陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

映画「われらの歪んだ英雄」

2010-07-12 | 映画──社会派・青春・恋愛
1992年の韓国映画「われらの歪んだ英雄」は、学校という閉鎖的空間でおきた縦社会構造に闘いをいどんだ少年とその挫折を描いたもの。しかし、この物語はその敵方の少年とのダブルヒーローともいえそうですね。

1960年、ソウルから田舎の小学校に転校したビョンテ。彼の所属する五年二組は、オム・ソクテという級長が顔を利かせていて、担任すらも口出ししない。前の学校で優等生だったビョンテは、なんでもかんでも級長の言いなりというクラスの体質に反発。孤独な闘いを挑むが、やがてソクテに屈服し、クラスを支配する暗澹たる空気になじんでしまう…。

このソクテというリーダー格の少年、ビョンテには一目置いていて、それなりにいい友だち関係になるのではと思わせる場面もあります。

どちらかというと酷いのは、教師たちの方。ソクテの本性に気づいて先生に報告するも、先生がたまったく聞く耳もたず。むしろ、ビョンテが悪者に。さすがにこれではビョンテも、こころ折れてしまいます。
しかし、空気が変わったのは、六年生になって、急進的な思想の新しい担任キムが赴任してから。彼はソクテが替え玉試験をして、成績をごまかしていたからくりを見抜きます。

そのあとのクラスほぼ全員が、てのひらを返したようにソクテに反逆する場面。かえって、ソクテが可哀想にすら思いますね。
その二十年後、五年のクラス担任だった先生のお通夜のために、集まったかつての同級生たち。

はたしてソクテは登場するのか。かつての仲間たちの注目が集まりますが、そこは観てのお楽しみ。
学校という小さな世界を扱っていますが、当時の大統領の独裁を批判したキャンペーンとも重なっていて、監督の政治諷刺の映画だとみてとれます。

VHSの解説には、「多発するいじめの問題、少年犯罪、学校崩壊を救う答えがこの作品の中にある」と紹介されていますが、過大評価ですね。じっさい、キム先生のように、鞭打って生徒を立ち直らせるなんて、いまの体罰にうるさい世の中じゃ、できっこありません。

鉄橋で走ってくる列車を前に根比べをするシーンは、どうみてもスタンド・バイ・ミーごっこ(笑)
韓国も日本も、学校事情ってそう大して変わらないものだな、と実感した次第。

監督はパク・ジョンウン。
主演は「シュリ」の韓国のトップスター、チェ・ミンシク。


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