陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

映画「ぼくの大切なともだち」

2016-02-27 | 映画──社会派・青春・恋愛
2006年のフランス映画「ぼくの大切なともだち」は、中年男性ふたりの友情の物語。
日本人でこれをやるとすこし女々しく思われるか、からきしギャグにされるかなのですが、フランスでやるとこうもセンス良くなるのはどうしてなのでしょうね。

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骨董品の買い付けに奔走する美術商のフランソワ・コストは、なじみの収集家の葬式に出席し、人生の最期に参列者の少ないその身の上を思い、我がことのように振り返る。
ある競売での帰り、乗り込んだタクシーで物知り屋のドライバー、ブリュノ・ブーレーに話しかけられる。自身の誕生パーティーが催されるとあって気が急いたフランソワは邪慳にあしらってしまう。しかし、ギャラリーの共同経営者はじめ仕事仲間から、葬式には誰も来ないという事実を突きつけられたフランソワは、勢いあまって、競り落とした壺をかけて親友を紹介するという賭けに乗ってしまい…。

さっそく思い当たる知人をリストアップし、友情を確かめようとつぎつぎに接触するフランソワですが、金と物とでつながってきた彼の人間関係は冷たいものばかり。ついには街中で見かけた仲の良い友人紳士に友情の秘訣を聞き出そうとしたり、セミナーに参加するありさま。

そんな折、反抗期の娘と同乗したタクシーでのいさかいから、フランソワはあのタクシードライバー、ブリュノと再会。
ブリュノは極度のアガリ症でクイズ番組の予選をなんども落選した身。ところがフランソワや動物に対しては気さくに触れあうことができるわけです。収集癖では趣味が共通するブリュノに興味を抱いたコストは、彼に密着し人と仲良くなるコツを学ぼうとします。そのレッスンすら金で払おうとし、そもそも親友をつくたい根拠が壺目当てというのが不純なことこのうえないわけです。

ブリュノは掛け値なしにフランソワと真の友達になりたいと願っているのですが、ブリュノはその誠意にすら気づかない。恋愛ものに置き換えると、側にいる友人を愛しているのに、その片想いを応援してしまうというパターンなんですね。

友情探しを続けているうちに、次第にブリュノを友に認めたフランソワ。
しかし、あいかわらず金で友情を買おうとする金満体質や見栄っ張りは変わらず。賭けの相手である共同経営者に発破をかけられて、ブリュノの友情を試すために無謀な作戦を持ちかけたりもします。フランソワの下心を知ってしまったブリュノの行動がなんともいえないですね。

ブリュノの落ちこみ具合は半端ないのですが、その裏には、深い事情があることを知り驚いてしまうフランソワ。彼はそのとき、みずからの思いやりのなさが招いたせいで資金繰りの危ういギャラリーも失いかけていました。この後、予想されたように二人はふたたび友情を結びあうわけなのですが、その演出がなんともこころ憎いといいますか。友情を利用していたフランソワに、逆にブリュノが助けを求めざるを得ない。そのとき、ブリュノは裏切られた苦言を吐きはするのですが、それを乗り越えていく。ブリュノもフランソワとの交流を通じて成長しているのですね。
一年後に再会したフランソワとブリュノがたたずむ橋の上の風景は、あたかも印象派の一枚を観ているかのように美しい。

とうしょはいじわるなように見える女性のギャラリー経営者も、じつは粋な役回りをしてくれます。男性同士の友情を描いてはいますが、女性がご覧になってもじゅうぶん楽しめる内容です。美術ファンならなおさらのこと。

友だちに優劣をつける、金品で友情を買おうとする、自分にとって何をしてくれるかで友情を試す──いずれもありがちな歪んだ友情ですね。「星の王子様」の引用などもありますが、気の利いた台詞回しだけで納得させる感動作には終わっていません。

監督は「仕立て屋の恋」「髪結いの亭主」のパトリス・ルコント。
主演は「画家と庭師とカンパーニュ」のダニエル・オートゥイユ。「戦場のアリア」のダニー・ブーン。

観終わったあとに気持ちがあたたかくなれる映画です。

(2011年5月28日)

ぼくの大切なともだち - goo 映画


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