陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

日本映画「下妻物語」

2009-01-06 | 映画──ファンタジー・コメディ

昨日の四日深夜にMBSで放映されていたのは、映画「下妻物語」
たしか介錯先生がむかし掲示板でよかったと誉めていらっしゃったような記憶があるのですが。とりたてて百合というわけでもなかったです。でも、がっかりしない。


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ちなみにとうしょ名前だけしか知らなかったときは、極道ものかポルノ映画かと思っていました。ちなみに下妻というのは茨城県にある実在の地名で、そこを舞台にした物語ということです。

二〇〇〇年代にはいった邦画にはあまり観るべきものがない、とかってに考えていた私(知ったかぶり)ですが。これはぶっとびました。五分おきに笑いがとまりませんでした。今年の初笑いはこれできまりです。モンクなくおもしろい。
そして、原作者の獄本野ばら氏の豊穣なる、しかしやや癖のあるファッションセンスと、関西の価値観へのするどい洞察力をうかがわせます。
そこそこに下品なニュアンスはあるのですが、ひたすらにハイテンポなギャグのオンパレードと、どこかズレた女の子がひたむきに我が道をいく姿を前にしては、気になりません。

ヒロインは深田恭子演じる竜ヶ崎桃子。ロリータファッションが大好きで空想好きないっぷう変わった女の子。養育の義務を果たしていないように思われる情けない親の姿をながめて育った彼女は、小学生にしていやにマセたガキんちょでした。

物語は終始、彼女の甘ったるいナレーションで語られます。
この映画の登場人物は皆どれもハンパなく濃ゆいキャラです。桃子の両親、祖母(樹木きりんはこういう役をやらしたらぴかイチですよね~)はまさに、この親にしてこの娘あり、といったすごいキャリアの持ち主。

さて、そんな桃子がネットのパチもんオークションを介してであったのが、暴走族の少女白百合イチコ。土屋アンナのドス声とふてくされた演技がイカれてます。ちょっとアタマがユルくて、国語力が乏しくて、コミュケーションは頭突きという、とんでもないツッパリですが、もともとは根暗でまじめな眼鏡ッコでした。

この性格正反対のふたりが互いの信条をみとめあって、絆を深めていくというのが大筋です。

中盤、おきまりのように仲違いして、イチコの危機に桃子がスクーターを暴走してかけつけるというところは、先が読めてしまう、と思わせてじつは意外などんでん返しがあります。ロココ趣味のお上品でぶりぶりのカワイコちゃんを気どっていた桃子が、土壇場で啖呵を切る場面はけれん味たっぷり。そして、意外な伏線があります。

ヤンキーやヤクザを笑い者にするというのはありきたりな手法であるけれども、キャラクターの味つけだけで乗り切るのかと思いきや、ストーリー構成もなかなか練られていまして、おもしろいです。安野モヨコの漫画のキャラに近い雰囲気がありますよね。

原作の獄本野ばら氏の小説は『カサコ』を読んだことがありますけれど、独特の世界観をおもちですよね。その話も、不器用な少女がやさぐれた女の子に出会ってという、みにくいアヒルの子の黄金パターン。

本作は海外では「Kamikaze Girl」と呼ばれて、かなり高い評価をうけているようす。渋谷のゴスロリファッションが欧米でもてはやされているらしいですが。今世紀にはメイドコスプレーやレディースのユニーフォームがパリジェンヌにも受け入れられたりするのでしょう(ホンマかいな)

でも、ロリータファッションが着られる時間も、暴走していられる時間も、短いのです。最後はサクセスとしてまとめておりましたけれど。桃子は老後、やはり尼崎ファッション(笑)におちつきそうな気がします。

(〇九年一月五日)


【画像】
ジャン・オノレ・フラゴナール(b.1732-d.1806)
『ぶらんこ』(部分)(c.1768?)ウォレス・コレクション(ロンドン)蔵

下妻物語(2004) - goo 映画下妻物語(2004) - goo 映画

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