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鴛鴦あはれ南京豆を争へる 富安風声

2017年01月25日 | 俳句
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富安風声
鴛鴦あはれ南京豆を争へる
鴛鴦(オシドリ)は夫婦仲がよく美しい鳥として知られている。もっとも美しいのはオスの方でメスは暗褐色で目立たない。オスの翼の先はイチョウの葉形をし華やかな彩に飾られている。主として山間の水べの樹木の洞に巣を作るが、秋から冬にかけて人里の池にも姿を現す。人々は愛らしさ故に餌を与えるので意外と人間に懐くことがある。この時、この優雅なイメージの鳥が南京豆を争う世俗の様を露わに晒す。清少納言の枕草子に「水鳥、鴛鴦(おし)いとあわれなり。かるみにゐかはりて、羽の上の霜払ふらむほどなど」と著された哀れさはここには無い。『俳句の鳥』(2003・創元社)所載。