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真珠湾における日米の和解の意義

2017年01月02日 | 政治

  昨年(2016年)12月27日、安倍首相は日米開戦の地ハワイを訪れ、真珠湾攻撃で沈没した戦艦アリゾナ号でオバマ大統領と会談し戦後75年経たいま改めて日米和解の会談を行いました。

 第二次世界大戦の欧州戦線では、英国空軍によるドイツの都市ドレスデンの大空襲が行われて多くのドイツ市民が殺害されましたが、70年後に英独両国の間で謝罪のない和解が成立し「死者を死者で相殺するのではなく、敵味方による共同追悼という形」で記念すべき和解が行われました。
 今回の日米両国首脳によるハワイでの和解の儀式は、ドレスデンの和解に喩えられます。この和解の儀式はアジアでも戦争による傷跡の修復に謝罪なき和解が成立した意義は大きいのです。

 安倍首相は昨年(2015年)4月に米国上下両院合同会議で日米戦争について「痛切な反省」を述べて太平洋戦争を総括していますが、今回は開戦の現場に足を運んで、戦死者の慰霊を行い不戦の誓いをして和解の力を強調しました。これに対してオバマ大統領は日米は友情と平和を選択したと応えました。
 安倍首相の演説の中で特に注目すべき点は、アメリカの寛容の心がもたらした「和解の力(the power of reconciliation)」を英語で述べたところです。この言葉は、キリスト教世界では罪を犯した人間がキリストを通して神に対して赦しを請う意味があるのだそうです。政治の場での発言ですから、そのような宗教的意味はなくても言葉の持つ印象はよいものがあったでしょう。

 安倍首相の真珠湾訪問を欧米のメディアは「謝罪なき和解」としてかなりの時間を割いて大々的に報道しましたが、アジアの國の中にはこのような日米の和解を喜ばない国があります。日米は良くも悪くも激しく戦ったから和解に至ったとも言えるのですが、日本と真っ正面から戦わなかった国とは、このような意味での和解は難しいからです。
 考えて見れば、日本は民主共和国政権の中華民国(現在の台湾政府)と中国大陸で戦火を交えましたが、共産党政権の現在の中華人民共和国とは第二次大戦中、少しも戦っておりません。毛沢東国家主席はそのことを明確に語っていました。嘗て毛沢東国家主席は訪問した日本社会党の佐々木更三委員長の謝罪に対して「何も申し訳なく思うことはありませんよ、日本軍国主義は中国共産党に大きな利益をもたらしました。中国国民に権利を奪取させてくれたではないですか。皇軍の力なしには我々が権利を奪うことは不可能だったでしょう。」と応えたと伝えられています。

 今回の安倍総理が真珠湾を訪問して日米が和解の儀式を行ったことに、中国側は「主に中国に向けたパフォーマンスの要素が強い」とか「謝罪のない和解は意味はない」とか反応していますが、現在の日中関係からすれば、さもありなんということです。
(以上)

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