医療漫画が大流行の昨今ですが、映画でも医師を描いた良作をひとつ。
ロビン・ウィリアムズ主演作、1998年アメリカ映画「パッチ・アダムス」(原題:Patch Adams)は、彼が精神科医に扮した社会派ドラマ。下ネタや親父ギャグが多いのが少々難点ですが、ままこころが温かくなる人間のふれあいを描いた感動作です。
1969年の冬。
自殺癖があって職をなんども変え、精神病棟へ入院したハンター・アダムスはジョークを飛ばし、患者たちを笑わすことに生きがいを見出す。奇妙な質問ばかりして周囲からイカレじじい扱いされている老人アーサーと意気投合。彼からパッチ(直すという意味あい)というニックネームを与えられる。
患者を治すことに喜びを見出したアダムスは、二年後には遅まきながら医科大に進学。まだ臨床に参加できない一年生でありながら、病棟に紛れ込み、病棟の患者の前で道化を演じて笑いを巻き起こす。
名前ではなく記号のように呼ばれる患者。臨床でなく暗記ばかりの勉強。
アダムスの前の態度に異を唱えるのは、厳格な医学長や優等生肌の女学生フィッシャー。しかし馬鹿を演じても頭の良いアダムスは成績優秀。お遊び気分のアダムスをよく思わない、生まじめな学生たちの言い分もわかります。彼らだって真剣なのです。
やがて彼は病棟の一番の問題患者ビルと向き合うことに成功。
周囲の理解も広がっていくのですが、権威をコケにしたおふざけが過ぎて、学部長からは退学を言い渡されてしまいます。
型破りな天才はいつも社会からはみ出してしまうもので、この話も、オーソドックスな展開だと言えなくはない。
しかし、医者からではなく患者から医の何たるかを教わったという、彼の動機こそは尊ばれてしかるべきものでしょう。
無駄に高額な医療費。患者の処置よりも事務手続きを優先する血も涙もない医療現場の傲慢さ。保険会社の取り分のせいでばかにならない健康保険料。米国の医療のひずみが明らかにされますが、日本とて人ごとではない事態です。
やがて、アダムスは無料の医院を構想。そこには滑り台や遊具も備わった楽しい施設。医者と患者は対等で、運営はボランティアに。彼の途方もない夢はかつて知り合った仲間たちの助力を得て実現することに。今でいうならNPO法人みたいなものでしょうね。
ただし、その奉仕の病院の運営もけっして楽な道のりではないです。
人を疑うことを知らないアダムスにほだされたばかりに、痛ましい事件が起こってしまいます。
そこから再起するアダムスのエピソードもなんとも美しいものですが、人はこころを病むと同時に、また自分で癒す能力をも身に着けているのだと信じられます。ラストにも彼の医者生命を揺るがす関門が立ちはだかりますが、そこで権威をものともせず大口舌をふるう姿がなんとも頼もしい。
この物語は医学の権威に変革の風を吹き込もうとする男の信念を描いた、事実に基づくストーリー。ただし、学生時代に焦点をあてているので、ただの反抗的な若者を描いた青春ものの域を出ていないようにも感じてしまいます。
むしろ卒業してから、プロフェッショナルとして活躍する実在のアダムスがどのように取り組んだかが知りたいですね。その事実は現存しているご本人が証明してくれているので、ドラマにする必要はないといえばないのかもしれませんが。
監督は「ライアーライアー」のトム・シャドウイック。
共演はダニエル・ロンドン、モニカ・ポッターらほか。
(2011年1月30日)
パッチ・アダムス トゥルー・ストーリー - goo 映画
【追記】
テレビで知りましたが、現在、パッチ・アダムス氏ご本人が来日中とのこと。
三歳から五歳まで日本に滞在されていたそうで、親日家なんだそうです。
ロビン・ウィリアムズ主演作、1998年アメリカ映画「パッチ・アダムス」(原題:Patch Adams)は、彼が精神科医に扮した社会派ドラマ。下ネタや親父ギャグが多いのが少々難点ですが、ままこころが温かくなる人間のふれあいを描いた感動作です。
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1969年の冬。
自殺癖があって職をなんども変え、精神病棟へ入院したハンター・アダムスはジョークを飛ばし、患者たちを笑わすことに生きがいを見出す。奇妙な質問ばかりして周囲からイカレじじい扱いされている老人アーサーと意気投合。彼からパッチ(直すという意味あい)というニックネームを与えられる。
患者を治すことに喜びを見出したアダムスは、二年後には遅まきながら医科大に進学。まだ臨床に参加できない一年生でありながら、病棟に紛れ込み、病棟の患者の前で道化を演じて笑いを巻き起こす。
名前ではなく記号のように呼ばれる患者。臨床でなく暗記ばかりの勉強。
アダムスの前の態度に異を唱えるのは、厳格な医学長や優等生肌の女学生フィッシャー。しかし馬鹿を演じても頭の良いアダムスは成績優秀。お遊び気分のアダムスをよく思わない、生まじめな学生たちの言い分もわかります。彼らだって真剣なのです。
やがて彼は病棟の一番の問題患者ビルと向き合うことに成功。
周囲の理解も広がっていくのですが、権威をコケにしたおふざけが過ぎて、学部長からは退学を言い渡されてしまいます。
型破りな天才はいつも社会からはみ出してしまうもので、この話も、オーソドックスな展開だと言えなくはない。
しかし、医者からではなく患者から医の何たるかを教わったという、彼の動機こそは尊ばれてしかるべきものでしょう。
無駄に高額な医療費。患者の処置よりも事務手続きを優先する血も涙もない医療現場の傲慢さ。保険会社の取り分のせいでばかにならない健康保険料。米国の医療のひずみが明らかにされますが、日本とて人ごとではない事態です。
やがて、アダムスは無料の医院を構想。そこには滑り台や遊具も備わった楽しい施設。医者と患者は対等で、運営はボランティアに。彼の途方もない夢はかつて知り合った仲間たちの助力を得て実現することに。今でいうならNPO法人みたいなものでしょうね。
ただし、その奉仕の病院の運営もけっして楽な道のりではないです。
人を疑うことを知らないアダムスにほだされたばかりに、痛ましい事件が起こってしまいます。
そこから再起するアダムスのエピソードもなんとも美しいものですが、人はこころを病むと同時に、また自分で癒す能力をも身に着けているのだと信じられます。ラストにも彼の医者生命を揺るがす関門が立ちはだかりますが、そこで権威をものともせず大口舌をふるう姿がなんとも頼もしい。
この物語は医学の権威に変革の風を吹き込もうとする男の信念を描いた、事実に基づくストーリー。ただし、学生時代に焦点をあてているので、ただの反抗的な若者を描いた青春ものの域を出ていないようにも感じてしまいます。
むしろ卒業してから、プロフェッショナルとして活躍する実在のアダムスがどのように取り組んだかが知りたいですね。その事実は現存しているご本人が証明してくれているので、ドラマにする必要はないといえばないのかもしれませんが。
監督は「ライアーライアー」のトム・シャドウイック。
共演はダニエル・ロンドン、モニカ・ポッターらほか。
(2011年1月30日)
パッチ・アダムス トゥルー・ストーリー - goo 映画
【追記】
テレビで知りましたが、現在、パッチ・アダムス氏ご本人が来日中とのこと。
三歳から五歳まで日本に滞在されていたそうで、親日家なんだそうです。