わたしの里 美術館

とりあえず西洋絵画から始めて、現代日本作家まで

レウキッポスの娘たちの略奪

2006-01-20 | 作品

 

 

レウキッポスの娘たちの略奪  (The Rape of the Daughters of Leucippus)

ルーベンス  1616-1618年頃
224×210.5cm
油彩・画布
所蔵 アルテ・ピナコテーク  ( Alte Pinakothek、旧絵画館 ミュンヘン )

 

 美女を掠っているのは、カストルとポルックスの双子の兄弟で、ゼウス と レダ との子である。ところがこの兄弟の血筋はややこしい事になっている。二人はそれぞれ別の卵から生まれた。カストルは姉のクリュタイムネストラと同じ殻から生まれた。こちらの父はレダの夫スパルタ王テンダオレスであるので、二人とも人間である。ところがもうひとつの殻から生まれた、ポルックスと妹のヘレネの父は、ゼウスであった。つまり絶対のゼウスの血を引き不死身の神格であった。カストルは軍事と乗馬の技量が抜群。そしてゼウスの血を引くポルックスは拳闘に才があった。とくにポルックスは鍛冶の神であるヘーパイストスに造ってもらった鉄の手首がある。

  全裸でスッポンポン、何故こうなっているのかは、神話の世界だからしょうがない。

 オレイテュイアを略奪するボレアス

 

 とにかく裸の女性の美しさを描くための、その方便として神話が言い訳なのだ。だから彼女らは全裸でなくてはならぬのだ。

 こちらも姉妹で、なんと彼女らは強奪者の従姉妹(いとこ)である。叔父レウキッポスの娘、ヒラエイラとポイベは既に婚約者があった。それでも、力ずくで奪ってゆくのだから、なんと強欲なと現代人なら思ってしまう。だが是、神話の世界なのを忘れてはならない。秀吉は柴田勝家を滅ぼして、その義理の娘のネネたち三姉妹を奪ったという故事もある。中世や戦国よりももっと昔、神代の古代だなんでもありだ。当時は恋愛の激情とかを表現する、観念的なイデアはなかったのだろう。それでこの、パトス=激情を絵とか物語にして、今に伝えた。

 とにもかくにも、恋を成就させるには遠慮は禁物で大胆さが、ある意味で必要悪とでも言えるのか。愛のキューピッドも隅っこに描かれているところを見れば、作家はこの略奪を肯定的に描いているのだ。

 

 
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