陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

映画「おしゃれ泥棒」

2009-10-02 | 映画──社会派・青春・恋愛
1966年の映画「おしゃれ泥棒」は、「ローマの休日」の巨匠ウィリアム・ワイラー監督と、主演オードリー・ヘプバーンが贈る、ハイセンスな泥棒コメディ。
銀幕のヘプバーンは「ローマの休日」でしか知らなかったので、カラーの映画で見る彼女は、新鮮でした。この二年後の「暗くなるまで待って」でも、毛色の変わった役を演じているんですね。

本作の相手役は「アラビアのロレンス」があまりにも有名なピーター・オトゥール。
おしゃれ泥棒とあったのでファッション関係の話かとずっと思い込んでしましたが、原題はHow to steal a millionで、直訳すれば「百万ドルのせしめ方」

以下、ネタバレあり。


著名な美術コレクターのシャルル・ボネは、じつは天才贋作家だった。ひとり娘のニコルは、父の裏方稼業を快く思ってはいないが、父は聞く耳持たず。亡き父の遺品と称して偽のチェリーニのビーナス像を美術館へ、出品する。うっかり検査にでもかけられたら、偽造で父は監獄行き。
ニコルはたまたま、邸に侵入してゴッホの贋作を盗もうとしていたシモンの協力を仰ぎ、展示室から盗み出そうと画策する。

贋作であることを隠したまま盗みを依頼するニコルに、最初は渋るシモン。だが、傑作の誉れ高いビーナス像を巡って、アメリカの美術愛好家リーランドがニコルに婚約を迫る。
ふたりの男女はけっきょく、警護の網をかいくぐってまんまと持ち出しに成功。と、同時にニコルはサイモンにべた惚れ状態に。
…と、まあ、状況設定は違えど、ファーストコンタクトで反りの合わなそうな紳士と気どったお嬢様が、ひと冒険して相思相愛になっていく過程じたいは、「ローマの休日」とおなじ。ただ、こちら、コメディ要素がなかなか多かったですね。

百万ドルは保険金がらみかと思ったら、最後にひとひねりあり。
前半でほのめかされていた、サイモンの正体が明かされます。けっきょく、百万ドルもそれに値する恋も手にしたニコル。だが、しかし、父の偽造癖だけは直らなかったようで。
盗み出しのシーンや、台詞の掛け合いなどがなかなかシャレています。ヘプバーンの衣裳やアクセサリー、車にも注目。

ところで、あの美術館にあった陳列作品は、作り物ですよね?
なにかどこかで見たような名作に似せてあるんだけど、凝りすぎてつくっているような感が否めないんですが。油彩なんか、古色が無いし、色に厚みが無いし。とくに、アレキサンダー・カルダーのスタビルは、もっとシンプルな形態してるはずなんですが。

あと監視カメラもないゆるい警備は、やはり今から考えるとどうかと思いますよね。
でも、ハン・ファン・メーヘレンみたいな贋作家が見つけられなかったのも、この頃の鑑定眼の弱さをついているのかも。
作中名前の出たチェリーニは、16世紀イタリアで活躍した彫刻家、金工家のことですが、あのビーナス像はどうみてもその時代じゃないですよね(苦笑)

(〇九年八月四日)

おしゃれ泥棒(1966) - goo 映画

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