陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

映画「ヒットマンvsヒットマン 裏切りの報酬」

2014-07-22 | 映画──ファンタジー・コメディ
2008年のアメリカ映画「ヒットマンvsヒットマン 裏切りの報酬」は、謎の雇い主に雇われた四人の暗殺者と彼らが救った少女との物語。本格的なアクションかと思いきや、コメディ。コメディかと思えばわりと深刻な社会問題に向き合っていたりする微妙な作品。

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麻薬の密売人を極秘裏に暗殺するヒットマンとして四人の男が雇われる。
素性を隠した四人は、徒名で呼び合う。イタリア人風の「フォーリナー」、黒人の「ブラッキー」、カウボーイハットの「ホワイティ」、そして「インディアン」。

ロサンゼルスの粗末な家に集合した四人は、奇妙な同居生活をはじめることに。
フォーリナーとホワイティは、メキシコに近い国境の密売の現場で、犯人を射殺。
取引に使われようとしていたふたりの少女、ベッキーとケイティの姉妹を保護します。
いっぽう、ブラッキーとインディアンは売人のアジトを奇襲して…。

アジトに乗り込んできた笑顔爽やかな韓国人(統一教会?)とか、同居先に押しかけてきたホワイティの母親とか前半部はコメディパートがいっぱいでどこが笑いどころなのか困るところ。でもあんがい深刻な差別主義に触れていたりもする。家族愛に疎遠な四人の無骨者が、良心の呵責に耐えかねて子供を引き取るために友情を積み上げていきます。

いっぽう、雇い主の男たちは口封じのために殺し屋を抹殺することに。
雇い主の正体を知った殺し屋の仲間が殺され、四人の身にもみるみる危険が迫る。ついには犠牲者が…。

筋書きととしては、ジャン・レノ主演の「レオン」を髣髴とさせますよね。最後はフォーリナー、ブラッキー、そしてケイティ三人の逃避行となりますが、最初からこの三人に絞ってもっとエピソードを膨らませておけばおもしろかったように思われるのですが。

生粋のアメリカ人ではないフォーリナーが、黒人の劣等感に無頓着なあたり、人種差別というものがある特別な政治構造で生まれたものだと感じさせます。密売人を殺さねばならぬフォーリナーも、ひそかに薬物中毒であるというのも皮肉なものですね。フォーリナーは少女ケイティにほだされて改心しはじめますが、二人のヒットマンは雇い主とついに交渉の場で対面することになって…。

悪に屈しない裁判官と法律さえあれば麻薬犯罪者を死刑に持ちこめる。
雇い主側の論理はやや強引ではありますが、麻薬に毒されたアメリカ社会の暗部を垣間みるようです。覚せい剤に溺れたタレントがすぐに復帰する日本の現状を憂うならば、死に近しい刑罰はあってもよいのではないかと思われます。

ラストはいちおうハッピーエンドなのですが、殺し屋をあえて四人にしたのは誰を生き残らせるかで緊張感を持たせるサバイバルゲーム風にしたかったのでしょうね。

監督は パルビス・サジザデー。
出演はマイケル・マドセン、デヴィッド・キャラダイン、マイケル・ブレイン=ロズゲイ、アーネスト・アンソニー。

(2011年6月27日)



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