マニアックなシネマフリークの皆さま、ごきげんよう。
今回は、ちょっと濃ゆいシネマをご紹介いたします(笑)
前置きもねちっこいから、覚悟なさってくださいね、うふふ(謎笑み)
九七年作のフランス映画「ぼくのバラ色の人生」
じつは、この映画、以前から観たかったものでした。学生時代、シネマ狂の友人(しかもレスリー・チャンが好きだった。その頃、私はレスリー・チャンを知らなくて、なんだかすごい香港俳優だという認識しかなかった)に、一時期頻繁に劇場通いに付き合わされておりましたが、そのときの予告で見かけたんですね。
ぶっちゃけ申し上げますと、劇場で観なくてよかったという作です。面白くなかったという意味あいではなくて。暗く閉じ込めれた空間で、今これ観たら帰る気力なくしそう。
以下、絶妙にネタバレあり。
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七歳のリュドヴィックは、お人形さん遊びやお化粧が好きで女装が趣味というちょっとアブない男の子。両親はそれなりの年になったら、諦めるだろうと思って生あたたかく見守っていました。しかし、家族ともども引っ越した郊外住宅のご近所では大問題。父親の上司の息子でクラスメイトを好きになってしまったリュドヴィック。しかし、大人たちの偏見が子どもに伝わって、学校でも白眼視されてしまいます。
地域から浮いてしまう一家。立つ瀬のない両親は、リュドヴィックを精神科医に連れて行き改心させようとしますが…。けっきょく、父親はリストラされて、一家は転出を余儀なくされてしまいます。息子の意地を通ししたせいで、人生を狂わされたと母親はリュドに八つ当たり。このあたり、胸がひしひしと痛いですね。
映画「エデンの彼方に」もそうでしたが、許されない愛情を抱いたものは国を追われ、安心の暮らしを奪われねばならないのでしょうか。彼らの望む楽園は、じつはもう現実にはないと。だからこそ、妄想の世界が生まれるのだと。
新天地では、リュドはある意味「同類」とよべる友人を得るのですが、最後、決してハッピーエンドではないと言える。彼が欲しているのは、自分が完全に女の子になって男の子を愛することなんですよね。
フランス映画らしく、印象派のような明るくさわやかな画調に引き込まれてしまいます…。が、訴えていることは、かなり重い内容。キッチュなお人形ごっこと、モノクロームに近い影をひいた人間関係とが、交錯する。家族にまで否定されて、リュドのとろうとした行動には、胸が詰まってしまいます。わずか、七歳にして自分の存在に絶望するなんて。
マイノリティに開かれている未来はすくない。ふつうの人びとが強いる生活が、彼ら彼女らにとっては、ふつうではなく、苦痛でしかないのだから。
彼の未来にバラ色の人生あれ、と願いたい。
(〇九年二月十二日)
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