第四部 Generalist in 古都編

Generalist大学教員.湘南、城東、マヒドン、Harvard、Michiganを経て現在古都で奮闘中

Post-COVID-19: 総合診療におけるNew normal

2020-05-23 11:26:18 | 総合診療

みなさまこんにちわ。

明日は、繋がるフェスですね。どうなるかわかりませんが、楽しく行います。

僕がEditorをさせていただいてるジェネラリストコンソーシアムで、6月に掲載するOpinionのプロトタイプをこちらにも

のせて宣伝させていただきます。

(なんと今回はいつもの寄稿の4倍近くご論文を頂き査読させて頂きました、みなさまの医学や教育に関する論文いつでもお待ちしております)

 

Post-COVID-19: 総合診療におけるNew normal

 

COVID-19パンデミックが我々に与えた影響は数えきれない(1)。感染対策の最も重要な戦略として人と人との接触を極限まで減らすことを多くの国が目標に掲げた。これらに伴う負担は甚大であった、一方で望むと望まないとに関わらず我々総合医の働き方や考え方を再考する機会を与えた。我が国の総合医は文字通り”Thinking Globally, Acting Locally”の考え方と親和性が高く、このCOVID-19の影響のもとに臨床の現場、院内の感染対策、または政策レベルでも貢献する機会が多かったのではないかと思う(2)。この次に我々総合診療医が遭遇するであろうPost-COVID-19での大きな変化と新しい常識 (New Normal)とはどのようなものになるのか?筆者はこのパンデミックの影響で変化する必要があったことに絞り、Post-COVID-19時代に予測される下記の3つの変化に関して考察を行なった。

 

1.総合診療のオンライン化

今回のパンデミックはオンラインで代替可能な業務と医療現場で必然性の高い真の業務を識別する淘汰的な役割を担ったと言える。Post-COVID-19ではオンラインで実行可能な総合診療医の業務がオンサイト業務から移行することはもう避けられない(3)。総合診療をまず臨床、教育、研究の3つの側面で考えてみれば、特に総合診療の教育と研究面は急激にオンラインに代替されるだろう(4, 5)。特に教育活動は各大学や病院間の垣根を超えて、優れた教育の機会が自由に開放されると同時に優れた教育者が選別される。オンライン勉強会などの場を提供するプラットホームもグループレベルで多発するも最終的には優れたものだけに集約されていくだろう。総合診療の研究は、大学を中心とした実験基礎医学からプライマリーケア現場で実施可能な臨床研究や家庭医学、公衆衛生、医学教育、医療の質と安全、医療情報、社会医学など医療に関わる幅広い研究分野へ広がり複雑に交絡し組み込まれていく(6, 7)。このように特に教育や研究面ではオンライン化の潮流の中で、総合診療医としてオンラインを利用しアウトカムを出すことができる人と、できない人との格差がさらに生まれる可能性がある(8)。

 

2 総合診療医の学び

学習機会の格差は解消される一方で自己学習力の有無が医師としての二極化を生む要因になる(9)。優れた総合診療医の教育コンテンツは大学や有名研修病院、企業を通して無料でオンライン開放される機会が増える。地球上の一流大学が卓越した講義を競争して無料開放していることからもこの流れは明らかである(10)。これにより都市部や一部の人気研修病院に研修医が集まる理由であった卒後教育格差が減少する。すでに利用されているテクノロジーとの融合、例えばAI問診等での臨床推論の効率化、バーチャルリアリティーを用いた症例トレーニング(11)、遠隔診療に特化した診察技法のトレーニングとテクノロジーの応用も教育と研究の対象とされ飛躍的に向上するだろう(12)。一方で、総合診療医の自己学習においてオンラインを通して自らを向上させることができる医師とそうでない医師との格差は自ずと開大することになる。

 

3総合診療医の生活様式と職場の多様化

情報や教育の機会に関しては都市部と地域の差別化は減少する。物理的距離の縛りからの解放により、総合診療医が職場を選ぶ際の判断基準は変わる可能が高い。医師として何処に住居を置き、どのような仲間と、何の仕事を行うか等の自己決定権が大きくなる。また、仕事に対する報酬や収入の評価基準はこれまでの時間的・物理的な要素が減少するために、何をもって総合診療医としての仕事をなしたか評価尺度を変更する必要が出てくるだろう。物理的距離が開放された総合診療医にとってオンライン等で副業や兼業を行うことは普通の形になる可能性が高い。以上は、総合診療におけるNew normal像を文献的な案を元に、総論的に分類した予測にすぎない。

 

もともと我が国の総合診療医は新しい専門医像として2018年に構築された。つまり新しいNew normalの医療者集団であった。であるのならば、願わくば避けられない変化を嘆くのではなく、変化に対して柔軟に対応できる医療者の集団でありたいと私は考える。

 

引用文献

  1. Yamin M. Counting the cost of COVID-19. Int J Inf Technol. 2020:1-7.
  2. Haffajee RL, Mello MM. Thinking Globally, Acting Locally - The U.S. Response to Covid-19. N Engl J Med. 2020.
  3. Hong Z, Li N, Li D, Li J, Li B, Xiong W, et al. Telemedicine During the COVID-19 Pandemic: Experiences From Western China. J Med Internet Res. 2020;22(5):e19577.
  4. Sandhu P, de Wolf M. The impact of COVID-19 on the undergraduate medical curriculum. Med Educ Online. 2020;25(1):1764740.
  5. Watson A, McKinnon T, Prior SD, Richards L, Green CA. COVID-19: time for a bold new strategy for medical education. Med Educ Online. 2020;25(1):1764741.
  6. Watari T. The new era of academic hospitalist in Japan. J Gen Fam Med. 2020;21(2):29-30.
  7. Yanow SK, Good MF. Nonessential Research in the New Normal: The Impact of Novel Coronavirus Disease (COVID-19). Am J Trop Med Hyg. 2020.
  8. Chen RC, Tan TT, Chan LP. Adapting to a new normal? 5 key operational principles for a radiology service facing the COVID-19 pandemic. Eur Radiol. 2020.
  9. Ferrel MN, Ryan JJ. The Impact of COVID-19 on Medical Education. Cureus. 2020;12(3):e7492.
  10. Miller J. Gateway to Global Learning, HMS Global Academy’s new web portal opens doors to medical education. Harvard Medical School 2017.
  11. Marques da Silva B. Will Virtual Teaching Continue After the COVID-19 Pandemic? Acta Med Port. 2020.
  12. Hofmann H, Harding C, Youm J, Wiechmann W. Virtual Bedside Teaching Rounds on Patients With COVID-19. Med Educ. 2020.

 

 



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