陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

映画「私の頭の中の消しゴム」

2015-11-22 | 映画──社会派・青春・恋愛
2004年の韓国映画「私の頭の中の消しゴム」は、若年性アルツハイマーをあつかったラブロマンス。記憶障害の恋愛ものというのは古今東西多く話題に事欠きませんが、さて本作ではどう料理されているのやら。なお、これは日本のTVドラマ「Pure Soul~君が僕を忘れても~」(永作博美、緒形直人主演)のリメイクなんですね。

私の頭の中の消しゴム [DVD]
私の頭の中の消しゴム [DVD]ジェネオン エンタテインメント 2009-07-08売り上げランキング : 4388Amazonで詳しく見る by G-Tools


何かにつけもの忘れの多い社長令嬢のキム・スジンは、失恋での傷心旅の途中、コンビニで無精髭の男チョルスと出会う。買い物忘れをめぐってひと悶着あったチョルスのことをなぜか覚えていたスジン。
やがて、再就職した紳士服売場の会場に、建築家見習いチョルスが工事担当者として雇われる。ぶっきらぼうなチョルスに惹かれていくスジン。愛と優しさにめざめていくチョルス。二人は恋に落ちて、ほどなく結婚。チョルスは建築士として独立し、スジンもファッションデザイナーに。夫婦は幸せな新婚生活をスタートさせたが、スジンが若年性アルツハイマーを発症しているとわかり…。

チョルスを忘れ、自分のことですら、自分でわからなくなってしまうスジン。
忘却の沼から何とか抜けだそうとあれやこれやと手を尽くすチョルスの献身ぶりが涙ぐましい。しかし、記憶をつなぎとめようとすればするほど、二人はお互いに傷つけあってしまう。

合間に、チョルスとその母との愛憎関係も挿入されますが、あくまで主軸はこの二人の恋愛模様。スジンの記憶喪失につけこんだ昔の恋人の闖入で、二人の生活は破綻していく。そして、置き手紙を残したまま姿を消したスジン。チョルスが彼女を見つけたのは…。

ラストでコンビニを「ここは天国ですか」というシーン、なんとも切ないですね。
二人の恋はここからまたはじまるのでしょうか。きれいにまとまってはいるのですが、けっきょく、スジンが病気を克服したかどうかは明らかにされていないので、希望の兆しだけ見せた終わりでした。他人と関わりあうことがない孤独の場所の代名詞であるコンビニに、家族が総出でいたということは、これからの二人を周囲も支えていこうというサインなのではなかったかと。

監督はイ・ジェハン。
出演は素朴で愛くるしい笑顔の似合うソン・イェジンと、福山雅治に似て朴訥な感じが好印象のチョン・ウソン。

この若年性アルツハイマーを扱ったものとしては、渡辺謙主演の映画「明日の記憶」もありましたが、主演の演技力だけが魅力であったものの、筋書きとしては悲惨な境遇の主人公を興味本位で描いたという感じしかせず、あまりいい印象を持ちませんでした。精神や記憶の障害をあつかった映画のむずかしさを感じざるをえません。


(2011年9月20日)

私の頭の中の消しゴム - goo 映画


この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 松井秀喜のエッセイ『不動心』 | TOP | 日本映画「手紙」 »
最新の画像もっと見る

Recent Entries | 映画──社会派・青春・恋愛