陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

日本映画「たそがれ清兵衛」

2009-06-29 | 映画──社会派・青春・恋愛
ひさしぶりに、おもしろい邦画を見せていただきました。
金曜ロードショーの「たそがれ清兵衛」

正直いいますと「全ての人の胸を深く打つ日本人の心の美しさを描いた名作」というコピー文に、またまたうさん臭さを感じて斜め視聴してたのですが、過ちだった。

幕末のとある藩。妻を介護むなしく病でうしなって、育ち盛りの娘ふたりと痴呆症の老母を養うため、慎ましく生きる下級武士、井口清兵衛が主人公。
「たそがれ清兵衛」は、付き合いの悪い彼を、同僚が罵ったあだ名。しかし、彼は家族の絆を大事にし、生活費の工面と亡妻の医療費として借りた金の返済のため内職に励む日々。自分の身なりにも気をつかわないのでけむたがられていますが、気にもしていません。
その彼が親友の妹で幼なじみの朋江を、暴力夫から救ったことから、ふたりは親しくなる。
先夫と離縁した朋江は清兵衛を慕っているので嫁ぐ意思があったのですが、苦しい生活を強いるのを良しとしない男は、それを受けない。

いっぽう朋江を救った際に、剣の達人としての腕前を露呈してしまった清兵衛は、家老から上意討ちを命じられる。
断りきれなかった清兵衛は、相手を逃がすつもりで話を聞く。その相手、余吾善右衛門は、妻を亡くし藩のために身を粉にして働いてきたのに裏切られたとこぼす。同情した清兵衛だったが、けっきょく果たし合いは行われ、かろうじて勝った清兵衛だった。
その後、朋江を娶るも、幸せは続かない。清兵衛は官軍の銃弾に倒れて亡くなってしまい、新しい世を見ることもなかった。彼のもと同僚たちは、渡世術に長けていて役職を得て生き延びた。

この主人公の生き方がいいですよね。
論語を諳んじはじめた娘には、これからの時代学問が必要だと説く。彼は維新の志士ではないですが、時代が変わることを知っていたのではないでしょうか。
じつは私は、時代劇で頻繁に採り上げられる幕末の話が、嫌いです。
若者が日本を変えた時代だったけれど、謀略や血なまぐさい事件が多かったですよね。
こういう名もない良識的な人もいたのかもしれない。

主演の真田広之の殺陣にも注目。宮沢りえとの共演は、NHK大河の「太平記」を思い出しますね。

(〇九年六月二十六日)

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