陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

映画「LOVERS」

2008-10-27 | 映画──SF・アクション・戦争


日曜洋画劇場で観ました。
北京オリンピックの演出家として名を馳せた巨匠チャン・イーモウ監督(関連記事はこちら)がが放つ渾身のラブストリー。〇四年作です。
ロマンチックなタイトルなのですが、中身はなかなかハード。のっけから、息も吐かせぬハイパーアクションの連続。しかし、ただの派手な剣戟ものと侮るなかれ。(いや、甘く見ていたのは私だったのだが(苦笑))筋書きもなかなか練られていると感じた。途中までは読めたのですが、さすがに最後までは見通せなかった。

ネタバレすると面白みが半減するので避けますが、かいつまんであらすじを。
時は唐の時代。腐敗政治に反感をいだく抵抗勢力飛刀門の取り締まりにあたった官吏の金(ジン)と劉(リウ)は、遊郭に身を寄せていた盲目の少女、小妹を捕らえる。彼女は飛刀門の前頭目の娘。金は劉と共謀して、小妹をだまし敵の根城を突き止めて手柄をたてようと画策するが…。

視線を揺るがさずに刃の嵐をかわす小妹ことチャン・ツィイーの演技力がすごい。金城武は正直言ってあまり好きな俳優じゃないが、軟派で気まぐれだけどいざとなったら本気になる熱い男をよく演じていたかも。
ストーリーは小妹の正体などはなんとなく見えていたのですが、さすがに金が小妹と逃避行のすえに飛刀門の本拠地に入ってからは、数分ごとに物語がひっくりかえっていくので、目が離せなくなりました。
映像美と歴史ロマンだけが賛美される日本映画とは違って、高い芸術性を誇りながらも、エンターテインメントとしての面白さを失わない姿勢に好感がもてますね。

さいしょは遊郭の鼓打ちのシーンなどに感嘆したものの、あまりにそらぞらしいワイヤーアクションと、明らかにCGだとわかる不自然な刀の動きに、半ば飽き気味で視聴をやめたくなりました。が、色彩の魔術と、官能美(といっても、そんなにいやらしくないです)にやられました。女一人、男二人というありきたりな三角関係ながら、三者三様の裏の顔をもってお互いをだましあう。めくるめく愛憎劇、はたして最後に勝つのは誰の愛か。しかし、三人ともなにかを失ったり、棄ててしまうのですね。いきなり、あれが蘇ったのはご都合主義にしか思えないけれど。

原題は「十面埋伏」とあり、三国志にも登場する計略のひとつ。四方八方に敵が待ち伏せている状態を指す。邦訳で甘いラブドラマを喚起させるものに変えたのは、筋を読まれないためだったのでしょうか。
竹林によく映える目の醒めるような緑のアオザイや、隙き間の多い編み笠、黄金いろの銀杏の林と対比される青い武人服。とにかく衣装のデザインと景色の色彩美が融けあって、ひたすら美しい光景がくりひろげられる。衣装担当のワダ・エミさんは、黒澤明の『乱』をはじめ、数々の舞台衣装を手がけたデザイナー。チャン・イーモウ監督の前作「HERO」も担当しています。

難をいえば、あまり音楽が印象に残らなかったことでしょうか。映像美と派手なアクションに気をとられていたせいかも。
あと、金城武の吹き替えはどうにかしてほしかった。本人の声とギャップありすぎですって(苦笑)


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