◆書く/読む/喋る/考える◆

言葉の仕組みを暴きだす。ふるい言葉を葬り去り、あたらしい言葉を発見し、構成する。生涯の願いだ。

ソウルキッズ …12

2005-09-07 12:39:16 | 創作
 ドリュリュリュリュリュ……ミニガンの掃射音! 毎分6000発(MAX)でライフル弾を連射するバルカン砲が耳元でうなる。ガラガラガラドーンドーンッバリバリグワシャーン……! 今度はこっちだ。階下のシャッターとガラスが砕け飛び、倉庫全体が振動する。各階のスチール壁が寸断されているんだ。ロックコンサートの最前列さながら、破壊音が腹の底まで揺さぶる。
 アリが動く。バズンッ! 肩にかついだRPGが火を噴いた。ブロックの間からマシンガンを構えるミゲルとおれ。向かいのビルの上、約20mにブラックホークがホバリングしてる! 二機目が見えない! なにも気がつかないガンマンは横腹のハッチから身をのりだし、下方を銃撃している。スプリンクラーで撒き散らされる水のようにヘリから薬莢が降っていく。上方45°の角度でロケット弾が白煙をひいて飛ぶ。ふとガンマンは顔をあげ、ミニガンが鳴りやんだ。また時間が止まってスローモーションになる。実戦になるといつもこうだ。ヘリの腹にロケット弾がめりこんでいく。
 ズガガガーンッ! 下から斜め上に侵入したロケット弾が爆発する。燃料に引火したのか、猛烈な火炎と黒煙がヘリから噴きだす。炎まみれの人影がダイブする。プロペラが折れ曲がり回転をとめた。メーンローターが吹っ飛び、テールが垂れ下がり、破片が飛んでブロックにあたる。操縦席は火ダルマだ。歪んだシャーシを剥きだして、ヘリは傾き、ビルの屋上にゆっくり墜落していく。その後ろ距離6,70m! 真っ黒いテールが突きだしてる!  
「あそこ!」おれはトリガーを引く。
「シナリオどおり!」ミゲルも愉快そうに連射をはじめる。
 炎に照らされて浮かぶテールローターに、マシンガンの弾道が二本の筋を引いて吸いこまれていく。真っ黒に輝くテールにパチパチ火花が弾ける。でもテールのプロペラは悠然と回っている。ターボエンジンが唸りだした。高度をあげて離脱するつもりだ。跳ねまわる銃を押さえ込むようにして撃ちつづける。くそ、ライト・マシンガンのクセして銃口のはね上がりがきつすぎる。せっかく着弾しても有効弾が少なすぎ。メイビー! 
 炎の塊り、ヘリの残骸がビルの屋上に落ちていく。その後ろに、上昇中のヘリが横腹を見せる。ミニガンがこっちを向く! ズララララララララ……至近距離で麻布を引き裂くみたいに空気が割れる。コンクリート・ブロックが粉煙をあげ、ガリガリと破片が飛び散る。ミゲルの弾道は方向を変え、ハッチめがけて飛んでいく。あと少し、あと少し。そう念じながらおれはテールローターに弾丸を集中させた。
 ギャッ! ミゲルが悲鳴をあげて床を転がった。側頭部を両手で押さえている。指の間から血が流れだしている。ミゲールッ! 叫ぶおれ。ズシン! なにかが左肩をと襲う。体が回転する。クソッタレ、アリの声……バズッ! RPGの発射音……バシュッ! もう一回……おれは意識をうしなった。 《続》



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