陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

氷上のメリークリスマス、女王たちの熱闘

2010-12-27 | フィギュアスケート・スポーツ
全日本フィギュアスケート選手権2010、女子のSPが大混戦の幕開けとなりました。十代の若手も善戦していますが、負けじと奮闘が光るのはやはり長年応援してきたベテラン勢でしょう。女子SPの後半ではオリンピック経験のある四人を特集します。

滑走第五グループに登場したのは、もと世界女王の安藤美姫選手。
本人はまだまだベテランじゃないと謙遜していますが、中国杯(氷上の美姫、華麗なる舞台)・ロシア杯(氷上の舞姫、最終ステージへ跳ぶ!(一))での驚異の五連続ジャンプを披露し、怪我に挫けないタフさを身に着けたあたり、すでに修羅場をくぐってきたベテランにふさわしいといえます。
メダルを逃したGPファイナルから必死に練習してきたというSPの曲目は「ミッション」。清楚な白い衣装で、これまでの攻撃的なステージから一転、もの柔らかで静かな新たな美姫ワールドが広がります。
みっつのジャンプの要素を無駄なく優雅に跳び切ってくれました。冒頭の連続ジャンプも良かったですが、二回目の三回転も高さがあって。ゆるやかなテンポの曲調を、ていねいにしっかりと演じていくのです。終了後は、スタンディングオベーション、観客席からは拍手の嵐、コーチも万歳、本人も破顔一笑。引き出した得点は64.76点。この時点ではトップですが、これを上回る「あの人」が登場したために二位に。しかし、フリーでも逆転の可能性はじゅうぶんにあります。ロシア杯で案じられた怪我は尾を引いていないようで、ひと安心。

鈴木明子選手は、今年のGPシリーズでの優勝こそありませんが、二戦ともに準優勝(氷上のシンデレラ、不屈の舞氷上の舞姫、最終ステージへ跳ぶ!(二))でファイナル進出。昨年の全日本では、浅田選手とともに、バンクーバーへの代表入りを決定した舞台。今季は世界選手権での表彰台をめざして、今大会での勝利も譲れないのです。
遅咲きのヒロインの持ち味は、精神的な安定感。年々熾烈になっていく全日本の場でも楽しむという余裕の発言。
曲は独特の目力で訴えかける「ジェラシー」
序盤の三回転・二回転は成功したものの、次の二回転はやや右にぶれ、三回目のダブルアクセルも成功にみえますが、すこし着氷が危うかったような。鈴木選手は、踏切りの直前の両脚がきれいに重なって見えるときはたいていジャンプに成功してきたのですが。GPファイナルではほぼ完璧にまとめていたので、珍しいですね。
ジャンプ以外の要素は、一秒以内に終わるジャンプと違い持続するので素人目にとらえやすく、抜群の見応えがあります。キャメルスピンでの手の演技は絶妙。後半の曲調が盛り上がっていくにつれて、どんどんヒートアップしたステップにも磨きがかかります。ラストは精いっぱい両腕を前にさしだして、この舞台をジャッジに突き出す。そんな意気込みを感じさせますが、本人もミスを感じてか、演技後は残念な顔つき。56.86点とふるわず、最終的には七位となります。表彰台にはちと遠いですね。フリーではお得意のミュージカル曲、順位は気になさらずにご自身の演技を楽しんでもらいたいですね。

最終滑走となったのは、超ベテランの村主章枝選手。
オリンピック経験者にして、全日本は五回の制覇。
なんと十四歳から十六年連続の参加記録をもつという。人生の半分以上をフィギュアスケートに捧げているわけですね。全日本デヴューした年に生まれた村上選手と同じ舞台に立ってるわけです。それだけ競技生活を続けられる精神力も見習いたい
もの。
三つのジャンプは取りこぼしがなく、落ち着いて成功させました。今回が二十代最後のステージとなったそうですが、納得のいく内容だったのではないでしょうか。結果、57.18点で五位に。フランス杯のSP(フィギュアスケートGPシリーズ フランス杯2010(一))でも見せた堅調ぶり。

注目の五輪銀メダリスト、浅田真央選手。土壇場で強いヒロインの底力、いよいよ発揮です。
今年は大会五連覇がかかっています。そしてGPシリーズでの不振を払拭する絶好のチャンス。
新境地をあらわしてか、紅いアクセントの入った衣装で登場。今年はじめて挑戦したというタンゴの難曲に挑みます。
冒頭の十八番トリプルアクセルを成功させて自信がついてきたのか、つづく連続技、三回転・二回転もきっちり決めます。最後の三回転も成功。ファンは跳ぶたびごとに、彼女の足がきれいに銀盤に吸い寄せられるようにと祈るような気持ちをこめて観ていることでしょう。全盛期ほどの迫力ある高さにはややもの足りないような気がしますが、それでも文句なしの成功。
このステージで目をみはったのは、やはりよほど丹念に時間をかけて磨きをかけたのではないかと思われる表現力ですね。館内の温かい手拍子に押されて調子をあげていく。気持ちが吹っ切れて楽しそうに踊れています。フィニッシュを決めたあとに、笑顔弾ける真央選手を今季は見かけたことがありませんでした。
その結果は、66.22点。もちろん首位の座。今季はじめてのトップですね。この点数、GPファイナルを制したアリッサ・シズニー選手をも超える今季では世界最高得点。浅田選手が順調であれば、GPシリーズでは圧勝だったに違いないかも。

女子は僅差で七位までが並んでいますが、王手をかけたのは浅田選手。
前年のバンクーバー行きをかけた全日本(氷上のシンデレラ、バンクーバーへ邁進!)と同様に、劇的な優勝を飾って世界へ羽ばたくのか。
追う安藤選手はフリーでは強力なプログラムを用意していますから、油断なりませんね。村上佳菜子、庄司理紗の新世代もどこまで伸びるのか。

【参照】
真央SP首位発進!美姫が2位/フィギュア - スポーツ - SANSPO.COM
真央首位!復活3回転半で今季“世界最高”SP66・22…フィギュア - スポーツ:スポーツ報知

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