陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

映画「ビューティフル・マインド」

2014-11-22 | 映画──社会派・青春・恋愛
2001年のアメリカ映画「ビューティフル・マインド」(原題 : A Beautiful Mind)は、ある天才的な数学者が辿った数奇な運命を描いた感動作。

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プリンストン大学院数学科の学生ジョン・ナッシュは、奇才ぶりがめだち、授業にも出席しないまま、自己の理論の完成に没頭。その論文が認められ、ウィーラー研究所で職を得たナッシュは、ある日、パーチャーという諜報員から極秘任務を依頼される。それは、ソ連が米国に隠した核ミサイルの在処をめぐる暗号の解読作業だった。
平凡な講師の仕事と、スパイ活動の二重生活をこなすうちに、教え子の美しい娘アリシアと結婚。しかし、身の危険を感じるようになり…。

前半までは、よくある天才科学者が何げなく荷担した研究活動が悪用されて命を狙われる類の陰謀サスペンスかと思っていたのに、事態は中盤から急展開。
ナッシュがスパイ活動から足を洗いたいと申し出たところ、精神病院に拉致監禁されてしまう。そこで、バーチャーという男も、学生時代の親友だった男すらも幻覚だったと教え込まれ、絶望の淵に落とされてしまいます。

はたして彼の過ごした前半生は、つくりごとだったのか? 正常なのはナッシュなのか、それとも妻も言いくるめられて騙そうとしているのか? 視聴者は残り30分を迎えるぐらいまで掴みにくい。それほど、虚と実があざやかに入れ替わってしまいます。

しかし、このドラマの根幹にあるのは、人智を超えた才能をもったがために他人とは違う世界へトリップして遠回りの人生を歩んだ男の苦悩と、それを献身的に支えつづけた妻の愛。人の倍以上の頭脳の持ち主ながら、ハートは人並みの半分しかない主人公が、美しい愛情を持つ女性と巡りあうことで、人間らしい精神を取り戻す。

長年の苦節を共にしてついに晴れ晴れしい壇上にあがった、ナッシュ博士が妻に贈る感謝の言葉も重く響くのは、廃人に近い生活から立ちなおさせたアリシアの苦悩を追っていたからですね。
アメリカ人女性は我が道を往くというタイプが多いのに、こういう扱いにくくなった夫を辛抱強く励ましていく良妻を描いたものは珍しいですね。

モデルになったのは、実在する数学者でノーベル経済学賞を受賞したジョン・ナッシュ。ただし、彼と妻は実際は離婚したあと紆余曲折を経て寄りを戻したようで、映画のエピソードはある程度フィクションと捉えてよいでしょう。そりゃ、こんな旦那さんだったら、いくら忍耐強い奥さんでも離婚したくもなるわ(断言)。

夫婦の愛情を描いたものとしては良作ですが、統合失調症についてはやや誤解を招くような過剰な演出もあり、精神病への正しい理解を促す効果はあまりないですね。

主演は、ラッセル・クロウ。「グラディエーター」ではマッチョな戦士を演じた男が、気弱で神経質な文系青年の老年期までみごとに演じています。
妻のアリシア役には、「地球が静止する日」のジェニファー・コネリー。
監督は「アポロ13」「ダ・ヴィンチ・コード」の監督、人気ドラマ「24 -TWENTY FOUR-」のプロデューサーでも知られるロン・ハワード。

第74回アカデミー賞では作品賞、監督賞、助演女優賞、脚色賞を、第59回ゴールデン・グローブ賞では最優秀作品賞、最優秀主演男優賞、最優秀助演男優賞、最優秀脚本賞を受賞。

(2010年3月28日)

ビューティフル・マインド(2001) - goo 映画

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