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陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

映画「ニードフル・シングス」

2009-01-21 | 映画───サスペンス・ホラー

ひとつの街を潰滅させるのに必要なもの、それは爆弾でも、銃刀でも、またウィルスでもなく、人間の欲得である。
九三年作のこの映画は、人間の欲をかきたて、憎悪をひろげて、街を暴動状態に変えてしまう悪魔の男の話です。アメリカ版笑うせぇるすまん、といったところ。

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「ニードフル・シングス」は、キャッスル・ロックという街にオープンした骨董品店の店名。訳すれば、「ご入用の品々」という意味でしょうか。この店のオーナー、老紳士然としたリーランド・ガーントが食わせ者。訪れ客にまるで用意したかのようにめぼしい商品を売りつけては、その代価として頼みごとをつきつける。やがて、その要求はどんどんエスカレートしていく…。なぜならこの老人が望んでいたのは血であり、混乱であるから。

最初の操り人形は、野球好きの少年。しかし、彼にけしかけた悪戯がやがてとんでもない刺し違い殺人事件に発展。街を恐怖に陥れます。
ガーントのやり口は巧妙で、グッズをえさに、日ごろからいがみあっている者どうしの憎しみの火に油を注ぐようなことを、第三者にしくませるというもの。猜疑心はどんな凶器にも勝る。憎しみの連鎖はどんどんひろがって、住民すべてが疑心暗鬼に陥り、パニックになってしまいます。

このからくりに気づいた保安官アランが、最後に住民を説き伏せて悪魔の正体を暴きます。はたして、それでガーントは退治されるのか?

しかし、犠牲になった全員が全員というわけではないのですが。口ぎたない農婦、公金横領したギャンブル狂いの造船会社社長、若い頃放蕩ざんまいでみすぼらしい中年となった男などの不遇な最期には、つくり手がわの強烈なブラックユーモアを潜ませているはず。最初に悪魔の取り引きで手引きをしてしまった少年が良心の呵責に耐えかねていたのとは対称的な大人の姿ですね。身につまされるものがあります、いやはや。

ホラーって苦手なんですけれども、ひたすら意味もなく血が流れるというわけでもなくて、まだ観れました。
しかし、猟奇的なシーンのBGMにアヴェマリアってのも、なんだかねぇ。
欲しいものを手に入れつづけておくために、悪行に加担してしまう人びとを皮肉ったともいえる、みごとな心理劇。やはり欲しいものをかぎりなく無料で得るという裏には、高くついてしまう人生があるようでして。にしても、人間困るとなぜだかモノに頼りたくなるのは、なぜなのでしょうか。

原作はモダンホラーの第一人者スティーヴン・E・キングの小説。災厄が歴史上くり返すという結末に、人間の業を感じさせますね。最後に背筋の寒くなる展開というところでは、ホラーとしては成功しているのでは。といいますか、これ以上恐くしたホラーは観たくないです…(弱)

(〇九年一月十八日)



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