漫画家アシスタント物語

漫画家アシスタントの馬鹿人生40年と、リタイア後のタイ移住生活。

漫画家アシスタント 第5章 その22

2007年12月29日 21時41分30秒 | アシスタント
( この写真は、東京新宿西口の写真である。右手にある円筒形の構造物は換気塔であるが、
  今ではすっかりつる草におおわれている。デジカメ故障のため、予定していた高田馬場
  の写真は掲載できませんでした。とても残念です・・・。《 2007年度12月撮影 》 )
   
 
【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】
 
   
                その22
 
 
アシスタントの先輩、南さん( 仮名:南浩志、1968年当時19歳、東北出身 )
が語る1968年10月21日・・・俗に言う「 新宿騒乱 」の一夜の出来事に私は、
言葉を差しはさむ事も出来ずに黙って耳をかたむけていました・・・・。
 
新宿西口で機動隊の暴行を受けた南さんは、自宅の新宿区下落合のアパート
に徒歩で向かいますが、途中で二人のサラリーマン風の男性に声をかけられ
ます・・・・。
 
口と頭部からの出血で血だらけになった南さんをその二人の男性が肩を貸し
てくれて、しばらく一緒に歩いて行く・・・そして・・・高田馬場駅を過ぎ
た頃・・・・
 
二人は南さんから事件の経過を聞き、 血を吐き出しながら口走る南さんの
機動隊に対する怒りについて・・・
 
 「 そりゃ~ひでェや・・・! 」 「 何ンてことするんだろォ! 」
 
同情する様に相づちをうち、南さんの怒りに興奮しながら・・・いたわる様
に励ましてくれる・・・その二人が・・・・・・
  
道に人影がなくなると・・・まったく口をきかなくなったのです・・・・。
南さんは自分の体を支えてくれる二人の腕の力がだんだん強くなってくるの
を感じて・・・ふと、彼等の顔を見つめる・・・・・
 
なぜか二人は周辺をキョロキョロと見回している・・・。 そして、二人で
目配せしているのです・・・。  南さんがイヤ~な予感を感じた時には・・
・・・もう手遅れでした。 この二人から逃げ出すチャンスを完全に逸して
いたのです!
 
二人はそのガッシリとした腕で南さんを抱え込む様にして人気のないビルと
ビルの間の細いすき間に連れて行きました・・・
 
 「 ・・・えェ・・・ッ!  な・・・何・・・いィ・・・? 」
 
南さんは気が動転して声がうわずります。
 
二人の男の表情も声も態度も一変!  南さんの襟首を締め上げながら・・・
 
 「 この野郎ォ~おおおッ! 」
 
男の素早い鉄拳が南さんのアゴに炸裂します。吹き飛ばされる様に南さんは
ビルのすき間のゴミと空き瓶の中にくずれ落ちました。
 
その後は、まったく抵抗も出来ぬまま二人に殴る蹴るの暴行を受けます。
 
 「 このヒッピー野郎ッ! 」 
 
 「 てめェ~みてェ~のが日本をダメにすんだよォ~ッ! 」
 
手で頭や顔をガードしても、その上から蹴り上げられ、無防備な腹部や腰に
も痛撃が加わる・・・
 
 「 このクソ野郎がァ~ッ! 」
 
 「 クタバレ~ッ! 」
 
南さんは、この時に「 死 」というものを意識したそうです。  自分は、今、
殺されるのではないだろうかと・・・・・
 
きっと・・・東京の暗いビル街の片隅で撲殺死体が一つころがっていたとし
ても・・・「 新宿騒乱 」のニュースに埋もれてしまうだろう・・・・・。
 
自分はこんな所で撲殺され、腐乱死体になってしまうのだろうか・・・・!
 
 「 死ね! この野郎ォ~ッ! 」
 
二人の男には、明らかに殺意があった!
 
生まれて初めて味わう暴行と屈辱・・・そして、死の予感・・・・・・
 
南さんは、出血多量の朦朧とした意識の中で・・・死に往きつつある自分を
呼び戻すかの様に絶叫します!
 
 「 だずげでェええええ~~~ッッッッ!! 」
 
 
 
            「 漫画家アシスタント 第5章 その23 」 へつづく・・・



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漫画家アシスタント 第5章 その21

2007年12月21日 22時26分41秒 | 漫画家アシスタント
( この写真は、前回に引き続き新宿西口の写真である。O田急デパートとK王デパートの間に
 は細い路地がある。広い西口の中央にあるのだが、ほとんどの人は気付く事もない小道であ
 る。《 2007年度12月撮影 》 )
     
 
【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】
 
  
   
               その21
 
 
漫画家アシスタントの先輩だった南さん( 仮名:南浩志、1968年当時19歳、東
北出身 )が東京へ出て来たばかりの1968年。 10月21日に新宿で体験した事は、
私の想像を超えていました。
 
南さんの前歯2本が無いのは・・・きっと・・・酔っぱらって転んだとか、甘い
モノを食べ過ぎたとか、そんなトンマな想像をしていた私に強い衝撃を与えたわ
けです。
 
 「 えっ・・・! まさかァ・・・・・・ 」
 
私はもう言葉も無く・・・南さんが静かに、まるで軽い冗談でも話す様に語る悲
惨な話に息をのみました・・・・・・。
 
新宿西口で写真を撮っていた南さんが、機動隊に連行され顔面を蹴られるところ
まで、前回お話させていただきました。では、そのつづきです・・・・・・
 
 
顔面への最初の蹴りを皮切りに何人かの機動隊員に袋だたきに合います・・・。
 
口から血のアワを吹く南さん。漫画を描く時のペンしか持った事がない様な細腕
の南さん。そんな彼に暴行を加える事は、機動隊員たちにとって一時の憂さ晴ら
しだったかもしれません。
 
しかし、南さんにとっては生き地獄でした。他人(ひと)から殴られたり、蹴ら
れたりした経験さえ、まったく無かったのに・・・突然、顔面を蹴られ、殴られ、
嘲笑され・・・・
 
南さんの頭部からも血が吹き出します。なんで自分がこんな目に合うのか・・・
いったい自分はこのままどうなるのか・・・。恐怖の中で目を閉じ、加えられる
打撃と全身の痛みに苦悶している南さんの耳に・・・
 
 「 そんなヒッピー、その辺にしとけッ! 」
 
機動隊の指揮官とおぼしき人物の声。最初から全学連の学生ではない事を知って
いたのだ・・・!  南さんは血みどろになりながらも実兄からもらった一眼レフ
を握りしめている( 殴られても、蹴られても・・・ )。  キャノンの一眼レフ
を持ったゲバ学生がいるだろうか・・・?
 
使い古した玩具を捨て置く様に機動隊員たちが立ち去っていく。 南さんはフラフ
ラと起き上がり、破壊された新宿駅へ向かった。 頭の中はパニックで何も考え
られない・・・体がなぜかブルブルと震える・・・・
 
そして、足を引きずる様ににして、やっと地下の洗面所へたどり着く・・・・。
その洗面所の小さな鏡に映る自分の姿を見た時に・・・南さんは愕然とした・・
・・・!
 
そこには真っ赤に血だるまとなった自分が映っている。 裂けた頭部からの出血
がひどいために人相も分らないほど赤黒く染まった顔は、打撲による内出血で熟
れたリンゴの様にふくれている。白いシャツも血で真っ赤だった。
 
この時、南さんは機動隊への怒りよりも、恐怖よりも、異常な寒さに耐えていた
・・・・・。  自分でも理解出来ないほど全身がガタガタと震える。 ものすご
く寒い!
 
水道で血を洗うのだが・・・ブルブルと震える手から水がこぼれ落ちてしまう・・
・・・。 出血多量による悪寒と震えである。
 
電車は完全に止まっているので、自分のアパートのある新宿区下落合まで徒歩で
帰るのだが、とにかく震えが止まらない・・・。  猛烈な悪寒に襲われ・・・頭
は朦朧としてくる・・・・。
 
ゆっくりと一歩づつ自分のアパートへ向かう・・・。途中、多くの通行人とすれ
違うが血みどろの南さんを避けるだけで、誰も助けてくれようとはしない・・・
 
下落合の手前、高田馬場に近づく頃にはヘトヘトになっていた・・・東京の人間
の冷たさが、その痛む体にジワジワと染み込んで来た・・・その時・・・背後か
ら声がかかる・・・
 
 「 どうしたんですか・・・? 」 「 大丈夫ですか? 」
 
アイロンの効いたスーツ姿の男性が二人、やさしく、心配そうに南さんに声をか
けて来たのだ。 そして、南さんのボロ雑巾の様になってしまった体を横から支え
てくれたのです。
 
一見、サラリーマン風・・・体格の良い親切そうな、その二人の男性が自宅まで
送ってくれると言って、肩をかしてくれました。 道々、事の経緯や機動隊への
怒りを爆発させる南さん・・・・
 
 『 こんな事、許せない! 弁護士や新聞社に訴え出る! 絶対に泣き寝入り
   なんかしない! 』

・・・そんな風に、まだ出血が止まらない口の中の血を吐き出しながら・・・切
々と訴える南さん・・・・
 
この時、この二人が私服警官(?)・・・だとは、まだ気付いていなかったので
す・・・・・!
 
 
 
            「 漫画家アシスタント 第5章 その22 」 へつづく・・・



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漫画家アシスタント 第5章 その20

2007年12月14日 21時24分19秒 | 漫画家アシスタント
( この写真は、東京、新宿駅西口である。39年前、『10,21反戦デー、新宿騒乱』の主
 戦場だった場所です。そして、このO田急デパートとK王デパートの間にある小さな路
 地で・・・・・・。《 2007年度12月撮影 》 )
 
 
【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】
 
  
   
               その20
 
 
世の中とは不思議なもので、漫画を描かせたら私よりはるかに上手かった
中江君( 仮名、中江誠、1971年当時17歳。父親は医師。壮麗な洋館に住
む美男子 )が漫画家に成る気がまるで無かったのに・・・
 
おそまつな漫画を描いていた私が漫画家に成りたいという欲望ばかりを全
身から、風呂上がりの湯気の様に蒸散させていたわけです・・・。
 
中江君はしばらく不登校のまま高校を中途退学。その後、まったく連絡が
ありません。しかし、彼がくれた「 共産党宣言 」は3年後に、私の脳髄
に大きな影響を及ぼします。
 
 
ここでもう一人、私の「 社会観 」を大きく変えた人物を紹介したいと思
います。彼の話の内容は多くの問題が含まれているため、人名は勿論、場
所、時間などが「 架空 」の設定になっている事をご了承下さい・・・。
 
しかし、決して大げさな表現や誇張はありません・・・・・
 
私は1970年代の後半に南さん( 仮名:南浩志、1949年生まれ、東北出身 )
と出会いました。漫画家アシスタントの先輩、後輩の関係でした。
 
南さんは、アシスタントの中でも物静かで、人が嫌がる仕事をすすんで黙々
とこなす真面目なタイプ( 私の様な遅刻と手抜きのダメアシとは真反対の
人! )でした。 先輩面した横柄な態度など微塵も無く、いつもやさしく
ていねいに新入りの私を指導してくれました・・・。
 
ところが・・・長髪に口ひげを生やした優男の南さんには前歯が2本ありま
せんでした。イイ男なのに前歯が欠けている事が気になってしょうがありま
せんでした・・・。
 
 「 南さんの・・・その歯はァ・・・何ンで・・・・・? 」
 
そんな失礼な私の質問に・・・ある日、南さんはその理由を静かに話し始め
てくれました・・・少し困った様に苦笑しながら・・・・・
 
 「 Y君。これは誰にも言わないでね。ここだけの話だよ・・・ 」
      ( 注:ブログで公開する事は承諾していただいております! )
 
そう言って、前歯を失った時の事を話してくれました・・・・。それは、私
が想像もしなかったほど恐ろしい話でした・・・・・
 
 
1968年10月21日( 南さんは当時19歳 )。 それは新宿が燃えていた日に起
きたのでした・・・・。
 
「 10,21反戦デー 」テレビや新聞では連日、全学連や労働者が「 ベトナム
戦争反対 」「 安保粉砕 」の武装デモを報道していました。「 10.21 」には
新宿駅は投石、放火によって閉鎖され、電車も動いてはいませんでした。
 
火炎ビンが破裂し、車が放火され、駅、商店などが投石でメチャクチャに破
壊される・・・まさに「 暴動 」でした。
 
19歳の南さんはこの当時、東北から上京し渋谷、原宿あたりのレストランで
アルバイトをして暮らしていました。漫画家志望ではありましたが、高校時
代からカメラが好きで、長兄から譲られたキャノンの一眼レフで風景写真を
撮る事が趣味の一つだったのです・・・・
 
68年10月21日、南さんはバイト( 食器洗いと残飯処理 )を終えて日暮れ前
に新宿に向かいます・・・。電車は完全にストップ、放火された車が燃え、
多くの群衆が駆け回っている・・・まさに「 戦場 」となった新宿を夢中で撮
りまくりました。( 戦場カメラマンのごとく・・・と言うか・・・カメラを
持った野次馬と言うべきか・・・? )
 
デモ隊と機動隊との主戦場は新宿西口前。時にはデモ隊が機動隊を押し返し、
時には機動隊がデモ隊を包囲せん滅する・・・。一進一退の攻防の最中。
 
南さんは、当時としては高価な「 キャノン 」を持って走り回ります。気が付
けばもう、すっかり日が暮れている・・・。
 
デモ隊が機動隊に追い詰められ、粉砕される真っ直中に南さんはいました。
それは、大変危険な状態でした。
 
優勢な機動隊は逃げ惑う学生や労働者を叩きつぶします。そして、その中に
混じり込んでしまった南さんにも襲いかかりました。 
 
返り血を浴びつつ昂ぶる機動隊員たちは、南さんをわしづかみにして・・・
 
 「 コ~ボォ~~ッ! 」( 『公務執行妨害』の意 )
 
 「 この野郎! こっち来い! 」
 
一瞬の出来事でした。南さんは新宿駅西口にあるK王デパートとO田急デパ
ートの間の路地に連行されます。
 
 「 ぼ・・・ぼくは写真を・・・・・! 」
 
 「 うるせェ~ッ! 」

 「 いいから来いッ! 」
 
南さんの必死の弁明は、機動隊員たちの罵声にかき消されます! デパートの
壁際に引きずり倒された南さんを数人の機動隊員が囲んだその時・・・!
 
一人の機動隊員が壁を背にしてひざまずく南さんの顔面を蹴ります!
 
 「 ギャああッ・・・!!! 」
 
この一撃、たったこの一撃で南さんの前歯2本がスッ飛んでしまいました( 機
動隊員の靴は鉄の様に硬い! )。 口の中にはバーッと血があふれます。その
ドロドロの血をゲロの様に吐き出します。
 
吐き出される鮮血でシャツも顔も血だらけです。
 
しかし・・・・・これは序章にすぎません!
 
 
 
 
            「 漫画家アシスタント 第5章 その21 」 へつづく・・・



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漫画家アシスタント 第5章 その19

2007年12月07日 22時24分06秒 | 漫画
( この写真は、東京のJR線目黒駅の写真である。ここは、高校時代の友人、中江君が住ん
 でいた街であり、有名な「白金」や「迎賓館」の近くでもあります。そして、私が通った
 K高校もこの駅からさほど遠くない所にありました。勿論、当時の面影はほとんどありま
 せん・・・・。《 2007年度12月撮影 》 )
  
 
【 はじめての方は、どうぞ 「第1章 改訂版」 よりご覧ください。 】
 
  
   
                その19
 
 
漫画が上手くて、頭が良くて、金持ちで、女にもモテた中江君( 仮名、中江誠、
1971年当時17歳。父親は医師。壮麗な洋館に住む美男子 )でしたが、学校でも
目立つ存在でした。
 
700人の生徒の代表である生徒会長であると同時に、校則と教師にたて突く「 問
題児 」でもあったのです。その事が後に退学する大きな原因になります。
 
私はそれまで、よく彼に新宿の街や、漫画同人誌会などを教えてもらっていまし
た。印象に残るのは靖国通りのアングラ喫茶( ロックとクスリと人混と・・・ )。
ここには、中江君の友人たち( 怪しげな )がいっぱい集まっていました。
 
そして、新宿通りにあった漫画喫茶「 コボタン 」。ここでは多くの漫画家志望
者が出会い、初めて会った同士の若者が熱く漫画論を闘わせていたものです。
 
私が一度、コボタンの二階で場違い(?)にも翌日にせまった期末試験のために
教科書を開いていたら・・・
 
 「 てめェ、何やってんだヨッ! 勉強なんかしやがってッ! 」
 
私にそう怒鳴った20歳前後の若者も中江君の友人。完全にクスリでいかれている
のですが、新宿には当時(1970年前後)、ヒッピー、フーテン、新左翼・・・血
の気の多い人たちがいっぱいいたのです。西口にも東口にもシンナーを吸う若者
と、シンナーを売る若者がウジャウジャ集まっていました。その同じ場所に、フ
ォークゲリラに全学連、そして機動隊ですから、もうメチャクチャです・・・!
 
とにかく、私の様な「 子供 」には刺激の強い街でした。
 
 
さて、中江君が学校を休むようになってきた頃・・・私はノン気に漫画一色( 自
慰も含めれば二色 )の高校生活を送っていました。
 
当時のベストセラーに「 HOW TO SEX 」(?)とかいう本がありました。この本
を持っていた友人のT君が、私にそれを貸してくれました・・・
 
 「 参考になるよ 」
 
T君も私もセックスとはまったく無縁なのですが・・・何ンの「 参考 」になるの
やら・・・・・
 
 『 始めにキスをしましょう。いきなり乳房をモンだりしてはいけません・・・ 』
 
ってな事が書いてあり・・・
 
 「 なるほどォ・・・うむうむ・・・ 」
 
などと目を充血させて読んでいました・・・教室のスミで。
 
本を貸してくれたT君は今では( 36年後 )大学生と高校生になる二人の娘さんが
います。結婚して子供を二人作ったのですからこの本も役に立ったと言えましょう
・・・。
 
しかし・・・その娘さんに粗大ゴミあつかいされている現状を見る時・・・「 HO
W TO SEX 」に目を充血させていたあの頃が懐かしまれます・・・。
 
 
ちょっと脱線しましたが・・・話を中江君に戻します・・・。彼は私に、よく成田
へ行こうと誘いました。「 成田空港建設反対闘争 」に一緒に参加しょうというわけ
です・・・。私は『 何ンで成田なの? 』『 空港のどこがいけないの? 』・・・全
然、理解出来ずに参加もしませんでした。
 
当時は成田でやぐら( 砦! )を組んだ反対派と機動隊が壮絶な闘いを繰り返してい
ました。白兵戦の中で反対派に囲まれた機動隊員が3人、殺されたり・・・・ものす
ごい事になっていました・・・・・
 
さて、中江君が学校へ来なくなってしばらくしてから・・・・・彼のクラスの担任教
諭H先生が私を呼び出しました・・・
 
 「 Y(私)、おまえ中江とは仲が良いんだろ? 」
 
 「 はぁ・・・ 」
 
私は、自分が一番の親友・・・と、いうわけでもなかったのですが・・・・・
 
 「 ちょっと様子を見て来てくれないか・・・? それから、学校へ出て来る
  様に伝えて欲しいんだ・・・ 」
 
クラスも違う私が何ンでこんな事を・・・と、思いつつ・・・久しぶりに中江君に会
いたいとも思っていたので、帰宅途中で彼の家に立ち寄ったのです。
 
目黒駅から美しい並木道を歩いて行くと、立派な洋館が見えてきます・・・・・。私
は、直接中江君がいる別棟のドアをノックします・・・
 
 「 Yか・・・。何んだい? 」
 
 「 ・・・長く休んでるって聞いて・・・・・ 」
 
中江君は私を探る様に見つめている・・・
 
 「 H( 先生 )に言われて来たんだろ? 」
 
見透かされている。
 
 「 様子を見て来いって言われたんだろ? 」
 
完全に見透かされている。
 
偵察に来たスパイを見下す様に私を見る。私は一言もなく全身が冷たくなる・・・
 
 「 2,3日したら学校へ行きますって、Hに言っとけよ・・・ 」
 
バタン。
 
閉じられたドアの前で私は固まる。
 
さっきまでのあれ程、鮮やかだった緑の並木道が・・・今では樹木の墓場の様に・・
・・・灰色一色によどんでいた・・・・・・。
 
 
 
 
            「 漫画家アシスタント 第5章 その20 」 へつづく・・・



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~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ お知らせ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 
 単行本「漫画家アシスタント物語」の出版について・・・・・
 
「いつ頃出版されるのか?」といった質問を多くいただくのですが、一部
の方には1月頃とお知らせしていましたが・・・3月に変更(延期)になりま
した。
 
「いくら払うの?」とか、「出版詐欺にあってるんじゃないの?」などと
ご心配される方もおられましたが・・・たぶん、私は印税をいただける様
です!
 
最近、担当の編集員氏が体調を崩してしまい、その事も出版時期の延
期に影響しているかもしれません・・・・・。
 
単行本の内容については、来週あたりから少しづつご報告させていた
だきたたいと思っております。
 
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「もう終わりで章 その1」 「移住物語 こりゃタイ編 その1」



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