荒川静香VS浅田真央──秘められた女王の戦い

2011年１月25日本日、とても興味深い番組がありました。
週末でなければこの時間帯にテレビの前に座ることのほとんどない管理人を、とどまらせるにじゅうぶんなその番組はTBS系の「解禁！」という、番組なのでした。

特集されていたのは、ひとりのアスリートと、ひとりの女優。
前半部の主役は、五年前のトリノ五輪金メダリスト・女子フィギュアスケーター荒川静香さん。現在は解説者として華々しく活躍されている彼女の、その大舞台裏側に迫るというものでした。

管理人は、フィギュアスケートに興味を持ちはじめたのがまだ三年にも満たないので、その頃の荒川静香選手をついぞ知りません。彼女がこの快挙を成し遂げたのが、じつに24歳。
安藤美姫選手がまだ22歳（ブログでしょっちゅうベテランとお呼びしておりますが、大学新卒と同じ世代、じゅうぶんに若いですよね）、浅田真央選手は20歳、そして村上佳菜子選手は16歳。現在のフィギュアスケート界の若年齢の台頭にはめざましいものがありますが、そもそも荒川選手のこの結果は人間として円熟したと同時についてきたものだといえましょう。

トリノ五輪の代表三枠をかけた2005年のシーズン。荒川選手は、のちに五輪出場者となる村主章枝選手、安藤美姫選手らとポイントは引き離されて、日本女子では四番手でした。残りの一枠にすべり込むには、その年のGPシリーズでめぼしい活躍を残す必要があります。
その荒川選手の前に立ちはだかったのが、当時、弱冠十五歳にして国際大会シニアデヴューを果たしてしまった、あの天才少女・浅田真央選手。十二歳で公式戦で三連続三回転ジャンプを決め、あっさりと優勝してしまった真央選手。皮肉なことに、この九歳下のライバルと同じ大会に顔合わせすることになります。中国杯では真央選手が二位、荒川選手が三位。フランス杯ではなんと荒川選手が三位に甘んじたのに、真央選手は初優勝。そしてその勢いのままに真央選手は、GPファイナル初出場にして初制覇を成し遂げてしまったのです。世に言う真央フィーバーのはじまり。世界一になった真央選手をぜひとも五輪へ、という声は日増しに強まり、政界にまで及ぶところとなります。
もしそれが実現したとしたら、金メダリスト荒川静香選手は誕生しなかったでしょう。

しかし、荒川選手は確実に、自分でチャンスをものにしたのです。
五輪代表入りが決まると、真央選手にあって自分にないものはなにか、と必死に考えます。その答えは、演技を楽しむ気持ち、そして自分らしさを見失わないこと。トリノ入りした荒川選手は、ルール変更で得点源に結びつかないことを承知の上で、自身の十八番であるしなやかなイナバウアーを披露。彼女の演技はまさにその燦然と輝くメダルの色にふさわしいものでした。

荒川選手の変化を促したものは、浅田真央選手との対決、それだけではありません。
五輪直前、練習で訪れたアメリカで単身、移動中に飛行機のアクシデントに見舞われました。後輪のトラブルであわや胴体着陸という危険。機内はにわかに殺気立ち、荒川選手もその時ばかりは死を覚悟したそうです。しかしながら、この経験が、彼女に今後、一瞬一瞬を無駄なく悔いなく生きよう、という決意に向かわせるのです。

真央選手と比較された際に、思わずコーチに喰ってかかるような23歳のスケーターが、かくもみごとに成長するものか。現在、しっかりとした解説で人気を博している静香さんからは想像もつかない過去の映像でした。今季のGPシリーズで不振にあえぐ浅田選手らを解説で力強く励ましていた彼女とは、その過去のすがたは別人としか思えません。
金メダルという快挙のみならず、荒川選手の生き様そのものが、後続のフィギュアスケーターたちに激励を与えることは言うまでもないでしょう。今後ともご活躍を期待しております。

番組の後半は、女優・藤原紀香さんの下積み時代の苦労話。芸能界入りを理解してくれなかった父との和解、阪神大震災で亡くした友人たちへの思いなどが語られていました。芸能界もフィギュアスケート界同様、日増しにアイドルの低年齢化が浸透しております。そのなかで、25歳にして念願の女優デビューを果たした紀香さんのキャリアは、かなり遅咲きな方ですよね。現代、かっこいい女性の代表格である真矢みきさんにしたって、数年前は無名に近い存在だったようです。

大人かわいいというスタイルが流行るいっぽうで、円熟した品のいい女性としての美しさが求められる時代になったのではないか、という気もします。

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