動画サイトの「受容のしかた」を問題にしているのであって、動画サイトの存在そのもの、もしくはそこに投稿される作品(MADも含めて)を否定しているものではないことをご理解くだされば幸いです。

とおりすがり様が、神無月との運命的な出会いを果たされたこと、およびご自身のお辛い過去を、勇気をもってしたためられたことに、感謝しております。おそらくおなじような境遇の方もみていらっしゃるのではないかと思いますので。

ちなみに私がこの物語にいまなお魂を揺さぶられてしまう理由は、とおりすがり様とは似て非なるものです。が、おなじく記憶の裏側をえぐられるような痛みをおぼえ、脳裏にこびりついた血の記憶を涙で洗い流してくれるような慈しみを感じたのは、偽りなき事実です。いささかオーバーな表現ですけど(苦笑)、この物語が忘れられない方々は、大なり小なり、なんらかの人生経験に深くくいこんでくるような衝撃をうけたからではないかと、推察しております。

>あえて神無月が自分にとって一番大切であり特別な理由をあげるとすれば、千歌音ちゃんの心の中にある、「失った記憶、失った大切なものを守り、取り戻そうとする淡い意思の萌芽とその傷み」があること、そしてそこから逃げることなく、決意は強固なものとなり、最後まで愛を貫いたことでしょうか。

この一文は、まさに「神無月の巫女」という名作の醍醐味をみごとに集約して語ったものではないでしょうか。視聴後二箇月でここまで言い切れるなんて、すばらしいです。そして、あなたは「その苦しみを感じている限り、彼女の大切な記憶をなくさないでいられる、というかすかな希望」というふうに、その苦しみを昇華させようとしている。おそらく、この考えにいたるには長い長い時間をおかなければならなかったのではないと感じます。

物語でも、思想でも、モノでもひとでもなんでもよいのですが、ときに奇跡としか思えないような巡り会いをしてしまうことがあります。ほんとうに誰かに仕組まれたような。しかし、それはその人自身がそれを求める強い意思がひきよせた出会いだと私は思います。ウェブ上で神無月動画を見つけたのも、そしてあなたが凄惨な想いをかかえているのも、必然なんです。そういうと酷かもしれないですが。嬉しいことは偶然で、悲しいことは思いがけない、あってはならぬこと。そう思いたいものです。そう片づけて人生楽に生きたいものです。でも、悲しくて苦しいことだって、いつか自分に役立つことだってあります。現に、あなたがこの作品に寄せる想いは、私の考えをひときわ深めてくださいました。先日の書き込みがなければ、私はここまで真剣にこの作品を推賞しようとは思い至らなかったのです。「一生忘れられない」という短い言葉の裏にある、深い意味合いを感じ、それゆえあえて失礼とは思いながらも、DVD鑑賞をおすすめしました。ほんとうに、あなたの一生にこの作品を結びつけてほしいと。そう願ったからです。

じつは私も、アニメ本放映を初視聴後一年ぐらい経って、DVDを入手しました。そのころはいまほど動画サイトが充実していなかったので。他人からみたら笑われるかもしれませんが、人生最高の買い物をしたと思っています。このDVDが身近にあって、それが観れる明日が続いていることが、とてもとても嬉しいのです。

私は、このDVDを「人生の免罪符」として買い、そして所有しつづけているのです。そこにある彼女たちの笑顔と言葉に、愚かな行いが許されているような錯覚。アニメだから、低俗で卑猥で子供じみている、そうは思いたくはありません。

あまり情報性のないブログで、しかも神無月専門のファンサイトというわけではないのですが、すこしでも喜んでいただけましたら光栄です。お世話になっていますリンク先には、熱く深く神無月愛にあふれたサイト様がありますので、DVD購入とあわせて、よりこの作品が楽しめること間違いなしです。
では、ふたたびお立ち寄りくださりありがとうございました!
返信する
ごきげんようなの? (白いの)
2007-10-23 22:41:38
なにか考えさせられる文章でした。
いつも熱い想いが伝わってくる文章はたいしたものだと感心して見ております。
私は文才がないので、尊敬の眼差しで(苦笑)
こんな長文は私は書けません。

あと、こういう影響を受ける作品に出会えることは幸福であると思いました。

しかし話が重い(苦笑)
神無月の巫女を観る時は正装して正座してみなくてはと思いました(笑)
返信する
…重くて、すいませぬ(汗) (万葉樹)
2007-10-24 18:05:39

ごきげんよう。白いのお兄様。
ご愛読ありがとうございます(大感謝)

文は長ければいいってものではなくて、短い言葉で読んだらすぐ想いが伝わるようなものがいいのかなと思ってます。それができなくて、簡単に言えばすむことをもったいぶった言い方したり、論理が堂々巡りになるのは、昔から悪い癖だとひとから注意されてます。

若いコは携帯文章に慣れてるので、私の書くような文章は敬遠されてるのではないかなと。あ、でも文章の体裁じゃなくて、ようはそこにこめられた気持ちとか、自分にはない視点を持っているとか。ときどき十代のひとの文章読んで、みずみずしい感性にびっくりすることがありますね。もちろん白いの様はじめお兄様,お姉様世代の考え方もすごく参考になります。

>あと、こういう影響を受ける作品に出会えることは幸福であると思いました。

私もほんとにこれが観れることが幸せです。たぶん、白いの様にとっての『カブト』や『神姫』がそうであるように。

>しかし話が重い(苦笑)

あはは。すこし頭冷やそうか、私?(by 田村ゆかり)ですね。
私もここまで書いたら正直読者様に引かれるだろうなと危ぶんだのですが、いただいた文面を繰り返し読んでいるうちに、どんどん話がエスカレートしてしまいます。

>神無月の巫女を観る時は正装して正座してみなくてはと思いました(笑)

いや、そんな最初からかしこまって観なくても(苦笑)
いちおうお兄様向けのサービスショットなんかはあるのですが、なぜかこの作品女の子が脱いだりしてもいやらしさを感じないんですね。女神の裸体像を眺めるような感じで。でも、へんな言い草ですが、精神的なエロスといいますか、情欲をねりこんだプラトニック・ラヴといいますか、そんなものです。言ってる側から自分でも、その意味合いがよく判っていなかったりするのですが。
ですので、そんなに姿勢を正して観るものではないかなぁと。例えるなら、コンサートで聞くクラッシック音楽じゃなくて、仕事の手をやすめて口ずさむ民謡とか子守唄の類じゃないかしらと思います。自分の生きた時間のなかに埋め込んで、自分の呼吸ともに流れていきたい、そんな物語だと、私は感じてます。

コメントありがとうございました!ではでは。

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