陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

日本映画「インストール」

2009-05-02 | 映画──社会派・青春・恋愛

綿矢りさ嬢といえば、金原ひとみ嬢とともに十九歳で芥川賞を受賞したことで話題になりましたが、本作はその彼女が十七歳のときに応募した受賞作を映画化したもの。

ひと言でいうなら、一時間もあればお話が畳める展開を、妙な会話の外し方やテンポの狂いをいれて、薄めてつくった作品という気がしました。
原作のほうは読んだことがないので、よくわからないのですが。映画オリジナルの設定があるらしい?
こういう一人称の悩める女子高生が主人公の話は、小説で読めば、ままおもしろそうだけど、映画にしたらたいくつきわまりないのでは、という気がしますね。よほど、演出が奇抜ではないかぎり。

いわば、自分探しと、自己再生の物語。
以下ネタバレあり。


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登校拒否の女子高生、朝子がおませな小学生かずよしの勧めで、風俗チャットのバイトを開始。
人生の目的がない彼女は、ヴァーチャルな恋愛にのめりこんでしまう。といっても廃人ほどではなくて、相手に他人へのなりすましを見破られ、また母親にも発見されたことから、足を洗ってしまう。
いわば、彼女は人生をインストールしたのだという寓意。

けっこうキャラの濃いひとが登場するわけですが(眼鏡女子の委員長が「乾いた感性を環境のせいにするな」と茨木のり子ぶってみたり)、朝子にとってキーパーソンになるのは、三人の男性。
ひとりはPCを買い与えてくれたが、メールもできずに亡くなった祖父。
そして、片想いの人、コウイチ。
最後に、小学生のかずよし。

実質上、アダルトチルドレンのかずよしとの会話が多いわけですが、いちばん再生のきっかけを与えたのは、じつはコウイチの存在だったのではないでしょうか。
ただ、彼の台詞、ちょっとありきたりといいますか。演じる中村七之助の声が歌舞伎役者らしいねばっこさがあるので、ふつうの男子高校生っぽくないです。
しかし、終盤、この展開はぬるいかも、という感じが否めない。

ぶっちゃけ管理人的には、神木隆之介くんを愛でる映画だったんじゃないかと。
仮面ライダーアギトではじめてみましたが、かわいいですよね(動機が不純)

小学生のかずよしが、感じの読み間違いをさかんにするのですが。あれって、活字離れ世代には如実に真剣な問題じゃないですかね。ネットで大量に文章読めるから多くを知ったような気になるけど、その言葉をどういう現場でつかうかという空気感がつかめないので、浮いている。そんな危惧をいだきますね(自分が現実そうなので。リテラシーも会話術も落ちてると思います(汗))

作中に登場したマックがかなり古いタイプ、OSも9.01で、ひと世代まえですね。キーボードの高さがありすぎて、びっくりです。ボタン押してるみたいですね。
あと、コウイチと語らってるシーンの時計盤のある場所や、マンションの内装などは、なかなかセンスがよかったです。でも、脚本がよろしくなかったような。

「恋空」とおなじで、十代にはウケると思いますけどね。女子高生ひとりが荷物をすべてゴミ出ししたという設定には、リアリティが感じられませんでした。アニメにしたらおもしろかったような。

(〇九年四月二十四日)


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2 Comments

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ブックオフで・・ (十瑠)
2009-05-02 15:03:14
もう、随分前のことですが、105円で売ってましたね。
これだけじゃなく、「蹴りたい背中」も。

安くても一応最初のページくらいは読んで買うかどうか決めるのですが、どちらも結局買いませんでした。ありそうで、面白そうな設定なのに、やはり文章に惹かれなかったというか。
何ヶ月後か先に、またお店に行ったら、もう一度ページをめくってみる気はあります。^^

あっ、映画は観る気無いです。
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原作は読む気なしです (万葉樹)
2009-05-02 16:43:22
ごきげんよう、十瑠さま。
コメントありがとうございます。
GWもレンタルビデオで過ごし中の管理人です。

>もう、随分前のことですが、105円で売ってましたね。

うちの近所ではかならず見かけますよ。図書館でもいつも置いてありますけど読む気が。

>安くても一応最初のページくらいは読んで買うかどうか決めるのですが、

なんか立ち読みですませそうな気がします。書いた本人も三〇分で読めるといっていたような。文章はともかく、おじさんの審査員が十代の若い女の子の感性を知りたかっただけ、という気がします。清純そうな女の子が風俗チャットのことを書いたというギャップが新鮮だったとか?若い男の子で受賞してる子は、いないですよね。
でも、若い頃の荒削りな感覚もたいせつなので、やはりおもしろかったんでしょうかね。

>ありそうで、面白そうな設定なのに、やはり文章に惹かれなかったというか。

読みやすい文章でないと売れないからではないでしょうか。
話の筋としては、チャットでやらせしてるのがバレたときの騒動をもっと深めて書けばいいのに、けっきょく、あっさり終わってしまって。キャリア積んだアニメの脚本家やライトノベル作家のほうが、よっぽどおもしろい話を書くような気がしますね。

>あっ、映画は観る気無いです。

あえてお勧めしません(苦笑)

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