さて、この劇場版でいい役回りをしていたのは、ハラオウン母子。
リンディ提督のお茶会シーンはなんぞこれ、と突っ込みどころ大有りのギャグでしかありませんが、同じ子を持つ母親として直々にプレシアに説得にあたるあたり。指揮官が席を離れて現場に飛ぶ、って数年後にどこぞの八神さんもやらかしてましたが(笑) そしてクロノ執務官の名言はやや形をかえて,プレシアに鋭く投げつけられます──「わかってるだろ。魔法じゃ過去は取り戻せない」──この言葉、重いですよね。深いですよね。A'sをすでにご存じのファンからすれば、リンディやクロノがどんな血反吐の滲むような気持ちでこの言葉を投げつけたかお判りでしょう。ハラオウン母子は知ってるわけですよね、魔法じゃ取り戻せないものがあったことを。いや、それどころか、魔法によって失ったものがあることを。そうであっても、彼らは魔法によって解決するしかない。そんなアンビヴァレントな葛藤に悩まされながらも、それでも職務に忠実たれと冷静にそう切り出す。情にはやってフェイト救出に向かったなのはとユーノを叱りつけるハラオウン母子は、一見、非情に思えるけれど、なによりも彼ら自身こそが魔法による悲しい犠牲を強いられたからです。次の劇場版の種明かしとなるためあえて明らかにはしませんが、悲しみに打ちひしがれる者の懐にそっと入り込むことが許されるのは、おなじ悲しみをその胸に抱いたことのある者だけなのです。
劇場版第二作が楽しみといえば、本作のラストシーン。
なのはが困っている時には、すぐに飛んでいく、とフェイトが約束したあのシーンですよね。背景の街並が異なりますが、服装がほぼ同じ。TV版第二期の第一話を観たときには、なにせそのとき、無印のラストから立て続けに視聴したので、おもわずスタンディングオベーションしたくなるぐらい感動のシナリオでした。劇場版A'sでは、はやてちゃんと八神家もお目見えするし、どう料理されてくるかが楽しみ。
そして、今回、予想外にすばらしかったのがバトルの描写。
数年前より技術革新で表現の幅が広がったとはいえ、広く深い空を自在闊達に巡りながら刃を交える二人の戦闘は見応えありました。やはり、このシリーズは漫画だけではものたりない。アニメにしなくちゃだめだとあらためて思います。変身シーンやバトルの熾烈化にともなっての過剰な露出もなかったようですし(あれは角川かメガミマガジン仕様なのか(?))
映画館のスクリーンで観たら凄かったでしょうね。
私、子どもの頃、「美少女戦士セーラームーンR」の映画を劇場で実見したことがありますが、ふだんブラウン管サイズのキャラがあの大きさに引き延ばされて、ずしんと頭に降りかかってくるサウンドの重みとか、館内の興奮した空気の熱さとか、とにかくとても感動した覚えがあるんですよね。それもTV版の脚本をすこし練り直した変哲のないお話だったのに、やはりTVで観るのと味わいが違いました。しかし、さすがに恥ずかしいので、今はアニメを劇場鑑賞する勇気がありませんけど。
そして、さらに意外だったのは、淫獣ユーノの出番が控えめだったこと。
百合ファンへの配慮?
なのはとはどこかよそよしいし、クロノとの掛け合い漫才めいた言い合いっこも省かれてるんですよね。ちなみになのは初変身後の「成功だ!」は、ラジオStrikerSでの水橋さん言うところの「最高だぁ♪」には聞こえませんでしたよ?(ラジオStrikerS 第七回参照) ネタでおっしゃったのかしら。
どちらかというとフェイト側に重きが置かれ、主演のなのはが食われているような気がしないでもないですが、その節はコミックス版(漫画『魔法少女リリカルなのは MOVIE 1st THE COMICS』第一巻・漫画『魔法少女リリカルなのは MOVIE 1st THE COMICS』第二巻)で補完できるでしょう。
ひとつ惜しまれる点があるとすれば、挿入歌の扱い。
田村ゆかりさん歌う「My wish My love」は、なのはとフェイトのリボン交換シーンにかぶせてほしかったんですよね。「はじめて出逢った日の 瞳わすれない」という出だしなんて、視線を絡ませあう二人にぴったりでは。ふたりの台詞が聞き取りにくくなるから駄目ですかね。なぜかこれがEDとして、登場人物のその後日談を流すラストで使われていて、さらにその直後に主題歌として水樹奈々さんの「PHANTOM MINDS」が、劇場版告知ポスターやピンアップなどを背景にしたスタッフロールで用いられているという。そのイラストはもちろんなのはとフェイトに限定されていたものだったんですけど、それなら締めくくりを、なのはとフェイトの近況だけに絞った動く映像流してほしかった。離れているけれど、お互いに想い合っていますとわかるような。なぜかというに、歌詞があきらかにフェイトからなのはへと送るラブソングっぽいから。
なお東京のローカル局で、A'sの再放送が決定したとのことですが、これはいよいよ劇場版第二作の公開が迫ったことを裏付けるものなのでしょうか。2012年でしたよね、たしか。来年ですよね、もうすぐですよね。情報出てますよね?
【注】
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この記事を書いたのは、2011年の10月ごろです。
一部の表記に、現状とはかなりのタイムラグがありますので、ご容赦ください。この頃は公式ホームページもなくて、まったく不安でした。最近のアニメは、先行情報の取りあつかいが厳しいのですね。
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