陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

氷上のサバイバル最終章

2009-12-06 | フィギュアスケート・スポーツ
氷上には魔物が棲んでいるという解説者の常套句がほんものになったとしかいいようがない、フィギュアスケートグランプリファイナル。三日目の男子シングルフリーには、大きな番狂わせがありました。

前日のショートプログラムで、一位に躍り出たのは高橋大輔選手。五輪のことを考えず無心になって楽しく踊り切ることだけ考えたという彼は、この日いちばんの情感たっぷりな演技と完璧なジャンプで熱演。とくに怪我のもととなったトリプルアクセルをしっかりと終えて、完全復活をアピール。得点も世界歴代二位の89点超えでした。次点のライサチェクに僅差で迫られていますが、誰もが彼のメダルを疑わなかったはず。

しかし残念ながら、フリーでは五位に甘んじました。序盤のジャンプでおおきく転倒したあとは、体勢がととのわず決めるところでまったく決らない。それでも、絶望的な大けがからよく復活したものだと思います。
五輪出場枠へいちばん乗りを果たしたのは、日本人どうしでの金銀争いも期待された織田信成選手。今年のフリーではおなじみのチャップリンメドレーで、愛嬌たっぷりのステージ。着氷が美しい、抜群の安定感を誇って二位に。優勝は、ライサチェクでした。

男子シングルで微笑ましかったできごとが、ふたつ。
ひとつは織田選手の五輪内定が決定した直後、高橋選手がお祝いの拍手をしたことですね。前回のトリノ五輪では採点ミスで結果がくつがえってしまった因縁の相手。互いの健闘を称えあうスポーツマンシップは、気持ちがいいですね。
もうひとつは、六位だったチェコスロバキアのトマシュ・ベルネル選手。序盤でジャンプをミスしてしまい気落ちしている彼を、会場が拍手で後押しした場面。いまだ経済の不安定を抱える東欧出身の選手では、米国や日本のように環境が恵まれていないはず。友好的な日本の国民性を裏付けるものでした。

注目の女子シングル。
ショートプログラムでは、安藤美姫選手がモーツァルト作曲「レクイエム」を、荘厳なオーラを漂わせながら舞います。自身、不満点はあったとしながらも、評価はキム・ヨナ選手のボンドガールを抑えてトップに。
フリーではなんとも艶めいたコスチュームで、クレオパトラを演じます。直前のヨナ選手のできばえを見計らって、安全路線で決めたというジャンプ。しかし、序盤の手をついたミスが響いたせいか、その後きっちり跳んでも、しなやかな表現力でアピールしても二位に。ヨナ選手に優勝はさらわれてしまいましたが、ファイナル進出で初の表彰台そしてバンクーバーへの内定も決めてくれました。おめでとうございます。

鈴木明子選手は、フリーでは大躍進。技術点では安藤・ヨナの両選手を上回る高得点をジャッジから引き出して、堂々の三位。遅咲きの二十四歳は、ファイナル初出場にして、初メダル。五輪出場もみえてきただけに、今後にも期待したいですね。

昨年の浅田真央選手の劇的な逆転優勝のようなドラマはなかったですが、挫折から地道な努力を積み重ねて這い上がってきた選手の復活めざましい今年の舞台。楽しませていただきました。
朝日放送の中継で、リハビリ中の高橋選手や、ボロ泣きしている安藤選手の映像が流れたのですが、胸が痛みますね。ほんとうによくぞここまで、がんばってくださったと思います。

今夜はこれから、エキシビジョンですね。

【参照】
テレビ朝日公式サイト フィギュアスケートグランプリシリーズ世界一決定戦2009

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