陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

日本映画「泣きたいときのクスリ」

2011-08-09 | 映画──社会派・青春・恋愛
2008年の日本映画「泣きたいときのクスリ」は、電車に乗りあわせた六人の男女をめぐる群像劇。わんわん泣ける話ではなく、ほろりとさせられる感じの軽いエピソードの詰め合わせですね。

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ある日の夕方、五十代の中年男性が車内で泣いています。
それを見つめる五人の乗客も、泣きたいような重い事情を抱えています。

妹を亡くし自責の念に駆られて「泣き薬師駅」のベンチにたたずんでいた青年・龍一。そこへ白い服を着たふしぎな少女が現れて…。

帰宅中の女子高生・綾は泣くおじさんが気になって途中下車し、跡を追いかけてしまう。ファミレスで見かけたのは、「おじさん」と友人の麻理子が逢引している姿だった。すわ援助交際かと思いきや、そこには複雑な家庭事情が…。

仕事帰りのサラリーマン・洋介は、男が人前で泣くことを恥だと教わってきた人間。飲み屋の親父と会話するうちに、自分の人生で泣きたいほどのことがあったかどうか考えに耽っています。母親が死んでも泣くことができない自分ははたして人間らしいのか。

もうすぐ廃駅の近い「泣き薬師駅」。
30歳にして新米駅員の竹野は、仕事のミスが多い。駅の人気取りのため、動物の駅長探しに悩んでいます。その言いつけは駅長の嫌がらせに近いものでしたが、呑気な竹野はどこ吹く風。名物駅長候補に駅にいる柴犬に目をつけますが…。

衣料品メーカーで侘しい在庫管理を務める桜木エリカ。
駅で待ち構えていた柴犬のポン太がゆいいつの家族の独身。かつては花形だったのい、今となっては「売れ残り」扱い。会社では立場がありません。

涙を通じて五人がそれぞれに人生について見つめなおしていく。
涙を見せなかった男が父親の愛を感じてはじめて見せた涙。会社での疲弊を元に心を通わせる三十代の男女。悲しみを押し殺さずにいることでこころの重荷から解放された青年。どちらかというと涙もろい男性向けのドラマなのかな。

監督は福島三郎。
出演は大東俊介、戸田菜穂、袴田吉彦、遠藤憲一、佐津川愛美。
戸田菜穂のふと冷めた表情が怖いですよね。女のもの悲しさといいますか。主演の五人はいい味出してますが、キャラとして立っていたのはあのハイテンションのファミレスのウェイトレス。

07年秋の放送で好評だったラジオドラマが原作なのだそうですが、ラジオだから泣き声や電車の音が胸に響くのであって、映像にすると若干つまらなく感じてしまいます。群像劇のわりに共通点が駅というだけで、互いがばらばらなあたりが。サラリーマンと女子高生の話は別になくてもよかったように思えますしね。

個人的にはいい大人が泣いて情けないとは思わないし、葬式で泣かなかったからといって薄情だとも思わないですね。人がこころの有り様をどう表すかは人それぞれでしょうから。

(2011年7月22日)

泣きたいときのクスリ - goo 映画

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