「京四郎と永遠の空」
それは絶対天使たちが元ネタとなった三つの物語に新たな楽章を加えて奏でられる幻想交響曲。変奏され、繰り返し現われる主題は、愛しさと哀しみと美しさ。
神無月妄想で語る独断的「京四郎」感、まだ続きます。今回の敵方は、天使という名称だけあって禍々しい雰囲気はありませんね。私は「神無月」の一歩間違うと八墓村的な、おどろおどろしい暗さが大好きでしたけど。オロチ衆は、人生に絶望し、その怒りや哀しみを邪神に魅入られた人間の寄せ集めという設定だけれども、ノリは明るかったしドツキ漫才しながらもちゃんと共同戦線張っていたあたりはさすが。むしろ、仲間割れしてたのは巫女二人+男一名だし…。
「京四郎」の方でも、男一人に少女二人の三角関係愛憎劇に、重きが置かれそうではありますが。せつな以外の三人の絶対天使たちには共闘意識はなく、また憎悪の感情で世界破壊を目論んでいるわけではない(?)ので好感が持てますね。悪の側にも愛のドラマや美学があって、今回は周辺の人間にも存分にスポットが当てられていると嬉しいです。というか、カオン・ヒミコの出番増やして!!(やっぱりそれかよ)
《Re-Kannaduki その4》
「京四郎は私のすべて… 京四郎が進むなら共にそれを切り開く拳になる… 京四郎が止まるなら…私はそれを守る盾になる…」
「私は京四郎の剣。最後まで一緒に戦って…そして砕け散る剣」
戦う乙女せつなの決意と恋心を込めた言葉が光ります。けれど、どこぞの熱血少年みたいなセリフです。ちなみに彼は、アニメ神無月第十話で、こんなことを言っていました。
「今日から俺は君の剣で、君の盾で、君の拳だ。だからもう負けない」
って、地球は救ったけど恋の真剣勝負には負けただろーが!しかも、第一話の時点で姫子の唇は奪われていたのでした。千歌音ちゃん、さすがです(笑)
ああ、こんな負け犬の言い回しを復唱しているようじゃ駄目ですよ、せつなちゃん。(もうすでに「ちゃん」づけかい)やっぱり、こう言わないとね!
「私があなたのハンカチになるよ」(うるうるの瞳で)
ところで、この「私(俺)が○○の××だ」発言の源流って、「宇宙戦艦ヤマト」で森雪が古代進に語った「私があなたの杖になるわ」なんでしょうかね?(どーでもいいです)
「王子様」の共通項で親密さを増してゆく京四郎と空。それを傍らで寂しげに見つめるせつなは、姫子への想いを秘めながらもソウマとのデートを後押しする千歌音に近く、また姉妹のように仲睦まじい主人と客人を目の端にとめながら勤めを果たす乙羽さんを思わせもします。
恋に落ちるのは一瞬で、愛の深さは年月に比例しない。京四郎の喜ぶ顔が見たいから、せつなは空にも細々と尽くします。だから空も恋敵と思いこそすれども、報われないその想いに、憐憫の情さえ抱く。
このときの空の他人事のような同情心が、思わぬかたちで跳ね返ってくるからこそ、彼女の絶望も大きいのだろうな、と思いました。他人の為に流す涙はどこかしら甘い。(それとも本能的に自分の存在理由を知っていたから零れた涙なのか?)覚悟を決めて雄々しく言い放ったせつなの台詞も、今後の展開を知って読み返すと痛々しいです。ホントに、原作者も監督もキャラの扱いに容赦ないです。
でも相手の望む事は何でもする、それは果たして愛なのでしょうか?
空に傾き始めた京四郎の心を取り戻さんが為に、せつなが暴走するとかありえそうですね。それこそ、乙羽さんオロチ八の首化案の実現になってしまいそうな鬱々な展開はイヤだなー。
それから空と京四郎のお買い物イベントも、アニメ神無月でペンダントを購入したシーンを髣髴とさせてくれました。これで、遊園地デートしたり、焼肉食したり、夕焼け眺めて自分んちを指差していたり(姫子の無関心な「フーン」が笑える)したら、確実にこの男女の恋は実らないでしょうね。
それが神無月ジンクスだから!ふははははっー(をい)
真面目な話、耐え忍ぶ恋情とか見返りを求めない愛とかって、千歌音もそうですが、せつなの態度は、どこかしら一昔前の封建的な女性像めいていますね。それに対して、京四郎に迫ってみたりする空は、アグレッシブではないけれども、アクティブで現代的な恋愛感覚の持ち主なのかも。
それはともかく、神無月ファンを魅了した植竹節ともいえるお耽美台詞がアニメでもとことん炸裂しそうなので、私は楽しみなのです。
【私ね…まだ終わらせたくないの…。だからその7まで続く (え゛)】