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■ 元裁判官が証言する日本の裁判所と裁判官の暗黒の実態 (2/3)

2011年01月22日 11時57分53秒 | 政治・社会
(1/3の続き)

給料差別と屈辱感

 裁判官というのは、みんな自分は勉強ができると、人よりも落ちると言われることに一番弱い体質なんです。比べられて落ちると言われる ことにです。 そういうことから、これを逆手にとれば、

一番裁判官をうまく統制できるということになります。現在、最高裁は裁判官に憲法違反の統制をしています。

 それはどういうことでやるかといいますと、裁判官になって20年目までは、月給はみんな平等に上がっていきます。20年目までが4号と いうところです。 21年目に4号から3号になるかどうかということで、

ふるいにかけられるわけです。3号にならないと裁判長にもなれません。

 それから、4号から3号になる給料差ですが、これはだいたい2000年、平成12年の基準でいきますと、4号俸の月額が90万6000 円、3号俸になる と106万9000円で、16万3000円差があります。

毎月で16万3000円違って、これがボーナスや諸手当、給料の1割がつく大都市手当、それらを 合わせると、だいたい年間で500万円の差になる。結構大きいんですよ。

 だけど、その給料差だけじゃなしに、相手は3号になったのに、会合の座席でいえば、自分を飛び越して上座に行っちゃったのに、自分は 行っていないとい う、こういう屈辱感みたいなものも大きいんですよね。

そういうことで、非常に3号にみんななりたくて仕方がない、21年目ぐらいからは。

 だけど最高裁は、どういう要件があれば3号になって、どういう要件がなければ3号にならないかという基準を明らかにしないのです。だか ら、こういう行動 をとっていたら、最高裁は自分を嫌わないだろうかとか、

最高裁に評価されるんじゃないかということを非常に気にして生活や判決もします。

 だから、まず考えられるのは、組合関係の判決なんかで、検事と違うような判決を出せば、まず最高裁からもにらまれるであろうということ は、推測は立ちますから、検事の要求と違うような判決は、

まず出さないと思います。裁判官としてはまず出さない。

 そういう最高裁が何を考えているのかという、上ばかりを見るというので、「ヒラメ裁判官」といわれています。ヒラメというのは海底で砂 の中にうずくまっ て、目だけを上に上げて生活しているらしいのですが、

そういう上ばかり見ているというので、ヒラメ裁判官という。そういうことです。給料をそういうふうに 餌にする。

 それで3号にならないと、2号にもならない、1号にもならない。1号にならないと所長にもなれないということです。1号と4号とでは、 月にして30万円 以上の差がありますから、これが年間になって、諸手当、

ボーナスから全部含めますと、1000万ぐらいの差になってくる。それから、退職金も全部そういう ことで計算されてきますから、生涯所得では相当の差になってくるということです。

みんな3号、2号、1号に早くなりたいということで、最高裁のほうばかり を向いて仕事をする。

 20年、30年経ってから、あの自白調書はおかしいと、えん罪であったというのが出てくることがあるが、これはある意味では分かりきっ ていながらも、自 白調書を信用して有罪の判決を出しているわけなんです。

検事の出す白白調書を信用していくというのは、こういう給料差別による餌があるからです。

任地による差別

 任地というのも非常に関係しています。ここの東京地裁にいたり、非常に優秀だといわれるような人、要するに最高裁の覚えがめでたい人 は、東京から 一歩も動かない。東京地裁の判事、高裁の判事、

司法研修所の教官、最高裁の調査官。そういうことでグルグル回っていたら、もうずっと東京だけで過ごせる人 がいる。

 その次にいい人は、東京、大阪、名古屋とか大都市だけを動く。それから、その次が東京にいて、いったん地方に出て3年以内に帰ってく る。大阪にいて3年 以内に大都市へ戻ると、こういう人もいます。

それより下の人は、もう地方ばかりを回っている。そういう任地による差別というのがあります。

 それで、東京なんかにいれば、世論の注目を浴びるような大きな事件をやれますが、地方では滅多にそういうことはありえません。そういう ことからも、やりがいの点で非常に違ってくる。だから、

みんな大都市に行きたい。こういうことです。

 じゃあ、地方都市にいる裁判官のほうが、冷や飯を食っているだけに、最高裁の言うことを聞かん人が多いのかと思うかもしれませんが、必 ずしもそうとは言 えない。起死回生の挽回をしたいという人もおりますから、

地方にいても「超ヒラメ」という人もおります(笑)。なかなか分からないということになります。

最高裁のウラ金とウラ取引

 それで、4号から3号になるかどうか。ここからは私の推測なのですが、21年目には前年まで4号だった人の3分の1ぐらいしか3号に ならないん じゃないか。その次の3分の1が翌年の3号、それから翌々年に

パラパラッと3号になったり、一生3号にならない人というのもおります。私は、何人も4号で 裁判官終わっている人を知っています。そうすると、もう退職金から生涯所得から、相当違ってくることになります。

 それだけじゃなしに、最高裁はこの4号から3号になる人、全員分の予算を獲得していて、その年には3分の1しか3号にせずに、残りの3 分の2の分をウラ 金として取っているんじゃないか。

だから、残りの3分の2の予算額というのは、相当な金額のウラ金が毎年、最高裁に入るんじゃないか。こういう推測をし て、私は公文書公開で追及していますが、それに一切最高裁は答えようとしません。

 それぐらいの予算のウラ金ができるから、それを使って、気に入った裁判官は10年以上たつと外遊に行かせてくれたりもします。それか ら、最高裁はいろい ろな研究会等を設けて、学者にもお金をばらまいています。

そこに入れるかどうかというのは学者としても、もう生命線のような形になっています。そういうと ころにもお金をばらまいてやっている。

 それから、裁判員裁判に当たっても、例えば市民の公聴会みたいなので、その会場のエレベーターのボタン押しに、1日5000円を出した とかいうので騒が れていますが、そういう裁判員裁判のときに27億を出したとか、そ

ういうところにもお金をふんだんに使えるぐらいに、ウラ金をちゃんと準備しているという ことです。

 それで、日本の行政裁判というのは、年間1800件ぐらいしかないんですよ、国や地方の行政機関の不正に対する裁判は。ところがドイツ では50万件、人 口の少ない台湾でも38万件、

韓国でも16万件、日本では1800件。

それぐらい違って、日本の行政訴訟はおかしな行政訴訟なのですが、それがおかしいで すよと正面切って言う学者がいないんです。

 それは、最高裁に盾突くと学者生命がなくなるからなんです。特に現在は司法試験のための法科大学院というのができて、あそこには変な先 生がいるから、あそこの法科大学院はだめだとかいううわさを

少しでも立てられると、そこの法科大学院はもうだめになるということで、最高裁からにらまれるような教授を置い たりはしない。もうピリピリしていますから、そういうことで、

もう全部学者から何から統制されてしまっている。こういうのが現状です。

 いろいろな法律の教科書でも、初めのうちは民主的なことを書いていたのが、版を重ねて5版目ぐらいからガラッと、最初の頃の民主的な記 載が全部変わっ ちゃうとかいう本が、何種類かあります。

そういうふうに、最高裁からにらまれたりしないように、日本全体が自粛しているという現状にあるわけです。

 ついでに裁判官の統制。給料と任地で統制していく。裁判官は最高裁の顔色ばかりうかがっている。最高裁は統制をするだけじゃなしに、そ れのためにウラ金 もつくっていくということ。

それから、ここも私の推測なのですが、ウラ金づくりのために、最高裁は行政機関とウラ取引もしているんじゃないか。

公文書公開によるウラ金の暴露

 裁判官の3号から4号の差別は、ほかの人もだいたい言い出していますから問題はないのですが、ウラ金について言っているのは、私ぐら いです。私が 10年ほど前に『週刊金曜日』に、

本多勝一さんとの対談で、「こんなことになってしまった裁判所」という題名で、連続3回ほどやりました。

 そこにも書いていますし、また私が日本評論社から5年ほど前に出した『裁判が日本を変える!』という本にも書いているのですが、そうい うウラ金のため に、ウラ取引をしているというようなことを言っても、

最高裁は無視して、何にも私に対して言ってきません。私が言っているのがうそだったら、名誉毀損で裁 判でもかけたらいいじゃないか。こういうつもりで、私はあえて最高裁のウラ金とか、

ウラ金のためのウラ取引とか言っていますが、一向に最高裁は私を無視で す。

 それで、私は平成21年の4月に最高裁に対して、最高裁の裁判官の統制とウラ金づくりの公文書公開の裁判を求めました。それと同時に、 会計検査院に対し て、最高裁のウラ金、裁判官のヒラメ化の原因である

裁判官3号報酬に関して、実施した会計検査の結果が分かる行政文書の開示を求めました。

 ところが会計検査院からは、そういう会計検査をしたことがないので、その関係の行政文書もないので開示はできないという返事が返ってき ました。だいたい 戦後60年にわたって、会計検査院がそういう検査を

1回もしていないことが、ちょっと私としては考えにくいので、もう会計検査院も知っておきながら、放任 しているんじゃないかと思います。

 それから、公務員の不法行為に対して、個人責任を負うかどうかという問題があって、学説や下級審の判決では負うという判決も相当ありま すが、最高裁は頑 として、

公務員は個人責任を負いませんという判決をするんです。そのためにいくら公務員の違法行為があっても、主権者たる国民はそれを問えない。だから、 公務員は極端にいえばやり放題ということになると思います。

 なぜ最高裁がかたくなにそういう個人責任を認めないのか。これは行政とのウラ取引じゃないかというのも私は言っていますが、それに対し て最高裁は何とも言ってこない。こういうことになります。

我々は遅れた社会に住まわされている

 こういうことで、裁判官が統制されてしまっていますので、なかなか裁判官は、組合の弾圧を受けた事件なんかで、本来誰が見ても無罪の はず、こんな 無罪が何で分からんのかという思いはあるでしょうが、

それはもう裁判官が分かった上で、最高裁の統制を受けて、これは有罪にしないと自分の地位が危ないと いうことでやっているわけですから、無罪になったりすることはまず考えられないんじゃないか。

 だから、逆にいえば無罪にしなかった場合に、自分の地位が危ない場合は無罪になる。これが鈴木宗男の事件と、最近の厚労省の村木局長の 事件との違いなわけです。

 鈴木さんの場合は世間の評価が悪い。だから、鈴木さんに賄賂を送ったという人の調書を証拠として、鈴木さんを有罪にする。村木さんの場 合は、そういう村 木さんが有罪であるという関係者の調書は

信用性がないというので排除して、村木さんを有罪にしない。それは村木さんの場合は、どうも村木さんが正しいとい う世論のほうが強いということで、これを有罪にしていては、逆に自分の地位がヤバイ。

こういう読みだろうと思うわけです。

 そういうことで有罪か無罪かが決まってしまうというのが日本の裁判です。だから、組合の弾圧事件なんかでも、これを有罪にしたら、有罪 にした裁判官の地 位が危ないんだというぐらいの

世論の盛上りがないかぎりは、難しいだろうという気がします。だから、担当弁護士の能力とかそんな問題ではないわけです。

 はっきり言いまして日本の社会には、近代社会の三権分立はない。もう非常に遅れた社会に生活している。大変なところにわれわれは住まさ れているんだということで、私なんかは腹が立って仕方がないのです。

私が裁判官を辞めた理由

 それで、なぜ私が裁判官を辞めたか。私は一方で必死で、そういうおかしな仕組みだということを知りながらも、その中で自分は何とか生 き延びられる だろうというので、

卑怯というか、そういう考えを持ちながらも生き延びてきたのですが、あまり無理をしすぎて、女房が非常に重い病気にかかっちゃって、転勤ができなくなってきた。

 そこそこ私は最高裁の顔を立てるような仕事も必死でやってきたので、高松に女房の実家があるから、もう女房が病気だから高松へ転勤させ てくれと言った ら、転勤は受け入れてくれた。

それはありがたいのですが、最初は、大阪高裁から高松高裁の刑事部の裁判官ということで行ったのですが、高松高裁の刑事の裁判長が奈良の裁判長のときに、私が大阪高裁で散々に、

こんな判決ではいかんという判決でいじめていた人だったので、取ってくれずに家裁に回されちゃったと いうことがあるわけなんです。

 それで家裁に行って驚いたことがあったのです。家裁に転勤になりましたというので、ほかの用事で最高裁に行ったときにあいさつにも行っ たのですが、家裁 の所長は非常に優秀な人だから、

それを見習うようにということを最高裁から言われた。その所長が優秀だというのは、10年もかかっている、20年もかかっ ている、長期未裁という長いことかかっている事件が、

もう当時高松家裁には山積みされていて、20件か30件あった。

もうどうしようもないぐらいにたまっ ていたのを、その所長がバッサリと処理した。

 その外形だけを聞くと、すごい人だなと思うのですが、どういう処理の仕方をしたかといいますと、20年30年かかっている事件の当事者 を呼び出して、 いったん取り下げをしなさい。

取下書を出しなさい。取り下げてすぐまた復活の申立書を出しなさい。だから、いったん取り下げたから、20年30年たった事 件が、全部その時点ではまっさらの新件になるわけなんです。

だから、20年30年の事件は全部なくなった。だけど、すぐに復活の申立があるから、また同じ ような事件はそのままあるわけです。

 私か家裁に行って、その事件を処理しようと思ったら、薄っぺらい取り下げと復活の表紙の記録と、それから20年30年という何十年もの ものすごい記録と がひっついている。

これはどういう意味だろうと思って、何ぼ考えてもよく分からなかったのですが、ああ、取り下げをさせて、もう一回復活させたのかという ことが分かってきた。

 それで、両当事者を呼び出して聞いてみると、そういうことですというのですが、私ごときが、あとこれこれをやってくださいと言ってもな かなかやってくれ ない。もう白けてしまっている。

裁判所の言うことなんか、まともに聞けませんよというような、そんな事件の処理をしてた、その優秀だといわれた所長は、そ の後さらに地裁の所長になって定年で辞めて、香川県の公安委員長をやった。

そういう出世コースを歩んでいる人もいるわけです。

 そんな処理を見る中、私は女房が病気なので、毎朝子どもの弁当をつくって、送り出してから裁判所へ行く生活をしていたのですが、こんな 処理のしかたで万 が一間違いを犯して、マスコミにでもたたかれたら、

元も子もない。これは辞めろということじゃないかというので、辞めたのです。

 元々私は5年ぐらいで辞めようと思っていたのですが、結婚してから、女房の親は公務員で、女房は公務員ほどいい職業はないと思い込んで いるものですか ら、辞めるな、辞めるなと言うのです。

それで、私がどうしても辞めると言ったら、もう1箇所だけ転勤したらそこで辞めましょうと言う。それで、行ってしば らくすると、さらにもう1箇所と言う。

もう1箇所、もう1箇所が22年になっちゃった。そういうことだったのですが、女房も病気になって、これは辞めろということかと、辞めて しまったのです。

(3/3に続く)

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