漫画家アシスタント物語

漫画家アシスタントの馬鹿人生40年と、リタイア後のタイ移住生活。

漫画家アシスタント 第6章 その13

2009年03月13日 04時42分09秒 | 漫画家アシスタント
( この写真は、東京豊島区椎名町の駅前商店街です。この辺はかなり賑やかですが・・・ここから
  東長崎の方へ歩くとシャッターの降りた店が増えていきます。《 2009年1月、撮影 》 )
  
  
【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】
 
 
 
              その13
 
 
1988年9月、京都旅行から帰ってすぐに龍馬ファン一同( 仮名『 坂本
龍馬の会 』 )よる会報発行のための会議がおこなわれました。
 
この会報編集会議は恒例になっていますので、いつもの様に始まりまし
たが・・・リョウさん( 仮名:内海遼一、岡山県出身、88年当時33歳 )
の様子は「 いつもの様 」ではありませんでした。
 
後に、この時のリョウさんを評して、編集会議に同席した女性が・・・
 
 「 何だか・・・龍馬みたいだった・・・・・ 」
 
・・・と、普段は寡黙であまり喋らないリョウさん、大声で笑うとい
う事も人前で声を荒げる事もない・・・そのリョウさんが・・・この
会報編集会議の席で、皆の前で堂々たる演説を始めたのです・・・。
 
それは、坂本龍馬が陸奥宗光( 海援隊々士、後に明治政府の農商務、
外務大臣 )に出した手紙についての解釈でした・・・・
 
 「 龍馬が出した宗光への手紙は暗号だよッ! 」
 
坂本龍馬の会々員一同は・・・
 
 「 ・・・・・・? ・・・・・・!! 」。 
 
いつもなら、ほとんど発言する事の無いリョウさんが長広舌を開陳し
ているのだ・・・。
 
 「 この手紙に書かれている『 長刀 』とは、『 長州 』を意味して
  いるんだ・・・・・・ 」
 
取りつかれた様に夢中で喋るリョウさんを会議に出席した全員がただ
見つめます・・・!
 
リョウさんの解説( この解釈が正しいかどうかは簡単に判断出来ませ
んが )に、反論もなく時間が過ぎて行きました。 
 
押し黙った会員の中で、一人・・・
 
 「 確たる論拠が提示されないと・・・早急な判断はできないんじゃ
  ないのかな・・・ 」
 
と、疑義を提起する人も居たには居たのですが・・・リョウさんの話
に歯止めはかかりません。
 
会議時間は1時間ほどなのですが、その半分を使ってリョウさんの力説
がこうして続いたわけです。
 
しかし、リョウさんは・・・他の参加者を説得したとか論争で勝った
とかいうのではなく、相手が納得しないまま、ただ諦観しているだけ
・・・そんな状況に自分一人が空回りしている・・・その事は、自覚
していたのでした・・・・・。
 
 「 あの時は、ハイテンションでした! 」
 
と、当時を自嘲気味に振り返るリョウさんです・・・・・。
 
 
この会議の直前に坂本龍馬への激しい感情移入から地下鉄の車内で涙
を流してしまったリョウさんは・・・
 
 「 龍馬が可哀そうだった・・・・・・ 」
 
・・・だから、泣いてしまったのだと言いますが・・・私には、いっ
たいどっちが可哀そうなのか分かりません。
 
この会議の後のリョウさんは、もう、自分をコントロールする意識の
バランスを失っていました( 病的状態 )。右も左も見えない。振り
返る事もない。ただ一直線に目の前の道を突き進むだけでした・・・。
 
 『 龍馬を殺した犯人を突き止めてやる! 』
 
リョウさんは、椎名町の下宿に戻るとこのテーマの下に坂本龍馬研究
へ没入していきます。この時からほとんど外出する事もなく・・・龍
馬の研究書を読み漁ります。
 
眠りもせず・・・食べもせず・・・部屋の中の本棚の前で研究書の山
の中に顔を埋めつづけます・・・・・。
 
本来なら疲労している精神と肉体が、自覚のないまま限界を超えた領
域で激しいきしみを発していたのに・・・・・自分以外の全ての世界
と断絶したのです・・・龍馬とのチャンネルだけを残して・・・・!
 
1日目・・・2日目・・・・・・。 3日目・・・・・・この日からは、
Jプロの仕事に出なくてはならない・・・・。 朝・・・もう、リョ
ウさんに漫画を描くエネルギーはありませんでした・・・・・・
 
この時は、まだ自分が「 異常 」だとか「 不調 」だとか、考えもしま
せん・・・むしろ気分はさわやかで「 明晰 」でした。
 
「 不調 」どころか、自分が何をなすべきかを悟った様な・・・高尚
な充実感にみなぎっていたのです・・・・・・
 
その日( 1988年9月中旬 )のJプロの仕事は・・・・おとぼけ漫画の
「 ○子の毎日 」( ヤクザと天然ギャルのおとぼけストーリー )でし
た。
 
お姉~ちゃんのオッパイがプリプリ、ヤクザの組長がお姉~ちゃんの
オシリにクラクラ~ッとする様な漫画です。
 
少し青ざめたリョウさんは、いつもと同じ様に自分のデスクに掛ける
のです・・・・・。
 
 
 
            「 漫画家アシスタント 第6章 その14 」 へつづく・・・



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25 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (ふじもん)
2009-03-14 13:07:28
リョウさんが“漫画の中”で龍馬暗殺の真犯人を追い詰めるというやり方を取っていたら、全く別な結果が出たかも知れませんね。

黒鉄ヒロシ氏はそれに近いやり方をしましたが、エンターテイメントというよりも資料に近かった。
エンターテイメントな漫画として、龍馬暗殺の真犯人を追い詰める作品をリョウさんに描いてほしかったですねぇ。
返信する
描き尽くされた題材でも、物にする漫画家は、しっかりと売れる作品に仕上げる。 (海坊主)
2009-03-15 00:01:18
井上雄彦
描き尽くされた『宮本武蔵』を描いて、5千斤部を売った。
熊本現代美術館で、アンコールの「バガボンド」展を開いて、コンビにでも、その様子を写真集になっている。
かなりごま塩頭の禿げ上がったおっさんだが、毛糸の帽子をかぶると、それなりにいい表情をしている。
井上雄彦に坂本竜馬を描かせれば、今からでも成功作品を書くだろう。
結局、本人の力ということになる。

描き尽くされた題材でも、物にする漫画家は、しっかりと売れる作品に仕上げる。その裏にあるのは、すごい集中力と試行錯誤の積み上げだ。

BY WIKI
吉川英治の小説『宮本武蔵』が原作となっているが、武蔵の実姉が描かれていなかったり、佐々木小次郎が聾唖者(ろうあしゃ)であったりと、キャラクターや物語には井上独自のアレンジが大きく加えられている。表題も原作名である『宮本武蔵』ではなく『バガボンド』となっている。ちなみに、題名の「バガボンド(vagabond)」とは英語で“放浪者”、“漂泊者”という意味である。『宮本武蔵』という題名にしなかったのは、作者が、読者の読む前の先入観・好き嫌いを持ち出されるのが嫌だったのと、過去に実在した人物を好き勝手に描くのは後ろめたさを感じたからである[1]。

また、「一コマが一つの絵画として完成している」と評価されるなど、井上の画力には定評がある。当初井上は当時の服装である着物の描写が思うようにいかず、体の線が出にくいため、特に戦闘時に不自然さが現れてしまう事について悩んでいた。考えた末に井上は登場人物が裸の状態を下描きの段階で一度書き、その上で着衣を描き込むといった手間のかかる手法によって、この問題を解決した[2]。その為、本作品では通常の倍近い作業を要している。さらに、ペンでの描写に限界を感じたことをきっかけに、場面全体の雰囲気を変えるため、また鐘巻自斎の汚らしさ等を表現するために、いわゆる「小次郎編」開始時から作品途中にして完全に筆のみによって描画するようになった
返信する
ふじもんさん、海坊主さん、コメントありがとうございました! (yes)
2009-03-15 06:25:56
 >ふじもんさん、へ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 
 >リョウさんが“漫画の中”で龍馬暗殺の真犯人を追い詰め
 >るというやり方を取っていたら・・・
 
確かに・・・「全く別な結果が出」ていたかもしれません。
 
この事も近いうちにリョウさんに話してみたいと思います・・・。
 
 
 >海坊主さん、へ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

宮本武蔵と井上雄彦先生のお話、ありがとうございました!
 
 >描き尽くされた題材でも、物にする漫画家は、しっかり
 >と売れる作品に仕上げる。
 
本当にそうなんですよね。 まさに、力の差は歴然と表れる・・
・・・・!(競争原理)
 
同じ様に龍馬の少年期を題材にした漫画を同時期に描いた二人
の人物がいたわけで・・・
 
それは、あたかも真剣勝負の様に「生と死」を分けた瞬間だっ
たのかもしれません。
 
返信する
雲と落語 (みみ)
2009-03-15 19:11:29
ビックコミックオリジナル(月2回)とツィンズ(月1回)
3/20号と今月号を読みました。
今月の雲はいままでと少しストーりーが違うなという感じでした。落語のほうも違うけど、殿様も巻き込んだ人情ものと言う感じでした。
毎月3本の新ネタを考え、人物の線を入れていくのも大変だなと思います。30年も一本ずつ違う読み切りを出し続ける。
大変な才能です。
背景もうまかったです。
返信する
みみさん、へ・・・・・・・・・ (yes)
2009-03-16 03:44:56
師匠の連載作品についての感想、どうもありがとうございました!
 
 >30年も一本ずつ違う読み切りを出し続ける。
 >大変な才能です。
 
「怪物」です。
 
ちなみに、Wiki(!)によると・・・今年で連載36年目(約900本)
でした。
  
実は、『雲』は連載当時は人気がなくて、いつ打ち切りになるか
・・・という状態だったそうなのですが・・・・。
  
返信する
僕も買いました(^^) (幸多徹夜)
2009-03-16 21:33:08
銭ゲバ文庫本・・・やっと買えました
返信する
原宿から、表参道の散歩 (灰色ねずみ)
2009-03-16 22:00:16
世の中なかなか面白いものは少ない。
吉祥寺、下北沢、若者の人出は相当多いが、特に他の町ではないものが、ここにあるとまではいえない。
少しへんてこなウエァー、へんてこな飾り類、ちっと変なたべものの店、しいていえば、若者が沢山集まるから、それらを見に行くと言う人も多いだろう。
でも、パギャルも含めて、どうもチャチイ人物、チャチイ装いで平凡な顔つき、スタイルの若者ばかりである。
これがパリだと少し違う。
パリもまたNYのように、人種の坩堝。ヨーロッパ中から結構いい女が集まってくる。男達も俳優みたいなかっこいいのがまじっている。
ある種の女達は宝石類をあびるようにつけている。それが、女子高校生だったりする。スペイン系の。ジプシー風の。この連中を見ていると、世の中こんなモデルみたいなすごい人間がいるのか、と驚かされる。
フランス女は品のいい、しっとりしたかわいい子もいる。
レストランでの話し声もかわいい。
パリ15区で、とてもかわいい子とすれ違ったことがある。20年前のことだ。夜8時。
そこでさっそく話し掛ける。20歳ぐらいのギャルだ。
「イクスキューゼモア ウー ソム ヌー」
「すんまへん ここは どこですか」
こちらは40歳のメガネのおっさんだ。
日本だったら、「しっ、しっ、と追い払われるところだろう」
でも、彼女は取り合ってくれた。
「なにいってんの、あんた。目の前にオペラ座があるでしょ、だからここは、オペラ座の前よ」
「なるほど、でもわいは日本から来たもので、ルアレの地下鉄駅をさがしているですがね」
そうなの!と彼女は言うと、それはこっちだから、と私の横について、どんどん暗い公園に連れて行った。いっぺん、地下道に潜り、しばらく歩いてまた地上にでて、約10分、ルアレの駅にたどり着いた。
「ここが、改札よ」というと、彼女はにっこり微笑んで手を振ってさよならの合図を示した。その少し後ろに180センチぐらいの色白の男が立っていた。
どうやらデート中だったようだ。
デート中の恋人に、「このおっさんを駅まで案内するから」とことわるまでもなく、彼女はどんどん暗い道を歩いて東洋人のおっさんを案内し、男もそれを止めるでもなく、彼女の後ろをついてきた。
国際都市の住人は徹底的に親切だった。
日本の若者はグチャとヨレているが、パリの若者は、背筋がぴんと伸びている、という印象をもった。

さて、今日は原宿から、表参道の散歩である。
一言でいうと、このストリートはパリ化しつつある。
安藤忠男の表参道ヒルズの影響もあるのだろう。
カルティエ、ブルガリ、サンローランなどガラス製の不思議なビルが多い。若者達が縁日のようにゾロゾロあるいている。

奥さんとゆっくりと流していると、向こうからデモ隊100人ぐらいが歩いてきた。警察の警護が物々しい。
何か叫んでいる。プラカードをみると
「マリファナを合法化しろ」と描いてある。
{あのくらいで、相撲取りを逮捕するほどのことか!}
と叫んでいた。売人の一群か。
こういうぶっ飛んだデモ隊を見たのは、初めてである。
30年前は「アメ帝、帰れ」「ベト反」のゲバ棒部隊が行進したところを、いまは、薬の合法化を叫ぶ連中が堂々の行進をしているのである。
返信する
幸多徹夜さん、灰色ねずみさん、コメントありがとうございました! (yes)
2009-03-17 03:48:32
 >幸多徹夜さん、へ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 
 >銭ゲバ文庫本・・・やっと買えました
 
お買い上げありがとうございました! 師匠に代わりましてお礼
申し上げます!
 
 
 >灰色ねずみさん、へ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 
吉祥寺、下北沢・・・そして、パリ・・・。都市の個性や風景、また、
そこに暮らす人々のお話、ありがとうございました!
 
 >パリ15区で、とてもかわいい子とすれ違ったことがある・・・ 
 
パリの「かわいい子」とすれ違って声をかけてしまう、その勇気
に敬服します!
 
私は、高校の時(35年前)に友人がヨーロッパを旅行したのです
が・・・その時の体験談で印象に残っているのが・・・
 
「パリのシャンゼリゼ通りを歩いている女はブスばかりだった!」
 
これは、当時まだテレビや映画でしか欧米を知らないガキがそこ
に登場する金髪の美人たちを一般化する固定的な観念による誤解
なのですが・・・(NHKドラマ『おしん』を見て来た外国人観光客が
実際の日本に失望するのに似ている)
 
私はこれがトラウマになっていて「きっと、ヨーロッパへ行った
ら失望するんだろう・・・」と漠然と考えていましたが・・・・。
 
貴重な体験談をどうもありがとうございました! 個人的に、こ
うした緊迫感(美人局に引っ掛かってるんじゃないか?・・・とか)
のある海外旅行記は大好きです!
 
 >・・・売人の一群か。
 >こういうぶっ飛んだデモ隊を見たのは、初めてである。
 
昔のデモ行進と違って、今は「マリファナを合法化しろ」のデモ
行進ですか・・・!
 
私の好みとしては嫌いじゃありませんが・・・マリファナをやる人は、
こ~ゆ~疲れる事はしませんね。
  
返信する
来週のカンブリア宮殿(3/23)は、マンガをやる (適当放送)
2009-03-17 22:36:07
来週のカンブリア宮殿(3/23)は、マンガをやる。
マンガ過去50年、未来50年だ。
お見逃しなく。
返信する
来週のカンブリア宮殿(3/23)は、マンガをやる (適当放送)
2009-03-17 22:36:14
来週のカンブリア宮殿(3/23)は、マンガをやる。
マンガ過去50年、未来50年だ。
お見逃しなく。
返信する

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