漫画家アシスタント物語

どーすりゃ漫画家に成れるのか、何で漫画家になれないのか?漫画家アシスタントの日常と苦悩!漫画大バカ人生劇場 

漫画家アシスタント もう終わりで章 その13 最終回(後編)

2018年02月16日 04時03分42秒 | 漫画家アシスタント

 ( この写真は、私が現在、隠居暮らしをしているチェンマイの夕暮れです。私が住む借家の前でドイ
  ステープ山に沈む夕日を撮影しました。毎日、この様に見事な夕焼けが見られます。特に6月の雨
  期になると激しく変化する気候のために、ドラマチックな夕空を見る事が出来ます・・・・・《 2018年、
  1月、撮影 》 )
・・・・
  【 はじめての方は、どうぞ 「漫画家アシスタント 第1章 その1(縮小版)」 よりご覧下さい。 】  

 

                   その13 最終回( 後編 )


         《 漫画家アシスタントが・・・・退職金を受け取る・・・・!? 》



39年間、私がアシスタントをしたJ先生は73歳。

2017年6月末・・・・・・・・

その時、私は61歳。

老人が二人、ゴミ屋敷の様な場所で猫背になって話し合っている・・・・・・・・・・そんな不
潔で陰気、腐ったコーヒー缶と紙屑、山の様な古雑誌と単行本、ホコリと老人臭・・・・・
・・・・・皆さんが想像される通りの、まさにそのまんまの姿こそ・・・・・・・・・ピッタリと現場
の実相を表していると思います。

J先生は、退職する私に向けて最後の言葉を贈ってれるのですが・・・・・・・・

そらは、私が想像もしない・・・・・・・・まったく唐突な・・・・・・・・不可思議な言葉でした・・・・
・・・・・・・・

 「 おみィはよ・・・・・・・・ 」

 「 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 」

 「 おみィは・・・・・・天才にはなれなかったな 」

 「 ・・・・・・・・? 」

私は、天才になりたいと話したり、天才一般についてJ先生と議論した事もありません
でした。

ですから、突然言われてたこの言葉を、どう解釈してよいのか・・・・・・・一瞬、混乱した
のです・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・と、同時に、頭の中で不思議な事が起こりました・・・・・・・・・・・・・

 「 おめィは天才になれなかったな 」

この言葉によって、記憶の封印がはじけ飛んだ様に・・・・・・・・

まるで、走馬燈の様に・・・・・・・・過去の先生の言葉が頭を駆け巡りました!( ほんの
数秒間のことです )


勤め始めてすぐの頃( 1978年秋 )、私が20歳の頃からやっていた同人誌の話をした
時、先生が軽蔑する様に吐き捨てた言葉・・・・・・・・

 「 同人誌なんかやめろッ! 」

Jプロに勤めて5,6年経った頃( 1983年頃 )に、私が失業保険について質問した時に
は・・・・・・・・

 「 サラリーマンみたいな事言うんじゃねィ~ッ! 」

多くの若手の漫画家が生まれては消えていく過酷な現状を話してくれた時、なるべき
漫画家の姿を指し示す様に・・・・・・・・

 「 苦しくて泣きながら机に向かう様な漫画家には、なりたくねぇ~だろ? 」

少年ジャンプで海洋物の漫画を連載している時に描いた、私のフニャフニャした描き
文字( 効果音 )について、キッパリと・・・・・・・・

 「 おめィ~の字は死んでるんだよッ! 」

私が中学生の時に芸者と逃げた私の父・・・・・・・・その父の話を何気なくした時、私に
さっき食べた昼飯の感想でも言う様に・・・・・・・・

 「 おめィのオヤジはよォ、腐れ外道なんだよ 」

私が13年前に池袋でタイ式マッサージ店を開こうとした時には・・・・・・・・

 「 ど素人が店なんか出すんじゃねィ~ッ! 」

私がこのブログを始めている事を編集サイドから聞き知った時には・・・・・・・・

 「 ブログなんかやめちめ~~ッ! 」


全ての言葉に、天才ではない私には、応えようがありませんでした・・・・・・・・・・・・

それぞれは、違う時間、違う局面で言われている言葉ですが・・・・・・・・実は、同じ事を
言っていたのです。

全ては、ただ一つ・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・天才性を呼び覚ませと!

・・・・・・・・・・・・・・・今すぐ悟れと!

・・・・・・・・・・・・・・・迷うなと!


しかし、悲劇的なことに・・・・・・・・・優秀な人間とそうでない人間の間には、越えられな
い裂け目があるのです。

馬鹿には優秀な人間が理解できないのです。そして、同時に優秀な人間には馬鹿が
分からないのです。


茫然と首をひねる事さえ出来ずにいる私に、ニヤリと笑いながら・・・・・・・・J先生は静
かに・・・・・・・・しかし、確信に満ちた声で・・・・・・・・( 先生の声はいつも低音で静かです
が、迫力があり威圧的です )

 「 おめィはよ、俺ィにはなれねィ~んだよッ! 」

J先生は、さらに畳みかけてきます・・・・・・・・

 「 おめィはJ・A( 先生の名前 )には絶対になれねィ~んだよッ! 」

なんだか、訳も分からず落ち込んでいく私を救うように・・・・・・・・

 「 ま・・・・・・・・おみィは、おみィでい~んだよ 」

先生は、気持ちをリラックスさせる様に( さらに集中する様に )、深く、ゆっくりと息を
一つ吐き出す。

 「 俺ィは、誰かに憧れた事なんかねィ~よ 」

 「 ・・・・・・・・・・ 」

 「 俺ィは、俺ィだからよ! 」

 「 ・・・・・・・・・・・・ 」

 「 おめィは、おめィ~でいいんじゃねィ~か! 」

J先生は、優しく最後の言葉を締めくったのです。


ちなみに、こうした言葉( セリフ )を普通なら一日中考えてもなかなか思い浮かびは
しないと思うのですが・・・・・・・・・・・・

このレベルの人間は、一瞬の即興で名台詞がポロポロ出てきます。

24時間、常に自分にそうした( 切迫した )状況を強いているのです・・・・・・・・言い換え
れば、マゾの極致とも言えます。( 本人は、結構快感なんだと思います )



さて・・・・・・・

そろそろです・・・・・・・

私の漫画家アシスタントとしての人生は終わり、今はタイのチェンマイで楽隠居させ
てもらっています。

6月いっぱいで仕事を辞め、ありがたい事に退職金( 毎月、1万円ほど退職金が積み
立てられていました )も頂くことができ、こうして楽隠居のゲーム三昧でしっかり惰眠
と怠惰をむさぼって暮らしております。


最後に・・・・・・・・

「 おめィはJ・A( 先生の名前 )には絶対になれねィ~んだよ! 」

突き放す様なこの言葉の後で・・・・・・・・・・

「 おみィは、おみィでい~んだよ 」

勤続39年間、色々な事がありましたが・・・・・・・・最後に救ってくれたのです・・・・・・・・・・

これこそが、私にとっては先生からいただいた「 退職金 」だったのではないか・・・・・・
・・・・そんな気がするのです。

この言葉・・・・・・・・

これからも、死ぬまで使えそうな気がします。





  『 最後の血の教訓 』 ( 漫画家を目指す、若い方々へ )( 中年の方々へも )


面白い漫画を描けば誰でも売れる。

バカでもアホでもチンチクリンでも売れる。

しかし・・・・・・・・

誰もが面白い漫画を描くのに苦しむが・・・・・・・

その苦しみ( もがき )や迷いからは・・・・・・・残念ながら「 面白さ 」は生まれない。

面白い漫画は、楽しく描く事によって生まれるからである。

楽しく描けない人間が生むのは、苦痛と混迷と・・・・・・・・敗北である

では・・・・・・・どうやって「 楽しく描く 」事が出来るのか?

理屈は簡単・・・・・・勝利し続けるのである!

だから、絶対に勝利しなくてはならない!( 必要なのは戦略と実行力だ )

賞取り、連載取り、人気ランキング・・・・・・勝利出来なければ、私の様に消えるだけ
のことだ!

漫画道は、いばら道、迷い道、嘘つき道、憂鬱な道・・・・・・無数にあるかもしれない
が、勝利の道はたった一本しかない。

気が付いた時には手遅れなのだ!

時計は今も進んでいる。




                    「 漫画家アシスタント物語 」  ― 完 ―



      次回よりタイでの隠居暮らしのブログが始まります・・・・・・まだ先ですが、
      ここにバナーが出来ます。

        ( 次回のタイトルは、まだ未定です・・・・・ )





                      あとがき


読者の皆様、長い間( ブログ開始は2004年11月 )、本当にありがとうございました。

読んでいただいた方、コメントを書いていただいた方、多くの方々から励まされてここ
までやってくる事が出来ました・・・・・・・・いや、ホントに!

拙ブログにお付き合いいただいた全ての方々が、日本で平安にご壮健に暮らせる事
を、タイの田舎で切に願っております・・・・・・・・・・・・・・ってのは嘘ですね。

ま・・・・・・・・皆さんの事をコロッと忘れて、気楽な毎日を過ごしている感じです・・・・・・・・
・・・・たぶん。( 冗談です )

さて・・・・・・・・

そんなわけで・・・・・・・・

ブログで、「 元漫画家アシスタントの適当大好きタイ移民 」( 仮題 )を始めるつもり
でいます。

上記の場所に、バナーを設置するつもりですので、よろしかったら折を見て覗いて
みて下さい。

では、少しの間・・・・・・・・・・休息させていただきます。


コメント欄には、タイでの暮らしや漫画の話題など、なんでも記していきたいと思って
います。

是非、以下のコメント欄に一言いただけたら幸いです!( ホントに嬉しい! )

どなたでも、お気軽にどうぞ!





   


【 各章案内 】  「第1章 その1」  「第2章 その1」  「第3章 その1」
          「第4章 その1」  「第5章 その1」  「第6章 その1」
          「第7章 その1」  「第8章 その1」  「第9章 その1」
          「諦めま章 その1」 「古い話で章 その1」
          ( 但し、第1~3章は『縮小版』になります )




コメント (14)
この記事をはてなブックマークに追加