陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

映画「レインマン」

2011-06-25 | 映画──社会派・青春・恋愛
1988年のアメリカ映画「レインマン」は、自閉症の兄と欲得づくめの弟との奇妙な兄弟愛を描いた話題作。映画ファンの間でも根強い人気を誇っていますね。

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1980年代後半。
中古車の販売会社を経営するチャーリー・バビットは、資金繰りに行き詰まり、愛車を差し押さえられそうになる。その折しも、資産家であった父が亡くなったという訃報が。
十代で家を飛び出して以来、音信不通だったチャーリーに遺されたのは、父の愛車一台と薔薇の庭木一本のみ。300万ドルの貯金は父の管財人である医師が管理し、その受取人は二十近くも年の離れた兄のレイモンドだという。

さて、初対面のこの相続人レイモンドは自閉症でまともに他人と意思疎通できない。それを知ったチャーリーは、なかば誘拐まがいで精神病院から連れ出し、レイモンドの保護権を楯にして、裁判で遺産の半分を奪う算段でいます。

レイモンドを側近くに置いておこうにも、扱いに苦慮してばかり。
ロサンゼルスの自社に戻らねばならないのに、飛行機が怖いと駄々をこね、何日もかけて大陸横断する羽目になります。さながらロードームービー。
兄貴に振り回されるうえに、会社の経営は火の車。チャーリーの苛立ちは最高潮に達し、不満をぶつけてばかり。本人にとってみたら同情したくもなるのですが、傍から見てたら、笑いがこみ上げるシーンですね。

レイモンドの特殊な記憶能力に活路を見出したおかげで窮地を脱し、おのずと兄弟仲も深まっていきます。このあたり、アメリカらしいというか、弟も現金といいますか。しかし、チャーリーが兄を病院暮らしに追いやった遠因に気づかされたとき、金目当てではなく、真の家族としてこころを通わせていくことになります。

ラストはけっしてハッピーエンドではなく、障害者のノーマライゼーションという立場からすれば腑に落ちない終わり方です。
じっさいにはわずか数日だけではなく、生涯、付き添いをする疲弊を考えますとこの物語のようにきれいに締められるわけではないでしょう。

ただ、自閉症に対する理解を深める映画、家族の愛に飢えていた男が肉親の情にめざめる映画としては、申し分なく楽しめる内容ですね。

監督はバリー・レヴィンソン。
レイモンドを演じた名優ダスティン・ホフマンの演技は、過剰なあざとらしさがなく、自閉症患者というものが健常者と区別しがたいために理解されえない部分をよく教えてくれます。トム・クルーズ演じる弟ともいいコンビで、ダンスシーンはほろりと来ますね。

今回が数年ぶり二度目の視聴だったのですが、内容がうろ覚え。初視聴の際はチャーリーの恋人が二また掛けてることと、ひどい弟だったという印象しかありませんでした。言葉遊びが効いていてしゃれた映画だったんだなと、いまあらためて感動に浸っています。忘れた頃に、観なおしたくなる名画のひとつです。

(2011年2月22日)

レインマン - goo 映画

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