陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

日本映画「硫黄島からの手紙」

2009-08-16 | 映画──SF・アクション・戦争
主演と監督の知名度から期待していたのですが、観終わって少しがっかりしたのが、2006年の映画「硫黄島からの手紙」
監督は、クリント・イーストウッドですが、外国人らしい日本人=サムライという固定観念が押し出されすぎているのではないか、そしてまた戦勝国である米国に都合良く描かれているのではないかという気がしました。

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1944年夏から翌45年2月までの硫黄島での日米の激戦を描いたもの。
主役は渡辺謙演じる栗林陸軍中尉で、米国への留学経験がある彼は、旧来の日本の指揮官とは異なり、ヒューマニストで人徳のある人物として登場します。準主役となるのが、二宮和也演じるもとパン職人だった兵卒の西郷。ですが、二宮くんは丸刈りにすると田舎の中学生みたいで、演技にも冴えがないですね。
他の配役は、伊原剛志など実力者を揃えていたのに、惜しいです。彼の顔からすると、妻帯者ではなくて、若い学生という設定のほうがあっていたような気がします。喋り方も現代っ子っぽかったですし。

「シンドラーのリスト」なみにモノトーンに近い静謐な画調は、戦渦に置かれた兵士たちの暗い状況をよく演出していますが、筋書きがあまりおもしろくなかったです。指揮官である栗林を、侍のように死なせただけ。米軍に友好的だった西中佐も、誇りある死に方をさせている。
そのいっぽうで、生き延びたい一心で投降した兵士が米軍の見張りに銃殺されたのも、捕虜になって浅ましく命乞いした報いのように言われている。

栗林は、西郷には英雄視されていますが、他の部下たちには米軍に妥協した腰抜け呼ばわりで、命令違反がどんどんでてきます。
早くに自決を選ぶよりもつらい持久戦にもちこんで敵を翻弄せしめた栗林中将の活躍談なのかと思っていたので、すこしがっかりでした。米軍の出演を限ったため、敵方をどのように困らせたかということはいっさいわかりません。健闘したという描写に乏しい。日本兵はけっきょく離反したまま、死んでいった者もあったんですね。

硫黄島の決戦を米軍側から描いた「父親たちの星条旗」とともに、話題作。
硫黄島は現在、米軍および自衛隊の軍事施設となっていて、許可がないと上陸することはできません。そのことからして、この戦いはあまり知られることがなかったようです。届かなかった手紙は、その忘れ去られた声の象徴でした。

太平洋戦争については、恋愛を絡ませる場合を除き、ドキュメンタリー番組のほうが真実を語っているような気がしますね。

硫黄島からの手紙(2006) - goo 映画


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