陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

映画「三人の名付け親」

2011-03-03 | 映画──SF・アクション・戦争
「ミスター西部劇」の異名をとる名匠ジョン・フォード監督と、ジョン・ウェイン主演で贈る傑作西部劇といえば、1939年の「駅馬車」や49年の「黄色いリボン」。
そのコンビが贈る1949年の「三人の名付け親」(原題 : 3 Godfathers)では、「駅馬車」のような追われる身での荒野決死行をみせますが、「黄色いリボン」の大尉役とは反対に犯罪者という役どころのジョン・ウェインに注目です。


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アリゾナのある銀行を襲撃した三人の男、リーダー格のボブことロバート・ハイタワー、スペイン訛りのあるピートことペドロ、そしてキッドことウィリアム・カーニー。お尋ね者になった彼らは、人足の途絶えた砂漠に逃げ込んだ。
強烈な太陽を浴びながらの逃避行は死活を極め、しかもキッドは肩を撃たれていた。馬に逃げられ水を失った三人は砂漠の中継地点に設けられた貯水タンクをめざすが、追っ手の保安官パーリー・スイートの手が回っていた。

保安官たちの裏をかくために北のタンクに辿り着いたはいいが、そこには身重の身体で馬車に残された女性しかいなかった。やがて、産褥で母親は亡くなり、後を頼まれた赤子を抱えながら、三人は荒野を乗り越える決心をする。

この三人、小悪党とはいえ互いを支えあい、水を大事にしながら砂漠を渡る。どこか憎めないキャラクターです。赤子を託されたことで、ミルクの与え方すら知らない三人の父親が右往左往するさまが、なんとも微笑ましい。若手のキッドは、それまで傷病者だからといちばんに水を奪っていたのが、赤子のために譲る成長ぶりを見せます。

しかし、水も食糧もない砂漠を歩き通すのは、屈強な男でも過酷なこと。キッドは傷の悪化で倒れ、ピートも足を折って歩行不能に。ピートはボブを目立たせるために都合よく離脱させられた気がしないでもないけれど。
赤子をいたわりながらも単身ニューエルサレムヘ向かうボブ。しかし、彼を追ってきた保安官パーリーは、新婚の姪を殺されたものと誤解し、怒りに燃えて…。

その後のボブの処遇をめぐる裁判は、なんとも人情味あふれるもの。人間の善意を描ききった名画であります。とちゅう、なんども聖書を巡るシーンがあり、赤子を抱えての旅が、いわば三人にとっての贖罪となっているのですね。
パーリーとの和解のシーンなどを説明的に台詞でやりとりさせるのでなく、行動でなんとく匂わせる演出がとてもうまいですね。
ジョン・ウェインは、悪党をやらせてもどこかかっこいいですし、女性に対する態度や赤ん坊への慈愛から察するに、なんとも好感がもてるいい男ぶり。

助演をつとめるのは、「黄色いリボン」でもウェインと共演した、フォード監督の盟友の息子ハリー・ケイリー・ジュニア。そして「アパッチ砦」で共演だったペドロ・アルメンダリス。

原作はピーター・B・カイン。
ハリーの父親が主演した1919年の幻の無声映画「恵みの光」をはじめとして、これまでにも何度か映画化されていますが、舞台を現代に変えたものとしては1987年のアメリカ映画「スリーメン&ベビー」や、2003年の日本アニメ「東京ゴッドファーザーズ」が、よく知られているでしょう。

(2010年2月11日)

三人の名付け親(1949) - goo 映画

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