陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

映画「ニノチカ」

2012-01-10 | 映画──社会派・青春・恋愛

障害があるほど恋は燃えるという法則のあるように、身分や年の差、人種を越えた男女の恋愛は創作では好まれるところ。国境をまたいだ恋愛も数あり、戦時中に敵国同士のふたりが恋に落ちてしまうパターンも多いですね。
1939年のアメリカ映画「ニノチカ」もまた、国を超えた愛を描いていますが、政治的な先読みをすれば、共産主義国家と資本主義国家の和解といえるかもしれませんね。

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帝政ロシア崩壊後、パリへ亡命した王侯貴族の貴金属を没収すべく、ソビエト連邦から三人の使節が派遣された。しかし、もとロシアの大公妃スワナ伯爵夫人の愛人であるレオン・ダグナー伯爵は三使節をうまく丸め込んでしまう。

その後、レオンは夜の街で仏頂面の美人ニノチカに出逢う。
エキセントリックな魅力に取り憑かれて惚れたその相手、じつはスワナ伯爵夫人の宝石奪還のため送り込まれた特別全権大使だった。

フランスの社交界に世慣れたおしゃれな紳士の口説き文句にも、いっこうに鉄面皮でなびかない才女のニノチカ。ロシアへの愛国心からブルジョワジーの暮らしを批判的にみつめがらのパリ滞在。しかし、いつしかレオンの熱烈なアプローチに頑な使命感も揺るがされて、こころを動かしてしまいます。
しかし、ふたりの仲に勘づいた伯爵夫人が、宝石の返還とひきかえにロシアへの帰国を迫ります。

いったんは離ればなれにされたものの、意外な協力があって再会を果たすんですね。恋愛としてはありきたりな展開ではありますが、文化先進国にカルチャーショックを受けてとんちんかんな発言をするニノチカが、冷たい女から愛される喜びを知って可愛らしくなっていく様がいいですね。カフェでの大笑いのシーンはのちのちの語り草になっています。

冷戦中、レッドパージの嵐吹き荒れる時代ではけっしてつくれなかった映画だと思いますが。粗末な共同部屋で見ず知らずが暮らし、思想の自由もない暗さのあるロシアの生活者が、西側の豊かさへの憧れを口にしつつも支えあっていきている場面はほほえましいですね。ソ連を風刺していますが、じつは裏返しで華やかな社交生活を営みながら、真剣な恋愛のない男女の上っ面な色恋を否定しているのではという気もしますね。

「サイレンは美人を意味し、警報は空襲のためではなく素敵な恋の象徴だった」という出だしからして、わくわくさせるような恋の予感を感じさせる作品でした。

主演は「アンナ・カレニナ」のグレタ・ガルボとメルヴィン・ダグラス。
ダグラスの演じるプレイボーイな金持ちは映画では珍しくないですが、男を手玉にとるようなタイプでないクールビューティーはこの時代あまり観られなかったように思います。
グレタ・ガルボはきりっとした顔だちとハスキーな声がとても魅力的な女優ですね。

監督は「桃色の店」のエルンスト・ルビッチ。
脚本にメルシオール・レンギール、チャールズ・ブラケット、ビリー・ワイルダー、ウォルター・ライシュが名を連ねています。

(2010年4月1日)

ニノチカ(1939) - goo 映画

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