オバマ政権は、米軍の中東地域からの撤退とともに、ピボット、リバランスと言う言葉で、軍事力の配置換えを謳っていましたから、それが計画という形で示されたことになります。
しかし、軍事力の地理的配置換えは行っても、それを行使する意志についてはオバマ政権は、よく言えば慎重であり、悪く言えば臆病です。その原因はアメリカ国民が血を流すことを嫌い、アメリカ議会も国民の意向を受けて国外での戦争に慎重だからです。
シリアのアサド政権を懲罰する軍事介入には、英国議会が否決してキャメロン首相がいち早く反対し、オバマ大統領は議会に決定権を丸投げしている間にシリアを支持するプーチン大統領に主導権をにぎられました。
そこへウクライナ問題が発生しました。プーチンによるクリミアのロシアへの編入は、明らかに国連憲章違反であるにも拘わらず、欧米諸国は反対を唱えて経済制裁を示唆するだけで、軍事介入はできない状況です。
プーチン大統領は、欧米が「軍事介入の権利を留保する」ということすら言えない状況を見越して、クリミアを手中に収めました。こうしてアメリカが世界の警察官を辞めたことが明になった以上、軍事的にはアメリカのアジア重視には疑問が残るのです。
皮肉な言い方をすれば、アメリカのアジア重視はむしろ経済面にあります。特にアメリカ経済は中国経済との相互依存関係が深くなり、その維持拡大を図るために中国との軍事的対立は避けたいという意向が強いのです。
勿論、アメリカが貿易、金融面での中国からの経済的利益を重視するといっても、領土、領海に拘わる安全保障についてまで中国に譲歩することはないでしょうが、アメリカのアジア重視は、あくまでもアメリカの国益から判断されたものになります。
国防予算の削減が予想されるアメリカは、アジア重視と言いながら、実は軍事面で日本への依存を考えているのでしょう。中国から領土、領海への脅威を感じる日本は、そのアメリカの期待にどう応えるか、腹を固める時期にきています。
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