陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

大学入試センター試験の大混乱(前)

2012-01-22 | 教育・資格・学問・子ども
もっと大騒ぎしてよいはずなのに、意外と報道が落ち着いていたように感じるのは、法人側の手落ちを広めたくないのか、受験生の心象を慮ってなのか、それとも昨年のネットカンニングのばか騒ぎを反省してなのでしょうか。たぶん二番目だと信じたい。

大学入試センター試験の第一日めにあった重大なミス。いくらなんでも、ありえない、と思いました。自分が受験生当人だったらなおのこと、その保護者や担任教師だったら、なおさらやりきれないですね。でもセンター試験って、例年いろいろ問題がもちあがっているんですね。

事件(というほどの事件でもないけれど)は二重に起こりました。
ひとつは、社会の選択科目の一部が配布されていなかったことで、受験生に動揺がひろがったこと。のちほど配布された受験生のために、教室ぜんたいで終了時間をずらすなどの措置がとられたようですが、そのため、逆に解答時間が延びて得をした受験生もいたり、また、他の教室とのタイミングのために休憩時間を大幅に削られたりしたようです。これは明らかに試験の公平性を欠きますね。

さらにもうひとつは、リスニングのICプレーヤーの配布数が足りなかったこと。毎年、故障は聞きますけれど、最初から無かったというのは…。東北で被災地への配慮から試験会場を大学外にしたのに、うっかり通年どおりと思って、ICプレーヤーを会場へ運搬していなかったそうで。担当者さんも被災されて心労が絶えなかったのでしょうかと。

社会の配布ミスのほうは、そもそも今年から新しく採用された社会科目の選択方式が、試験官がわに周知徹底されていなかったのが問題であったとか。私も去年の春か夏あたりかにこの変更をつたえる新聞記事を読んだのですが、いまいち、よく分かりませんでした。配布の遅れではなく、あきらかにうっかりの配布忘れ(試験開始後、受験生によって指摘された)があったということは、共通一次世代の受験エリートが多い教官たちも理解できなかったのでしょうか。現場の試験官からは、机の選別シールに沿って配布するため時間がかかりすぎるという苦情も出ています。といいますか、Wikipediaをみますと、ここ十年もしないうちに、教科をころころ改変しすぎ。

社会の教科にかぎって混乱をきたしたのは、試験問題が「地理歴史」と「公民」の二教科で分冊されているから。「地歴」のほうは、「日本史」「世界史」「地理」がAとBの二種類の計六科目、「公民」のほうは「現代社会」「倫理」「政治経済」「倫理、政治・経済」の四科目。従来は「地歴」と「公民」からの一科目ずつ最大二科目受験しかできなかったのですが、これを同一教科からも選択できるように配慮したものらしい。その理由は、近年の大学生が歴史や地理の素養にちじるしく欠けているためであるとか。しかし、じっさい、地歴から二科目選択なんて猛者はいるのでしょうか。東大や京大狙いならともかく。(私も日本史と世界史で受験しようともくろんでましたが、高三の夏にはあきらめました。高校の授業で第二科目の世界史の履修時間が足りずに、教科書を終われなかったからです)「地歴」と「公民」から一科目ずつの受験生には、二冊配布されるべきだったのに、「地歴」しか配布されなかったのですね。

理科は一冊であるのに、なぜ社会だけ二分冊にしたのかは、問題数が多かったからかもしれませんが。従来は二日に分けての試験だったのを、同日に、60分ずつの実施に変更(間の10分の休憩時間で回収する)。二科目の受験者は、問題をその場で見て、「第一解答科目」「第二解答科目」に選ぶことができます。大学によってはどちらか高得点なほうではなく、第一解答科目の成績だけを採用する場合もあるので、今回の一件で、ほんらい第一解答科目にしたいのが公民だった受験生は、第二に回されて泡を食わされたことになりますね。そもそも130分で二科目解くというこの方式、第一解答科目を早く解いてしまったら、第二のほうへ時間を回せるため不公平という声もかねてからあがっていました。歴史のような暗記科目はもともと興味があってしっかり勉強していれば九割近く得点できますから、時間が余るんですよね…(歴史オタクのたわごと)。第一解答科目は最初の60分で答案用紙を回収し、その後、二科目めの答案用紙を配布する手筈になっていますけど、(問題用紙にチェック残すなどして)二科目めも解こうと思えばできなくはないのでは。

ちなみに問題用紙は最初に二教科ぶん渡すのに、解答用紙は別々に回収するのは、一科目受験で済む人がわざと二科目受験を選択して、まるまる120分で一科目だけ解こうとする不正をふせぐためでした。なぜ、そうするかが周知徹底されていなかったんでしょうかね。

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